判例時報2442号で紹介された事例です(東京高裁令和元年8月23日決定)。

 

 

本件は,離婚時に月1回の面会交流を取り決めて和解離婚したが,その後,果たされていないとして父親から母親に対して面会交流の時期や方法について定めることを求めたという事案です。

なお,本件の特徴としては高裁の決定時において3人の子どもたちの年齢がそれなりに高いことです(長男19歳,二男16歳,三男14歳)。

 

 

本件では,離婚成立前の別居期間中において面会交流調停が申し立てられ,試行的面会や調停成立後の父親と子どもたちとの面会交流はなされていたのですが,離婚後すぐの面会交流において,宿泊付きの面会交流をする段階になってトラブルが発生し,子どもたちが父親との面会交流を拒否するようとなってしまいました(子どもたちはホテルでの宿泊による面会を希望していたのに,父親は緊急に手術を受けなくてはならなくなってとして父親の実家に子どもたちを連れて行き,そこで親戚たちとの集まりに参加させたという出来事があり,このことをきっかけにして子どもたちから父親に対する不信感がぬぐえなくなってしまったようです)。

 

 

父親が申し立てた本件の面会交流調停において,父親は子どもたちの真意を確かめ利益を保護するためとして子どもの手続代理人の選任を裁判所に上申し,選任された子どもたちの手続代理人である弁護士が子どもたちの意思を確認したところ,やはり,「父親には不信がありあいたくない」というものでした。

 

 

そこで,原審(家裁)は,子どもたちが会いたくないという意思を示しているのに無理に面会交流を強制することは子どもたちの福祉に反するとして手紙や写真などのやり取りを通じた間接交流に限って認めるという審判を行いました。

父親からの抗告を受けた高裁では間接交流の一方法として,さらに,子どもたちの電子メールアドレスとラインのID父親に伝えることを母親に命じました。

これは,子どもたちの抵抗感があるであろうことを考慮しても,子どもたちの年齢がそれなりに高く判断能力もあることから,より簡便で効果的な連絡手段として電子メールやラインによる間接交流を認めるべきであるとの判断を示したものです。但し,父親に対しては,送信するメッセージの内容によってより一層子どもたちの反感を増すことのないように十分な配慮をすべきであるとくぎも刺されています。