http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160708/k10010588081000.html?utm_int=news-social_contents_list-items_047

 

起訴状などによりますと、2人はことし5月、福岡地方裁判所小倉支部で特定危険指定暴力団、工藤会系暴力団幹部の殺人未遂事件を審理した裁判員2人に、裁判所付近の路上やバス停で、「あんたら裁判員やろ。顔は覚えとる。よろしくね」などと声をかけ脅すなどとして、裁判員法違反の罪に問われています。
捜査関係者によりますと、2人はこれまでの調べに対し、「脅すつもりはなかった」と供述していたということです。
(7月8日付NHKニュースウェブから一部引用)。

 

誰もが忙しい中、わざわざ一般市民に何の得にもならない刑事裁判に時間と労力をかけて関与してもらっているわけですから、参加した裁判員が暴力団から嫌な目にあわされたということであれば、だれも参加したくなくなってしまい、ただでさえ低いとされる裁判員に選ばれた候補者の選任手続への出席率がさらに下がってしまうことが懸念されます。

 

 

裁判員裁判を推し進めている検察当局としては、制度を愚弄するかのような暴力団員の行為について、起訴に向けて、威信にかけて捜査したであろうことが推察されます。

 

 

その際にネックとなったのは、声をかけられた裁判員だった市民からの協力の取り付けだったように思います。

 

 

被疑者は暴力団員であり、声かけの事実は認めているようですがその趣旨は否認しているようですから、起訴した後の公判において、被告人側が市民の検察官調書などを証拠とすることに不同意とした場合、市民に証人として出廷を求めて、声掛けの事実やその際の状況などについて証人尋問を行うということになります(もちろん、遮蔽措置やビデオリンク方式による尋問などありとあらゆる証人保護のための措置は尽くされるものと思います)。

 

 

暴力団員から声掛けされて畏怖されたからこそ、裁判所に申し出て、裁判員から外してもらったというのに、公判で証人尋問されるということになれば、さらに迷惑が続くことになります。

 

 

仕組み上仕方のないこととはいえ、裁判員を務めていた市民にはまことにお気の毒というほかはありません。

 

 

私は、被告人、被害者やそれらの家族の感情、思惑などが入り乱れ(主張が入れられなかった当事者からすると恨みの対象ともなりかねません)、また、法の建前(理念)とは別に、往々にして、証拠関係も錯綜しあまり整理もつかないまま尋問に突入することも多い一審は段階はプロのみによる手続きとして、一般市民の参加は事態もある程度落ち着いた控訴審段階から取り入れたほうが良いのにという意見を持っているものですが、今回のような事件が起こったということからしても、市民が顔をさらして手続に参加して量刑まで決めてしまうという現在の制度には懐疑的にならざるを得ません。

 

 

 

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