判例時報2636号で紹介された裁判例です(大阪高裁令和7年3月27日判決)。

 

 

民法210条1項は、周囲を囲まれて公道に出られない土地(袋地)の所有者が、公道に出るため周囲の土地所有者に対して通行権をし主張することができることを規定しています。

 

民法

(公道に至るための他の土地の通行権)
第210条1項
 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

 

僅かにでも公道に通じていれば民法210条通行権が認められないのかについて、「民法210条1項は、他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができると規定するところ、「他の土地に囲まれて公道に通じない土地」には、通路が他に存しない場合のみならず、通路が他に存する場合でも、土地の形状・面積・用途などを考慮してその土地に相応した利用をすることが困難である場合も含まれると解するのが相当である。」(東京地裁平成22年3月18日判決)など、これを肯定するのが多数の見解とされています。

 

 

また、210条通行権において認められる通行権の範囲と建築基準法上の接道要件との関係については判例があり、「民法210条は、相隣接する土地の利用の調整を目的として、特定の土地がその利用に関する往来通行につき必要不可欠な公路に至る通路を欠き袋地に当たる場合に、囲繞地の所有者に対して袋地所有者が囲繞地を通行することを一定の範囲で受忍すべき義務を課し、これによって、袋地の効用を全うさせようとするものである。一方、建築基準法43条1項本文は、主として避難又は通行の安全を期して、接道要件を定め、建築物の敷地につき公法上の規制を課している。このように、右各規定は、その趣旨、目的等を異にしており、単に特定の土地が接道要件を満たさないとの一事をもって、同土地の所有者のために隣接する他の土地につき接道要件を満たすべき内容の囲繞地通行権が当然に認められると解することはできない」(最高裁平成11年3月13日判決)とされ、必ず、接道要件を満たすだけの幅員の通行権が認められるというわけではありませんが、諸事情を勘案してこれを認めた裁判例もあります。

 

 

隣接地で運送業を営む会社に対して当該位置指定道路の自動車での通行禁止を求めた請求が棄却された事例 | 弁護士江木大輔のブログ

 

囲繞地通行権と建築基準法が定める接道要件(道路に2メートル以上接すること) | 弁護士江木大輔のブログ

 

 

以上は民法210条通行権についてのものですが、本件は、分割によって袋地が生じた場合についての規定である民法213条1項についての事案ですが、判決では、上記の210条通行権の考え方を踏襲し、民法213条通行権についても、別の囲繞地の通行が可能であるからといって他方の囲繞地の通行権は否定されないこと、諸事情を勘案して、本件においてはその通行権の範囲について接道要件を考慮する必要がないとするのは相当ではないとしています。

 

 

第213条1項 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。