仕事を特定の職種に限って働く人に対し、使用者が別の職種への配置転換を命じられるかが争われた訴訟で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は26日、労働者の同意がない配転命令は「違法」とする初判断を示した。労働環境の変更を巡り、労使間の合意を重く捉えた判断といえる。

(4月26日日経新聞から一部引用)

 

従来型の職種限定のない正社員、全国転勤ありの終身雇用のケースでは、場所的な転勤に係る配転を巡って、従業員側の介護などの必要性が主張され有効性が問われることが多かったと思われますが、使用者側が主張する転勤の必要性については緩やかに解釈され転勤命令が有効とされる事例ことが多かったように思われます。

 

 

もっとも、場所的な転勤を命じる配転命令の有効性が問われる事案においても、場所的に勤務地の限定合意がされていた場合には、使用者が労働者の同意なく配転命令を出すことはできないと解されており、それとパラレルに考えれば、本件のように職種が限定されている場合に多職種への配転命令も従業員の同意がなければできないということは当然の帰結かと思われます。

本判決では、配転権限を濫用したということではなく、そもそも、使用者は配転を命じる権限自体を有していなかったと判断されています。

 

 

【裁判所 最近の最高裁判例】

092928_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

 

ただ、本件では、そもそも当該労働者の職種を必要とする業務自体がなくなっていたという特殊事情があるようですが、そのような場合でも多職種への配転を行う権限がないということになりますが、そのような場合、退職を勧奨するということになるのか、どのような処理をしていけばよいのかということついては次の問題として残ることになります。

また予防法務的には、労働契約の時点で異なる職種への配転を命じることがあるということを確認しておくということも必要になってくるものと思います。

 

 

配転命令の有効性について第一審判決と控訴審で判断が分かれた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

介護施設における通所部門から入所部門への配転命令が無効であると認められた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

「異動拒否で解雇は無効」と提訴 米医薬品大手日本法人の元社員 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

大学教授に対する配転命令拒否を理由とした解雇の有効性が争われた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)