判例時報2447号で紹介された事例です(大阪高裁令和元年11月8日決定)。

 

 

本件は,別居親である父親が,母親に対して,子どもである小学生の姉妹との面会交流を求めたという事案です。

もともと,父母間では月1回程度の面会交流を認める調停が成立していましたが,面会交流が実施されなくなったことから,改めて父親が面会交流を求めたのが本件ですが,原審(家裁)は,次のような理由から,直接の面会交流を認めた前件調停を変更して,プレゼントや写真の送付,手紙のやり取りのみの間接交流に留めるものとしました(適宜の時期に直接交流を再開させるのが望ましいと付言が付されている)。

①婚姻当初から父親が何度も女性問題を起こしていたことに婚姻関係の悪化の原因があり,別居中も父母は双方行き来をして家族で旅行に行くなどしていたが,父親宅で女性と母親が対面してしまったことがきっかけとなって面会交流がなされなくなったこと

②母親は,父親宅で女性と対面したことで大きなショックを受け心身不調に陥り,これを見た子供たちが母親を気遣う事態となった

③長女,二女とも父親を慕う気持ちはあるが,特に長女は父親と面会交流することが母親を悲しませるという忠誠葛藤を抱いていること

④母親は主治医から心身の不調の原因となっている父親との接触を避けることが望ましいと診断されていること

 

 

父親からの抗告を受けた高裁では,父親と子どもたちとの月1回の直接の面会交流を認めました(但し,前件調停では具体的な時間や場所,方法については父母間で協議するとされていたものを,現状では当事者の協議に委ねることは難しいとして,具体的な時間や場所,受け渡し方法を定めています)。

理由としては,本件では,父母が別居後も,それぞれの自宅の行き来ををしたり子供たちを連れて国内・海外の旅行に行ったり,親族の結婚式に参加するなど,相応の交流がなされ,子どもたちも,父親を慕っており,父親から不適切な言動がなされたという事情もなかったという点に特色があり,長女が父親に会いたいけれども忠誠葛藤に陥っているという状況を考慮すると,面会交流を止めることが子の福祉に適うとされました。

母親が心身の不調に陥っていることなどの事情については,母親が復職できるまでに回復していることや,子どもの年齢などからすると,目の届く範囲内の短距離であれば受け渡し場所まで子どもたちだけで歩いていくこともでき父親と会わないように面会交流を図ることは可能であることなどからすれば,直接交流を制限すべき理由にはならないとしています。

 

 

 

【父親と子どもとの直接交流を禁止して間接交流(手紙などの送付)の限度に留めた事例】

https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12571767638.html

 

【面会交流の申立てにおいて子どもの電子メールアドレス・ラインIDの通知をすることを認めた事例】

https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12606493347.html

 

【未成年の子との面会交流について面会の諸条件が整っていないとして申立が却下された事例】

https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12434475886.html

 

【子どもの写真の送付という間接的な面会交流に留めた審判例】

https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12083469354.html