判例時報2635号で紹介された裁判例です(東京地裁令和6年9月18日判決)。

 

 

夫婦の共有名義とされている不動産について、家庭裁判所の財産分与手続によるか、通常裁判所の共有物分割手続によるかという問題があります。

それぞれ、考慮される事情や分割方法が異なるため、手続きの適否が争いとなることがあります。

 

 

本件は、元夫婦間での係争ですが、元夫が夫婦共有名義の複数のマンションにつき共有物分割による分割を求めたのに対し、元妻は財産分与手続によるべきであり、元夫の請求は権利の濫用であるとして争いました。

 

 

本件において、裁判所は、次の通り判示して元妻の主張に軍配をあげています。

・本件マンションの帰すうを財産分与手続に委ねた場合には、他の夫婦共有財産と併せてその帰すうが決せられることになり、マンションの取得に当たっての当事者の意向、マンションの取得に当たっての元妻の特有財産の支出を考慮すると、元妻が負担しているマンションの住宅ローンの元夫の内部的負担をゼロにすることで元妻が代償金を支払わずに取得することとなる可能性があるが(住宅ローンの元妻が負担し続ける代わりにマンションを取得するという意味)、これを共有物分割手続で処理する場合には元妻が代償金を支払わずに単独取得する余地はないから、マンションの帰すうを決するために共有物分割手続を選択することは、元妻が代償金を支払わずにマンションを単独取得する可能性を奪うとともに、代償金の額が元妻の資力を上回る場合にはマンションに居住する元妻の自宅を奪うこととなって元妻に酷である。

・元妻がマンションを単独取得するために必要な代償金の額についても、元妻の特有財産による支出等の無形の寄与を考慮できる財産分与手続によるか、これを考慮できない共有物分割手続きによるかによって異なる可能性があり、後者による場合にはマンションの競売を命じた場合に元妻が取得できる代金の額も、無形の寄与が考慮されない持分割合に応じたものとなる。

・マンションの住宅ローンを元妻が支払っており、離婚判決がすでに確定して元妻から元夫に対して財産分与を求める調停が既に申し立てられていることも考慮すると、元夫を住宅ローンの負担から早期に解放するためマンションの帰すうのみを先に決するために共有物分割手続によるという必要性も高いとはいえない。むしろ、財産分与手続に委ねたほうが、他の夫婦共有財産と併せて分与の額及び方法を定めることかでき、元妻のみらなず、元夫にとっても両者間の権利義務関係を総合的に解決し得るという意味では利点がある。

・先行して進められた離婚訴訟(元夫が原告として離婚を求めたのに対し、第一審では有責配偶者として離婚請求が棄却されたが、控訴審において認容され確定した。)においては元夫はマンションが夫婦共有財産であることを認めていたのに対し、本件訴訟では一転して財産分与の対象とはならないとの主張をしていること、離婚判決により財産分与の手続を勧められる余地が生じた後に本件請求に係る訴訟を提起していることなどから、マンションの帰すうのみを先に決することをも認めている元夫の意図としては、

元妻の特有財産の支出等の無形の寄与が考慮された財産分与がなされる前に共有物分割手続において持分の価格を取得し夫婦共有財産の実質的な精算を拒むことで元妻に経済的な不利益を負わせることにあったものと推測される。

 

 

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