うつけの兵法 第十九話「負け戦」 | ショーエイのアタックまんがーワン

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【第十九話 負け戦】桶狭間へのカウントダウン 残り14年

〔ドラフト版〕

 

勝利に方程式は無い。

方程式で勝利できるのは相手も方程式に頼っているから。

いわばこの戦いを生兵法の戦いと言っておこう。

科学の世界で様々な難題を解き明かすのに、

様々な方程式が用いられるが、

最終的にその難題を解き明かすのは答えの有る方程式では無く、

人間の研究努力と難題を解読していく頭脳でしか無いのだ。

これを「英知」と呼ぶ。

 

ここでも既に取り上げた孫子の兵法にある「兵は詭道なり」。

常時変化を齎す戦局に方程式のみを頼みにするなど愚の骨頂と言えるのだ。

 

沢彦に連れられて吉法師たちは清洲橋の北にある庄内川の河原へと向かった。現代の場所としては庄内緑地公園の付近としておこう。

新介や小平太は既に良く知った場所で、対面する清州側の集団とも既に面識があった。

それ故に、新介と小平太は些か弱気に構えていた。

小平太は吉法師らに、

 

「ここの清州の連中には、 八郎がおるで…わしらじゃ敵わんぞ」

 

と告げると、新介も

 

「八郎は俺らより3つも年長じゃ…ここは俺らが来る場所じゃねぇだ」

 

吉法師らのグループは沢彦の見立てもあって吉法師と同年代で固まっていた。いわば小学6年生か中学1年生に当たる、12、3歳である。

一番の年長に当たる新介も14歳だ。

一方の清州側の子らは15歳から17歳のグループで、

体格差もそれなりにあると言える。

 

無論、武家としてのプライドを持つ吉法師らは新介らの言葉を意に介さなかった。

ある意味まだ怖いもの知らずと言える。

武家として武技に自信があるゆえに、農民相手に負ける気がしないのだろう。

そんな吉法師は自信満々と

 

「俺らが居るから心配するな!!」

 

と、強気に新介たちを勇気づけた。

 

一行が河原に到着すると、対岸には清州側の子らが待機していた。

いつの時代もヤンチャな子供たちはさほど変わらない。

ある意味河原でたむろする不良グループといった様相だ。

そして吉法師らの姿を目撃するや、威勢のいい掛け声とともに、

威圧してきた。

 

「おうら!!那古野モンが何しに来た!!」

 

そう荒々しく叫ぶや、清州側の子らはすぐさま河原の石を手にして、那古野側の方へ投げつけてきた。

石合戦というのは当時の遊びで有名であるが、歴史家の多くはこの仕組みを勘違いしていると思われる。

現代のようにスポーツ化したような形で考えると石の投げ合いだけの勝負に思われがちだか、ルールなどという意識も低い当時にそうした先入観を抱くのは時代錯誤でしかないと言っておこう。

石合戦という言葉から察するに、通常の合戦では弓撃ちで始まるのに対して、石の投げ合いで始まる合戦…いわば喧嘩という表現でこのような表現に成ったと推測した方が適切である。

特に川を境にした場合は、お互いに川を渡らせない為に石をまず投げあったとする方が合理的な様相となる。

 

清州側からの投石が始まるや、吉法師らもすぐさま石を拾い上げて投石し、それに応戦した。

とっさの宣戦布告ゆえに、吉法師らの連携はバラバラで、個々に石を拾って相手に向かって投げるだけとなった。

よく想像される光景は無防備に石を投げあうものであろうが、前述のとおりルールなど存在しない状態で、無防備に石を投げあうだけという状態は寧ろ人間の知能を馬鹿にしすぎといってもいい。

いわば投石に対抗する手段は安易に思い浮かぶはずで、木の板で造った簡易な盾は用意しているのが当然である。

むろん、吉法師らもそれを用意していた。

そのうえで吉法師らはあらかじめの戦略がなかったわけではない。

渡河してくる相手の足元を狙って、集中攻撃するという作戦だ。

特に、警戒する八郎という少年に対しては、一斉に狙うつもりでいた。

ところが咄嗟の戦闘開始で統制がとれず、石合戦が初陣となる吉法師らの作戦は所詮は卓上理論でしかなかった。

 

清州側は石の投げ合いで、盾を持つ吉法師らの頭の方を狙い投げつけてくる。

そうすると自然盾の持ち手は頭を防ぐ構えとなり視界が遮られる。

後方の投石がそういう狙いで石を投げて来る間に、八郎たち数名の渡河部隊が川を渡って那古野側に進んでくるのだ。

 

想定していなかった展開ゆえに、吉法師らは盾を構えているのが精いっぱいで、那古野村の子らの一部は清州側の渡河が半ばまで進むと恐れをなして逃げ出すものも出始めた。

そして清州の八郎たちが渡り切るころ、それを確認した沢彦は大きな声で、

 

「ほらガキ共!!逃げろ!!役人が来るぞ!!」

 

と、あえて水を差した。

すると逃げずにいた那古野村の新介や小平太も戦線を離脱し始めて、やむなく吉法師らもその場から撤退した。

清州の八郎らは役人が来るという言葉に驚いて、逃げる吉法師らを追わずに、清州側へと引き換えしていった。

 

子供の喧嘩に水を差した沢彦だが、沢彦はすでに負け戦とわかる状況ゆえに、万が一吉法師の身に何かあってはと察してそれを止めたのだ。

すると吉法師は沢彦に詰め寄って、

 

「沢彦!!なんで止めた!!」

 

と意気込んだ。

すると沢彦は、

 

「あれが真の戦なら、お主の首は取られておったぞ。」

 

と、笑いながら答えた。

そして吉法師の供回りとして参加している岩室らに対して、

 

「若殿の供回りとして参加していた者らは、若の周りを固めもせずに何をしてたんだ?あれでは敵に見す見す大将首を与えていたようなものだ!!」

 

まだ子供ながらも武家としての教育を施された家柄ゆえに、沢彦の言葉は十分に理解できた。

しかし、吉法師はどうにも納得がいかない様子で

 

「それでも勝てたかもしれん!!」

 

と、意気込むや、沢彦はさらに大笑いして、

 

「なんともうつけた事を…将たるもの死に場所は選ばねばならぬ。首を敵に捧げても誇れる場所か?それとも負けを察して再起を図る場所か?そこの見極めを間違えればお主は単なる恥さらしに終わるぞ。」

 

その言葉に吉法師は、

 

「あそこで負けても首は取られぬ!!」

 

どうやら吉法師は子供らしい意地を張っている。

おそらく沢彦の言葉に腹が立つというよりも、むしろ負け戦になったことがくやしいのであろう。

そう察しながらも沢彦は、

 

「これはそなたの初陣の為のものじゃ。そなたはあの場面で無理に戦いを続け、首を取られて晒し者になる道を選ぶのか?」

 

むろん吉法師もそこは理解しているゆえに、何も言い返せない。

しかし、どうにも悔しさが収まらない。

 

「引き際を素早く察して、お主の首も、味方の命も無駄にせぬ戦いこそ名将の戦じゃ!!」

 

沢彦はさらに続ける、

 

「戦に常に勝てると思っているのは愚者の考え、大局を制する為に小事、いわば小さな負けを捨て、大きな勝利を確実とすることこそ常勝たる将の考えじゃ。」

 

そして沢彦は吉法師の周りに残ったものを振り返り、

 

「ここにどれだけの者が残っておる?さすがは武家の子らじゃが…村の子は2人だけじゃぞ」

 

吉法師の供回りは誰一人として欠けてはいなかったが、村の子は新介と小平太のみであった。

 

「兵の大半は、勝ち目の無い戦からはすぐに逃げる。まずは勝ち目を生み出して兵を留まらせることじゃ。」

 

すると吉法師は

 

「臆病者たちを充てにして戦えというのか?!」

 

と、沢彦の言葉に嚙みついた。

それに対して沢彦は、

 

「臆病者たちが逃げてしまう戦い方は勝ち目の無い戦じゃということじゃ。」

 

さらに続けた

 

「兵の士気というのは、臆病者たちから信頼を得て、その将のために命を捧げる事で成り立つ。」

 

すると吉法師は、

 

「そんなものは軍律で罰すれば何とでも成る!!」

 

と反撃するや、

沢彦は再び大笑いして、

 

「軍律?それこそそなたの首が飛んでしまえば意味がないものじゃ。首に成ってしまった将がどう罰する?」

 

そして吉法師の目をしっかりと見て、

 

「賞罰も勝ってなればこそ意味あるもの…負けてしまえば恩賞得られず、そこで罰すれば兵は逃げ出す。これが人の心ぞ!!」

 

「ゆえに勝ち目あらば人は従い、勝ち目なくさば兵は己の身を案ずるものと思え。」

 

ある意味、ここまで来ると沢彦の言葉は難しい。

そう自認する沢彦は簡単に、

 

「簡単な話、戦に勝ちたくば勝ち目を作れ、勝ち目がなくなれば臆病者たちと一緒にさっさと兵を引いて次の勝ち目に備えよ。」

 

そして沢彦は吉法師を揶揄うように、

 

「それともその勝ち目を考える能力はお主にはないのか?」

 

と、挑発すると吉法師は寧ろその言葉にムキになって、

 

「ならば次は絶対に勝ってやる!!」

 

と、言い放った。

そこで沢彦は、

 

「次は止めぬぞ…引き際を間違えて敵に殴られたら、お主の首は飛んだものと思え、そして負け犬として大笑いしてやるからのう・・・河原の向こうにお主の晒し首が飾られたと想像してのう…」

 

と、言い聞かせるように揶揄った。

沢彦は吉法師がイノシシ武者にならないように言い聞かせるつもりでそういう形で諭したのだった。

 

そして最後に教育者らしく、

 

「大陸(中国)の古の皇帝に劉邦という者がいる。劉邦は宿敵の項羽に幾戦も負け続けたが最後のたった一つの勝利で宿敵の首を取って天下を治めた。」

 

むろん史記には記されない話で、沢彦はつづけた。

 

「負けから勝ち目を拾い続け、最後の一勝で敵の首を取れば全ては勝ちなのじゃ。敵に勝てずとも次の勝ち目を拾えたなら、首を取られる前に陣を立て直せ!!これが大局を制したものの兵法じゃ。」

 

と、あえて教えた。

ある意味、この説明は吉法師には解りやすかった。

何故なら負けた悔しさから次の戦い方を既に見極めていたからだ。

吉法師は頭の回転が速いゆえに、沢彦との会話の中で、

そうした思考も並行して働くのだった。

そして、吉法師が、

 

「次は必ず勝ってやる!!」

 

と、溢すと、

沢彦は、

 

「次の引き際も考えておきなさい・・・首が取られたら戦も天下も無いのだから。」

 

と、さらに念を押した。

無論、若武者の吉法師にはまだその言葉は届かない。

そう察する沢彦は、

 

「お主の戦い方で、村の子らの信頼を得られずに再び逃げ出したら、その時が引き際と思え…それが出来ないのならお主の元服はお預けじゃな。」

 

と、吉法師に条件を付けて言い聞かせた。

子供ゆえに元服して大人の仲間入りを果たすことはある意味待ち遠しいものだ。

その元服が遠のくとあらば、さすがの吉法師も沢彦の言葉を無視できなかった。

解りやすいほど単純な子ゆえに沢彦ほどの人物になると扱いやすかった。それゆえに沢彦にとっては教えやすかったのだろう。

逆に普通の教育者からすれば、勉強嫌いな吉法師は教えにくい子でしかないだろう。

信長が早い段階で才能を開花させれたのは、むしろこうした人に恵まれていたからという点は伝えておきたい。

 

さて次の石合戦に吉法師はどのような方法を用いるのか、そして次こそ勝てるのであろうか…

 

どうも…ショーエイです。

実はこの石合戦を研究する上で、

エルダーズ・スクロール・オンラインというMMORPGで、

ギルド仲間と難所を攻略しながら

様々な要素を参考にさせていただいてるのです。

半分趣味も兼ねてるけど・・・

攻略できそうで、中々攻略できない。

面白いのは一人の力だけで攻略できないゆえに、

ギルドメンバー個々の力を引き出さないとならないというところ。

ある意味、特別に突出したプレイヤーを充てにしない分、

チーム力で試されるところもあり、

いろいろな部分で調整していかなければならない点。

また、なかなか攻略しきれない中、

ギルメンにモチベーションを下げないで参加してもらうように気を遣う点など、戦に挑むための士気などの参考に勉強もさせてもらってます。

戦い方に意見の食い違いが生じることもある中で、

どう纏めていけばいいのかなど苦慮しながら遊ばせてもらってます。

幸いギルメンに恵まれていることもあってか、

いい形で前進していくことが叶い、

今のところ攻略目前まで迫っているのです。

 

ゲーム全体としては既にそこを攻略しちゃっているギルドも多々あるのですが、ヴォイスチャット無しで人を選ばずに希望者のみを募ってやる方法は寧ろ珍しいらしく、それだけ他よりも難易度は高いとも言えますが、それでもチームワークでカバーして戦える形は、むしろこの小説の信長軍団が構成される過程にマッチしたものであるといえます。

 

Twitchの「liberteen」のチャンネルで日曜、月曜以外の日はほぼ毎日21時くらいからライブ配信しているので興味あったら見てみてください。

ちなみにプレイヤーは誰がやっているかは一応秘密にしてます。

 

ゲーム内チャットのやり取りも見られる状態で配信してますので、

ぜひ興味ある方はご覧ください。

 

ある意味リアルな形の戦場の心境を体現できる場で、

ゲームゆえに様々な将が主張する場であったりと、

この小説と照らし合わせて見てみると面白いかもです。

 

現在、趣味でゲームに没頭している分言い訳でしかないのですが、こうしてリアルな人の動きを勉強しつつ、信長軍団の構成を上手く表現する為に研究している状態と思ってください。

そしてそうした中で自己の反省点を見つけながら、信長という人物の葛藤を描いていけたらと思ってますので、何卒今後ともうつけの兵法をよろしくお願いします。