ダグ・リーマン監督、トム・クルーズエミリー・ブラントビル・パクストンブレンダン・グリーソンノア・テイラー出演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』。



近未来。宇宙からの侵略者「ギタイ」との熾烈な戦いが続く最前線に送り込まれたウィリアム・ケイジ少佐(トム・クルーズ)は、戦場でギタイの体液を浴びてから死ぬたびにある地点に戻って同じ日を繰り返すことになる。歴戦の勇士で軍の広告塔でもあるリタ・ヴラタスキ(エミリー・ブラント)もまたかつては同じように“タイムループ”を繰り返していたことを知り、ウィリアムは彼女とともに戦いに終止符を打つために訓練を始める。

ネタバレ注意、ってことで。


原作は桜坂洋による同名タイトルのライトノベル

映画の原題は“Edge of Tomorrow”。

原作ファンを取り込むためか、長ったらしいカタカナのタイトルがうっとーしい。

チケット売り場で何度もタイトルを噛まずに言う練習しちゃったではないか。

おかげでめっちゃスムーズに言えたけど。


トム・クルーズの主演映画を観るのは昨年の『オブリビオン』以来で、その次の『アウトロー』(制作はこちらが先)は観ていません。

予告やポスターを見ると『オブリビオン』とよく似てるもんだから「あぁ、またこういうのやるんだ」と思ったけど、なんとなくポール・ヴァーホーヴェン監督の『スターシップ・トゥルーパーズ』を思わせたりもするんで普通に楽しみにしていました。

『スターシップ・トゥルーパーズ』(日本公開1998年)
出演:キャスパー・ヴァン・ディーン デニース・リチャーズ ディナ・メイヤー マイケル・アイアンサイド




某ラジオパーソナリティ「3Dで観た方がいい」と仰ってたんで、奮発してIMAX3Dで鑑賞。

で、どうだったかと言いますと。

この映画が好きな人は以降は読まない方がいいかも。褒めていないので。

「面白かった!」と言ってる人もいるようですからあくまでも僕個人の感想ですが、僕は「う~~ん↓」でしたね。

何よりもまず、気合い入れてIMAX3Dで観てしまったことを後悔。

¥2300ですもの。けっこういい金額です。

僕はこれまでIMAXで3D映画を観て「うわぁ、失敗した」と感じたことってほとんどなくて、『アバター』にしろ『トロン:レガシー』にしろ、去年観た『パシフィック・リム』も『ゼロ・グラビティ』も、作品によってはストーリーに難があることもあるけど、どれも映像は楽しめたんですよね。

唯一例外として、ハリポタの最終作『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』だけは3Dである必然性をまったく感じなかったんですが。

そして今回もハリポの時と同じように「2Dで充分ですよ!」と思ってしまった。

予告篇観てもわかるように、トム・クルーズが強化スーツを着て宇宙からのモンスターたちと戦うなんて3D映画には打ってつけじゃないですか。IMAXで観ればなおのこと迫力が増すわけだから、ほんとなら面白くないわけがない。後悔なんてするはずがないんだけど。

途中まではそれなりに面白かったんですよ。

少佐のくせに実戦を経験したことがなくて、将軍(ブレンダン・グリーソン)から「最前線へ行け」と言われて歯向かったら逃亡兵として拘束されて戦場にむりやり送られちゃう冒頭から、話の通じない軍曹(ビル・パクストン)や中坊ライクな兵士たちの中に投げ込まれてわけわかんないうちに宇宙モンスター「ギタイ」と戦うことになる、という展開などグイグイ引き込まれる。






プライベート・ライアン』式のキャメラワークで映しだされる戦場の風景、実景に馴染んだ輸送用のオスプレイみたいな飛行機、そして地面から現われて大暴れするギタイとの戦い。女戦士リタとの出会い。

テンポもなかなかいい。

ところが、トムクル演じる主人公のウィリアムが“ループ”を何度も何度も繰り返すようになってきてから、映画はアクション物としてどんどん停滞しはじめる。

繰り返しの場面なんて、ぶっちゃけ手抜きみたいに見えてきて。

それに、某パーソナリティさんは3Dで観ることを推してたけど、僕はこの映画って意外と3D向きじゃないんじゃないかと思うのだ。

だって会話シーンがやたらとあって、戦場でのバトルって実はそれほど多くはないから。

何度も何度も似たような場面が繰り返されるだけだし。

俺がこの映画に期待したのって、観客がトム・クルーズの視点でモンスターと戦うのを体感することだったんだけど、そういう撮り方をしてないから、先ほどの『パシフィック・リム』みたいに実際に自分が巨大ロボを操縦したりロボそのものになってカイジュウと戦ってるような、あるいは『ゼロ・グラビティ』のように宇宙空間にほんとにいるような疑似体験というものがまったくできない。

ハリポの最終作がやはり会話による説明が延々続くという、3Dである意味が全然ない場面がやたらとあったのに似ている。

ダグ・リーマン監督は『ボーン・アイデンティティー』の人だけど、あの映画だって3Dに向いてるような体感型映画じゃないもんな。手持ちキャメラや編集で見せていくタイプの映画監督だと思う。

いわゆる“ドキュメンタリー・タッチ”の映画とアトラクション映画って、まったくの別物だし。

きっと2Dで観てたらここまでコキ下ろさなかっただろうけど、でも3Dにしろ2Dにしろ、SFアクション物としてもどうかなぁ、と。

ほんと、この映画は宣伝で「日本原作」ってのをしつこく押し出していて正直ウザいんですが(映画が面白いかどうかが問題であって、原作者がどこの国の人間だろうが知ったこっちゃない)、原作読んでないから(だから原作の文句は言ってませんので、いちいちカラんでこないように)映画についてだけ述べるけど、この脚本は普通にあまり出来が良くないんじゃないか。

だって、映像で納得させるべきところをノア・テイラー演じる博士とトムクルやエミリー・ブラントたちが設定について全部台詞で説明、解説してるだけなんだもん。それも長々と。




試しに日本語字幕を消してこれらの映像を観てたら、きわめて退屈な場面がやたらと多いことに気づくはずだ。

もう、「オメガがどーたらこーたら」とかって、俺が大嫌いな日本製アニメの悪いとこだけを抽出したみたいな「ダメな脚本」の典型。

そういうどーでもいい「設定」にこだわるよりも(それもたいしたものではない)、もっと映像の見栄えの方を気にするべきじゃないですかね?

マトリックス』に出てきたメカゲソみたいな動きをするギタイとか、『エイリアン2』の海兵隊みたいな兵士たちに先ほどの『スターシップ・トゥルーパーズ』みたいな戦場の様子とか、モンスターが『トレマーズ』みたいに地面から出てくるとか『エリジウム』みたいな外骨格スーツとか、元ネタはあれこれ思い浮かぶけど、目新しいものは何一つない。




しかもこの映画は年齢制限がないから、『スターシップ~』みたいな人体バラバラのグロ描写もないし。

せいぜいはじめの方でウィリアムがギタイの体液を浴びて顔が焼けて死ぬとこぐらい。

観たいものをほとんど見せてくれないのだ。

これほど燃える要素がいっぱいあるにもかかわらず、途中で飽きてしまった映画というのも珍しい。

『エイリアン2』のヴァスケス同様に男たちの中に口の悪いお姐さんが一人混じってたり、あの映画で海兵隊の一人だったビル・パクストンが教官として出演してたりしてジェームズ・キャメロン作品へのリスペクトもしっかりやってるにもかかわらず、元ネタを超えられていない哀しさ。

 
ヒゲ生やして笑うと、モンティ・パイソンマイケル・ペイリンみたいなビル・パクストン。


VFXは確実に進歩してるんだからうまくいけば2010年代の『スターシップ・トゥルーパーズ』としてジャンル映画史に残る傑作にだってなっただろうに、残念だなぁ。

まぁ、そのうちTVの地上波で放映してくれたら、Twitterで実況しながら“ながら見”するには最適な作品かもね。その程度には楽しめる作品なのでは。

この映画の原作者はゲームからこの作品のアイディアを思いついたそうだけど、僕は映画を観ていて、主人公はまんまゲームキャラなんじゃないか、って予想してたんですよね。

死んだらまた元の場所に戻ってそこから再開って、ゲームそのものだもんね。

だから、これもヴァーホーヴェンの『トータル・リコール』みたいに、主人公が「もしかしたら、俺は実在しないのでは?」と疑いだすようなメタフィクション映画を期待してしまったのだ。

そういうタイプの映画はわりと好きなんで。

まぁ、それやるとM・ナイト・シャマランみたいなトンデモどんでん返し映画になっちゃう可能性もあるが。

だけど、この映画よりはマシになったと思うよ。

だって、何度も何度もループを繰り返す理由が単にエイリアンに脳をいじられてたから(ゴチャゴチャと屁理屈コネてるけど、大雑把にいえばだいたいこういう理由)なんて、面白くもなんともないじゃん。

後半で、その日会ったばかりのはずのメンバーがいきなりウィリアムの説得に応じて隊を離れて彼と一緒に戦いだすのもヘンだし。どんだけ人がいいんだよお前ら^_^;




で、最後は『パシリム』よろしく主人公が敵の親玉に特攻かけて勝利(これもあーだこーだと解説してるが、だいたいこういう展開)って、その工夫の欠けらもないラストには溜息すら出てしまう。

クライマックスであの強化スーツ着てないしさぁ。

とにかく後半はウトウトしかけてしまうぐらい退屈でした。

お話がお粗末なんだったら、せめてIMAX3D(まだ根に持ってる)の利点を最大限に生かして映像の凄さで圧倒させてほしかった。

戦場でギタイとぶっ殺しあう兵隊たちのSF版『プライベート・ライアン』を見せてくれたら、それだけで¥2300なんて安いと思えただろうから。


ヒロインを演じるエミリー・ブラントは、ベニチオ・デル・トロ主演の狼男映画『ウルフマン』や、マット・デイモン主演の『アジャストメント』、日本では昨年公開のジョセフ・ゴードン=レヴィット主演『ルーパー』など(2013年にはゴードン=レヴィットとともに『風立ちぬ』の英語版の吹き替えも担当している)、主演男優のお相手を務めることが多くて僕もその出演作をけっこう観てますが、日本での知名度はさほど高くはないので、ぜひぜひ今後顔と名前が知られてほしいですね。

 


Twitterだったかで彼女のことを「ヒロインがメスゴリラ」とかホザいてる奴がいたけど、あんな可愛いメスゴリラがいるか!^_^;

ケツアゴがセクシーだけど、日本人ウケはしにくいのかもしれないな。

顔立ちがルーニー・マーラと若干カブってる気もするし。

けど、俺は好きだぜ!!

彼女の主演映画を観てみたい。


先ほど52歳の誕生日を迎えて来日時にみんなから祝福されてたトム・クルーズに対しては、新興宗教サイエントロジーがらみで残念感はあるものの、映画スターとしては特別な存在であることは間違いなく、2011年以降はほぼ毎年1本、多いときには2本の映画に主演するという(というか、フィルモグラフィを見るとこの人は3年以上ブランクがあったことがない。もちろんその間に新作の撮影をしていたわけで、つまりデビューしてから30年以上働きづめなのだ)驚くべきワーカホリックぶりには驚嘆せざるを得ない。

なんだかんだいって、僕もこの数年間彼の出演作をけっこう観てますし。

例に挙げて悪いけど、同じハリウッドの大スター、ジョニー・デップのここ数年における主演作のハズレの多さに比べたら、トムさんが企画を見極める目ははるかに確かだ。

それだけでも信頼に値する。

そんなわけで、今回は僕はザンネンだったけれど、トム・クルーズがまたあの「笑顔」を引っさげて新作を披露してくれるのを楽しみに待ってます。


※ビル・パクストンさんのご冥福をお祈りいたします。17.02.25



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