Aが売買代金の支払のために振り出した約束手形について、受取人Bがさらに売買代金の支払のためにCに裏書譲渡されたという場合に、AB間の売買契約が解除されるなどしたしてもAはCに対して、原則としてそのような抗弁を対抗することができません(手形法77条1項1号・17条本文)。例外的にCがAを害することを知っていたという場合には対抗できることとされています(手形法17条但書)。

 

 

手形抗弁の制限 | 弁護士江木大輔のブログ

 

 

BC間の売買契約が解除されたのに、CがAに対して手形金を請求してきた場合には、権利濫用としてAはCからの手形金請求を拒むことができるというのが判例です(後者の抗弁)。

 

 

後者の抗弁 | 弁護士江木大輔のブログ

 

 

それでは、AB間もBC間にも抗弁事由があるような場合は、どのように考えるべきでしょうか(二重無権の抗弁)。

AB間の抗弁事由だけを問題にすれば原則としてCに対しては対抗できないということになりますが、BC間の抗弁事由を問題とすれば権利濫用として手形金請求を拒めるということになります。

 

 

判例(最高裁昭和45年7月16日判決)は、原因関係に由来する抗弁は、本来、直接の相手方に対してのみ対抗しうるいわゆる人的抗弁たりうるにすぎないが、人的抗弁の切断を定めた法の趣旨は、手形取引の安全のために、手形取得者の利益を保護するにあると解すべきことにかんがみると、自己に対する裏書の原因関係が消滅し、手形を裏書人に返還しなければならなくなつているのに、手形の支払を求める何らの経済的利益も有しないものと認められる手形所持人は、かかる抗弁切断の利益を享受しうべき地位にはないとし、権利濫用ということも言わずに、問答無用にAはCからの手形金の請求を拒むことができると判示しています。