「WKW4K ウォン・カーウァイ4K 5作品」の『花様年華』と『2046』を鑑賞。
5本すべての上映作品を観ることができましたが、この催しで印象に残ったのは、やはり女性のお客さんの多さでした。
上映会場となったミニシアターでは普段よく見かけるご年配の女性たち以外の30~40代ぐらいの女性の姿(お一人様率も高い)が結構あって、ロビーはごった返していました。
トニー・レオンやレスリー・チャン、チャン・チェンのファンのかたがたもいらっしゃってたのかな?
もちろん男性客もいるんですが、明らかに女性のお客さんが目立っていた。
『花様年華』。2000年作品。出演:トニー・レオン、マギー・チャン、スー・ピンラン、レベッカ・パン、ライ・チンほか。
観るのは今回が初めてです。
劇場初公開時にこの映画のことを知ってたのかどうかも、もはや覚えていない。
『欲望の翼』(1990年作品。日本公開92年)と続く『2046』と合わせて「60年代三部作」ということで、その後、登場人物が共通していたり物語が繋がっているようなことを知りましたが(マギー・チャンは『花様年華』に、カリーナ・ラウは『2046』に出演している)、『欲望の翼』は今回上映されていないし、2018年にデジタルリマスター版が公開された時にも観逃しているので、そちらも観られればより思い入れも込められただろうし作品の理解も深まっただろうなぁ、と少し残念ではあるんですが。
でも、評判も良いこの作品をようやく観られて嬉しかった。
『2046』。2004年作品。出演:トニー・レオン、チャン・ツィイー、フェイ・ウォン、木村拓哉、カリーナ・ラウ、コン・リー、ドン・ジェ、チャン・チェンほか。
『花様年華』の続篇であるこの映画は劇場初公開時に観ているんですが、あれ以来観返していなかったので内容は忘れていて、キムタクが出てたことぐらいしか記憶にありませんでした。
『恋する惑星』で、その存在感が印象深かったフェイ・ウォンがこの映画にも出ていたことも見事に忘れていた。
どうしてお相手が木村拓哉だったのかは今回観ても謎でしたが(ちなみにジブリの『ハウルの動く城』と同じ年の公開)、フェイ・ウォンのアンドロイドっぽさ、ちょっと病んでるような風情は『恋する惑星』の延長線上にあるように感じられたし、キムタクはここでもハウルのようなナルシスティックな雰囲気が作中での役柄と合っていて、ウォン・カーウァイの映画との相性は悪くなかった気がする(彼はトニー・レオン演じる作家が書く小説の登場人物でもある)。
同じ日にこの2本を続けて観たことで(もっとも上映の順番の都合で『2046』の方が先だったのですが)まるで1本の映画のようにも感じられて、それぞれ単発で観る以上に入り込めました。
『恋する惑星』や『天使の涙』ではかなり癖のあったクリストファー・ドイルによるキャメラワークが、この2本では落ち着いていて名画の風格がありました。
先月から上映された計5本のウォン・カーウァイ作品中4本でトニー・レオンが主要キャストを務めていて、だからまるでトニー・レオン特集でもあったわけですが、ウォン・カーウァイの映画って人物の寄りの画が多くて、引きの画の場合でも主要な登場人物全員が一堂に会することがほとんどないため描かれている世界がとても狭く見えるし(60年代の香港の風景っぽさを求めてタイでロケ撮影された、と言われても、現地の景色を俯瞰で収めたりはしないので、正直どこでも同じようにも思える)、何人ものスターたちが共演している!というありがたみも湧きづらいんですが、それは多忙でスケジュールの都合がなかなかつかない映画スターたちをそれぞれ別撮りしているから(さらに思いつきで物語の展開がどんどん変わっていく監督の撮影スタイルのせいもある)で、監督の脳内にしか存在しないイメージを具現化するために忙しい中を根気よくお付き合いする出演者たちも偉いし、そういう出演者たちの姿からまた監督が新たなアイディアを導き出す、という創作の工程はアーティスティックで素敵だなぁ、と思う。スターたちを使ってとても贅沢な映画の撮り方をしている。
『花様年華』のマギー・チャン(『2046』にもワンシーンのみ出演)って、僕は長らくジャッキー・チェンの「ポリス・ストーリー」シリーズでいつもヒドい目に遭わされて泣いてたヒロインのメイ役の印象が強かったんですが、80年代の後半からは文芸モノとか、こういうアート系のような作品への出演が増えてて、オリヴィエ・アサイヤス監督の作品にも出てたり(のちに同監督と結婚→離婚)、ファッションモデルのようなスレンダーな身体にチャイナドレスが本当によく似合っていて、ウォン・カーウァイが描く「男が心の中で想い続ける失われた永遠の恋人」役に相応しい美しさでした。声も落ち着いてて大人の女性の魅力がある。
『花様年華』はそんなマギー・チャンとトニー・レオンの、互いに惹かれ合いながらも一線は越えない我慢合戦みたいな状態をずっと捉え続ける映画でしたが、『2046』ではチャン・ツィイーはトニー・レオンと身体を合わせながらも、彼の心はかつて結ばれなかったマギー・チャンの方を向いている。
けっして自分を愛さない男から涙ながらに立ち去っていくチャン・ツィイーもまた美しい。
とても狭い世界を描いているけれど、ウォン・カーウァイの映画にどうして多くの女性客が足を運ぶのか、あらためてよくわかった気がする。
関連記事
↑もう一つのブログでも映画の感想等を書いています♪