小室直樹「日本人のためのイスラム原論」その4 | さかえの読書日記

さかえの読書日記

琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「2001年9月11日に起こったアメリカの同時多発テロ。この事件は、アメリカをはじめとする西欧諸国に対してイスラム教徒が抱く憎悪の大きさを満天下に示した。はたして、アメリカ政府が名指しするようにビンラディン氏とアルカイダが、この事件の実行犯であるかは、今のところ定かではない。だが、イスラム教徒の中に、あのテロ事件を『快挙』と見る向きがあることは確実だし、また、その後に実行されたアメリカの軍事作戦に対して、各地のイスラム教徒が反米デモを行ったことも事実である。これらの動きを見て、おそらく多くの読者は慄然としたに違いない。なぜ彼らは、かくもアメリカ人を憎むのか。アメリカの大使館やペンタゴンを攻撃するならともかく、世界貿易センタービルで働いていた数千の無辜の市民を殺すことが、なぜ聖戦とされるのか。その憎悪は、いったいどこから来るのか。」


「イスラム教徒の中には、確実に反米感情が存在する。いや、その感情の対象はアメリカだけではない。それは欧米のキリスト教徒全体に対するものであるとみるべきであろう。イスラム教徒の心にある、クリスチャンに対する反感。その実態を徹底的に検証しないかぎり、今、世界で何が起こっているのか、そして、これから何が起ころうとしているのか分らない。単なる反米感情なら、今の日本人の中にだって存在しないわけではない。だが、そうした日本人の反米感情と、イスラムの反クリスチャン感情とは、決して同列に並べるわけにはいかない。」


「日本人の尺度で、彼らイスラムの気持ちを忖度していては、事態を見誤るばかりか、途方もない判断ミスをしてしまる可能性がある。そもそも、日本人が欧米と本格的に接触したのは、19世紀半ば以降のこと(1853年に黒船来航。1854年に日米和親条約締結)。これに対して、イスラムと欧米の関係はそれよりも700年以上も昔に遡る。(第1回十字軍は1096年~99年)。この長い歴史の中には、様々な因縁があり、それが現在のイスラムと欧米の関係を形作っている。われわれはまず、その歴史を知るところから始めなければならない。」


 まさにこれが知りたいところ