ロバート・ゼメキス監督、マイケル・J・フォックス主演の「バック・トゥ・ザ・フューチャートリロジー(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『同 PART2』『同 PART3』)4Kニューマスターが公開35周年記念で12月4日から全国の映画館で上映されていますね。

 

先日観た『トータル・リコール』同様に字幕版もやってるところもあるようですが、僕が住んでいるところの映画館では吹替版のみの上映。しかも4Kではなく2K版。

 

 

 

ネタバレのようなことも書いているので、このシリーズをこれまでまったく観たことがなかったり、これから鑑賞する予定のかたは映画をご覧になってからお読みください。せっかくなら予備知識はまったくないまま観た方が絶対いいですから。

 

 

同じ日に3本イッキ観してきました(^o^)

 

それでもどれも2時間以内に収まってるから疲れることもなく、最後はこの30年のタイムトラヴェルの余韻に浸ったりして。

 

観る前に売店に立ち寄ったんだけど、35周年記念の劇場パンフレットは見事に売り切れてました。クソー(>_<)

 

 

 

実はこの三部作すべてをつい最近の今年3月に「午前十時の映画祭 FINAL」でも観たばかり。

 

以前もう一つのブログに感想を2つほど書いているので、内容についてはそちらもご参照いただけると幸いです。

 

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

 

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作 さようなら「午前十時の映画祭」

 

 

ただ、そちらでは字幕版だったのが、今回は吹替版、それもかつて80年代の終わりから2000年代ぐらいには地上波でおなじみだったヴァージョン(テレビ朝日の「日曜洋画劇場」で放映。DVDなどのソフト版とは声優が別)ということで、もちろん劇場で上映されるのは初めてだし、それは絶対観たい、と思って。

 

あ、織田裕二さんがマイケル・J・フォックス(マーティ)の声をアテてたのはフジテレビの「ゴールデン洋画劇場」版です(しかも織田さんは1作目のみの吹き替え)。VHSやDVDなどのソフト版は山寺宏一さん。

 

僕が好きなのは三ツ矢雄二さんがマーティを演じてる、今回上映されている方。だからめっちゃ嬉しい。

 

声の出演:

マーティ:三ツ矢雄二、ドク:穂積隆信、ロレイン:高島雅羅、ジョージ:古川登志夫、ビフ:玄田哲章、ジェニファー:佐々木優子ほか

 

ビフ役の玄田哲章さんは『トータル・リコール』ではシュワちゃんの声も吹き替えてるから、ここしばらくは映画館がさながら「哲章祭り」といった感じでしたがw

 

三ツ矢雄二さんって、僕は世代的に「さすがの猿飛」の肉丸や「タッチ」の達也のイメージが強いんだけど、あるいは「キテレツ大百科」のトンガリとか『トイ・ストーリー』のレックスというかたもいらっしゃるかもしれませんね。

 

きっと人によって愛着があるVer.はさまざまだろうけど、個人的にはマイケル・J・フォックスご本人の声質とか台詞廻し、ユーモラスな雰囲気に一番近いのは三ツ矢さんだと思う。

 

普段は外国映画は基本的に字幕版で観るんですが、今回は以上のような事情から、むしろ「吹替版」で観ることに大いに意味があった。

 

だって、30年前からTVで観てきた吹替版が映画館で上映されるなんてめちゃくちゃレアだし、夢のようじゃないですか。そもそも映画館でやるはずがないものなんだから。

 

最近では作品によってはDVDとかブルーレイなどのソフト版の吹き替えの音源をそのまま使ってTVで放送されることもあるようだけど、80~90年代頃ってまだTV局ごとに独自の吹替版を作っていて、権利の問題からなんだろうけどそれらはソフトには収録されないことも多かった。

 

だから、自宅のヴィデオデッキで録画しておかないと、あとはまた再放送されるまで観られなかったんですよね。諸事情から、おそらくもう二度と放送されることがない吹替版(金曜ロードショー版スター・ウォーズ(旧)など)もあるし。

 

もうこれまでに繰り返し観ているシリーズだけど、お気に入りの吹替版での上映はオリジナル音声による字幕版とはまた別の感慨がありました。

 

すでにドク(クリストファー・ロイド)役の穂積隆信さんは亡くなられてますが、穂積さんの声のドクの「マァ~ティ!」「ヴィジョンが!」などの時折ちょっとうわずる感じの独特の発声がとても耳に残っていて、それはクリストファー・ロイドご本人とはまた違った魅力があったんですよね。

 

たとえば、このシリーズでも名前と映像が登場するクリント・イーストウッドの吹き替えをされていた故・山田康雄さんの声の演技がイーストウッド本人とはまったく違ったものでありながら独自の魅力を放っていたのと似ているかもしれない。

 

3作目で登場するドクの最愛の人となるクララ(メアリー・スティーンバージェン)の声はメーテル(池田昌子)だったんだな、とか。鉄道が出てくるから?(^o^) いえ、ステキなお声ですよね。オードリー・ヘプバーンの人だもんね。

 

大変失礼ながら、メアリー・スティーンバージェンって当時もそれなりに歳がいってる人だと思っていたし、今回観てもやっぱりその印象はそんなに変わらなかったんだけど、彼女は撮影時は30代後半だったんですね。

 

 

 

クリストファー・ロイドもこのシリーズでは年齢不詳だったけど、実はまだ40代後半から50代の頭ぐらいだった。ものすごく長生きなおじいちゃんみたいに思ってたけど、30年前はまだ若かったんだよな。

 

 

 

 

『ロジャー・ラビット』とか『アダムス・ファミリー』など、90年代にはおなじみの俳優さんだった。僕は彼の出演映画は9年前の『ピラニア3D』からご無沙汰ですが、現在80代を越えてもお元気そうで。『ピラニア3D』には『バック・トゥ~ PART2』『PART3』でジェニファーを演じたエリザベス・シューも出演してました。

 

マーティの母ロレインを演じているリー・トンプソンは80年代には『スペースキャンプ』や『ハワード・ザ・ダック』(いずれも86年公開)などよく顔を見た気がするけど、『バック・トゥ~ PART3』以降は日本では見かけなくなってしまった。でも映画に出演はしてるみたいですね。

 

ビフ役のトーマス・F・ウィルソンも、多分、ハリウッド映画のガキ大将役としてはかなりの有名キャラを好演したにもかかわらず、その後他の映画で1度ぐらい顔を見たきり。

 

玄田さんのガキ大将の声の演技はハマってたけど、『BTTF』劇中でのトーマス・F・ウィルソンご本人のジョージへの「マクフラ~ァイ!」という呼び方が印象に残ってます。

 

ビフの中の人はきっとナイスガイだと思う

 

マーティの父ジョージ役のクリスピン・グローヴァーは1作目のみの出演ながら(続篇では他の俳優による代役と1作目の映像の流用)、その存在感と演技はとても印象深い。彼はその後、2000年代には『チャーリーズ・エンジェル』の“痩せ男”を演じてました。

 

2作目の制作時や公開後に監督やプロデューサーといろいろ揉めたようだけど、1作目で彼が演じたジョージ・マクフライのあのヘタレなキャラクターが作品の成功に寄与したものは本当に大きかったと思います。

 

 

 

吹替版でジョージ役を演じているのは古川登志夫さんですが、55年のコーヒーショップで働いている、将来はヒル・ヴァレーの町の市長になる黒人青年ゴールディ(ドナルド・シュリラヴ)の声をアテているのは中尾隆聖さんなので、こんなところでピッコロとフリーザが会話してる、という楽しさも(^o^)

 

 

大げさだけど、この「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作の「日曜洋画劇場」吹替版が観られたら、もう今年の劇場鑑賞映画はこれで観納めでもいいと思ってたぐらいで(いや、あともうちょっとだけ観ますがw)。

 

以前の感想では映画の内容についてあえて批判的なニュアンスの文章を書いたし、そのことを訂正する気もないんですが、そこでも繰り返し述べたように僕はこのシリーズがとても好きなのです。85年の1作目の初公開時からずっと観続けてます。

 

…この映画のどこを批判する必要があるんだ、といぶかしく感じられるファンのかたもいらっしゃるかもしれませんね。

 

批判、というか、全面的に絶賛するだけじゃない見方もできるんじゃないか、という提案なんですが。

 

今ちょうど公開中のドラえもんの3DCGアニメ映画を僕は観ていないので、その作品については何も意見を述べられませんが、「ドラえもん」というのは昭和の時代に生まれた20世紀の作品で、だから今の目で見ると抵抗を覚えるような描写(しずちゃんのお風呂の場面など)とか、やはり疑問を感じざるを得ない価値観(男女観や結婚観など)に基づくメッセージも含まれています。

 

だから、その原作を用いて映像化するならば、どうしても現代的にアップデートさせる必要のある部分というのは出てくるはずなんですよね。

 

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」もまた80年代から90年代初めに作られた映画で、「ドラえもん」と同様に時代を越えた面白さや普遍的なテーマがある一方で、「あの時代だから」スルーされていたけど現在ではもはや通用しない価値観で描かれているところもある。

 

主人公マーティは恋人のジェニファー(1作目:クラウディア・ウェルズ、2・3作目:エリザベス・シュー)と結ばれる運命にあって、彼らの将来や未来の彼らの子どもたちを守るためにドクとともにタイムマシンで時を超えた旅をすることになる。

 

 

シリーズを続けて観ると、2作目で急にジェニファーの顔が変わる楽しさもw

 

「ドラえもん」もまた、のび太が“無事、しずちゃんと結ばれる”ようにするために、22世紀の未来からやってきたんでしたよね。

 

だけど、今だったら別の未来や幸せの形を描くことだってできるでしょう。

 

マーティはジェニファーと、ドクはクララというパートナーを得ることが彼らのハッピーエンドとして描かれるんだけど、必ずしもそれだけが幸せの形だとは限らない。

 

マーティの母ロレインは頼りないジョージ・マクフライのことをマーティに「あの人いい人よ。だけどそれだけでは。男は強くないと」と言う。

 

マーティによって変えられた未来ではジョージは元ガキ大将で彼を苛めていたビフを手下のようにこき使っている。だけど、ロレインが言っていた「強さ」というのはこういうことなんだろうか?疑問を感じる人がいてもおかしくないと思う。

 

映画で最初に登場するロレインはお堅い母親だけど、娘時代はわりと奔放でやることもしっかりやってる女性だったから、息子のマーティによって本来の自分らしさを取り戻せたのだ、といえなくもないけど、結局のところ、彼女にしてもそれからジェニファーにしても、男の子の活躍によって“救われる”受け身な存在として描かれている。

 

今だったら、それこそマーティではなくてジェニファーが主人公として描かれたって不思議ではないし、そしたらそこではマーティが経験したものとはまったく異なる視点の物語になるでしょう。

 

「強さ」とか「男らしさ(“女らしさ”も)」の定義だって変化してるはず(そもそも「男らしさ」とか「女らしさ」などということを口にすること自体、現在では憚られるだろう)。時代や世代が変われば変わっていく価値観もある。

 

PART3で登場したクララも、馬で走って列車のドクを追う積極性はあるけれど、やはり最初の出会いのきっかけも最後もドクに助けられるヒロインというポジションにとどまっている。

 

たとえば、このクララと『トイ・ストーリー4』のボー・ピープを比べてみたら、どちらが現代的な女性像かわかるでしょう。

 

PART3の舞台は19世紀の1885年だから、クララはあの当時の価値観の中で生きているということなんでしょうけどね。

 

クララとドクがジュール・ヴェルヌのSF小説を介して惹かれ合う、というのはとても素敵だったし、マーティの父ジョージもSF映画が好きで自分でもSF小説を書き上げていたから、タイムトラヴェルを描いたSF映画であるこのシリーズの中でしっかりと繋がってはいるんですけどね。

 

ただ、これも意地悪な言い方をすると、ジョージやドクのようなオタクとか周囲からなかなか理解されず変人扱いされてるような男性を愛してくれる女性が理想化されて描かれてるともいえるわけで、そこんとこはやっぱり図式的ではある。

 

…映画に対してケチつけたいんじゃなくて、今なら違うお話にできるよね、と言いたいだけです。

 

このシリーズだって、もう30年前に作られたもので、そこで描かれているのは「あの当時」の価値観や常識なのだから。

 

マーティは「マクフライ家の者は代々落ちこぼれだ」と言うストリックランド先生に「僕が変えてみせます」と答える。

 

彼がタイムスリップした1955年とマーティが生きている1985年とでも価値観は変化している。

 

マーティは85年当時の「今」を生きる若者の代表みたいなキャラクターだったんだよね。

 

美人のカノジョがいてミュージシャンを目指している17歳の少年(演じていたマイケル・J・フォックスは当時20代だったが)が嫌味なく感じられたのは、まさしくマイケル・J・フォックスという若手俳優の持つ軽やかさとその中にある真面目さのおかげでしょう。

 

マーティを演じられるのはマイケル・J・フォックス以外にはいなかった。

 

当初、マーティ役はエリック・ストルツで撮影が進んでいたのが、どうしても違和感が拭えなかったゼメキス監督や製作総指揮のスピルバーグの判断によってストルツが降板させられて、あらためてマイケル・J・フォックス主演で撮影し直されたことは有名だけど、多分、エリック・ストルツ主演だったらマーティはもっと生々しい若者になっただろうと思う。二人とも顔立ちはなんとなく似てるんですが、醸し出してる雰囲気が異なるんですね。

 

エリック・ストルツ版マーティ。ドクとあまり背の高さが変わらない

 

 

 

そちらで完成していたら、監督たちが狙っていたものとは違うものが出来上がったでしょうね。それはそれで今となってはちょっと興味をそそられるけど。

 

マイケル・J・フォックスって小柄(身長163cm)で、スラップスティック・コメディ(ドタバタ喜劇)のような作品にピッタリだから『BTTF』にハマったんだな。ドク役のクリストファー・ロイドやビフ役のトーマス・F・ウィルソンは長身なので、彼らとの身長差もコミカルさを強調する結果になった。

 

僕は特別彼のファンというわけではないし、主演作『摩天楼はバラ色に』や『ティーン・ウルフ』をTV放映で観たことがあるぐらいで、『マーズ・アタック!』以来出演作を観てなくて、ピーター・ジャクソン監督による『さまよう魂たち』、あるいは声の出演をした『スチュアート・リトル』も未鑑賞なんですが、「BTTF」シリーズは子どもの時から楽しませてもらっているから、彼に対する思い入れはある。

 

今では3代でファンの人たちもいるでしょう。息の長いシリーズですよね。シリーズ自体はわずか5年の間に作られた、たった3本の作品なんだけど。

 

それが繰り返し繰り返しTVや映画館で大勢の人々の想い出の中に刻まれていく。

 

人は誰もが老いていく。それは自然の摂理だけれど、だからこそフィルムの中に写し込まれた永遠に歳を取らない彼らの姿が不思議なものに感じられる。

 

当たり前のことだけど、劇中で特殊メイクで老け顔になった彼らよりも、現実に歳を重ねた現在の彼らの方が自然に見える。

 

おじちゃんになったマーティと、もっとおじいちゃんになったドク

 

今年、マイケル・J・フォックスさんは長らく患っているパーキンソン病の進行による記憶力の低下で台詞が覚えられなくなってきていることを理由に俳優引退を表明したそうで、公開35周年という節目のような年に寂しいことではあるんだけれど、でも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』という映画は今後も多くの人々に観続けられて彼のことも記憶され続けていくだろうから、今はただ、お疲れ様でした、というねぎらいの言葉と感謝の気持ちを届けたいです。

 

 

 

 

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