野毛でやさぐれた夜 帰宅後、ＮＨＫのＢＳで
放送されているシリーズ『旅のチカラ』を観ました。
これは各界の有名人がひとりレポーターになって
世界のどこかを旅するドキュメンタリ－番組です。
最後に旅人は何かの気付きを得る、というところが
この番組のきもといえます。
今回の旅人はイラン人のタレントでモデル
サヘル・ローズさん。
美しい顔立ちながら笑いのセンスもあり、訛りの無
い日本語、魅力的な声、笑顔が良く頭が良いと
いった印象のタレントです。
副題は「失われた故郷の記憶を求めて」。
生まれ故郷のイランを訪れます。
サヘル・ローズさん、４歳の時にイラン・イラク戦争
で爆撃を受け両親と10人いた兄姉全て亡くします。
そして現在の母フローラ・ジャスミンさん（当時女子
大生ボランティア）によって倒壊した家の瓦礫の中
からひとり救助されます。
その後サヘルさんは孤児院に収容されます。
孤児院を見舞ったフローラさん、「お母さん」と呼
び慕うサヘルさんを見て引き取ることを決意します。
上流階級だったフローラさんの親は未婚のフローラ
さんが継母になることに猛反対し、経済援助を断ち
切ります。
さらに養子を取るには「子供の生めない身体」など
の条件が法律で決められていました。
それでもフローラさんは、両親と縁を切り、「子供の
生めない身体」への手術を施してまでサヘルさんを
引き取り、教師をしながらアパートで同居を始めます。
今回の番組ではフローラさんは顔を出さず、この辺り
の経緯や心情には詳しく触れていません。
生活が逼迫していった２人は、フローラさんのフィ
アンセであったイラン人男性を頼ってサヘルさん8
歳のとき日本に移住します。
しかしその男性とフローラさんの生活が上手くいか
ずに別れると、フローラさんに職が無かったため
学校の校庭でホームレス生活を送ったこともあった
ようです。
番組でのサヘルさん、テヘランの市場を歩いた
後、孤児院を訪問。その後住んでいたアパートを
訪れます。そしてその頃の幼馴染に会います。
サヘルさんは小学校当時、とても可愛がってくれ
た緑の瞳をした先生に会いたいと熱望。
幼馴染の協力でようやく探し当てます。
そして今は引退し、郊外で暮らす先生との再会。
七郎委員長、酔いも手伝ってかもう冒頭から涙
でグショグショです。
サヘルさんの壮絶な人生にも感動しますが、も
っとも感動したのはイランの方々の優しさでした。
どうも抱いていたイラン人のイメージが固まった
のは、ニュースなどで権力者ばかりを目にしてき
たからかもしれません。
でもイスラムの方々も優しいのですね。
先生宅を離れたサヘルさんは戦死者が葬られて
いる墓地を訪れると、息子を戦争で亡くしたイラン
のご婦人が穏やかに「息子のために祈ってくだ
さい」と言います。
「貴方はどなたを失ったの？」
「私は両親と兄弟を失っています・・・」
こんな優しさが日本人にはあるのか？そう思って
いると、突然サヘルさん日本の小学校での映像。
サヘルさんの通っていた小学校の給食しか食べる
ものがなかった時期、フローラさんは給食の調理師
と親しくなり生活のサポートを受け、ペルシャ絨毯製
造の仕事を探してくれる。さらに二人は校長による
補習授業で日本語を学んだそう。
そんな優しい日本人もいたことを知って安心。
しかしサヘルさんは小学校、中学校時代にはいじめ
にも遭ったらしい。
番組は最後にペルシャ絨毯の名人の女性の家を
訪問します。
そして夕食を振舞われる。その席で名人の息子達が
「今度来る時はお母さんも連れておいでよ！」
優しい眼差しでした。
その後、名人の女性と公園を散歩。サヘルさんに
「貴方は強い人、よくここまでやってきたわ！」と言う。
「いいえ私は弱い人間です・・・だって・・・」
「いいえ本当は貴方は強いのよ！」
サヘルさん、そうか、私は自分が“弱い”と思い込
むことに逃げていたんだ・・・と気付きます。
そしてテヘラン市街を臨む丘に佇むサヘルさんの
姿と共に静かに番組は終ります。
七郎委員長、ここではもう嗚咽さえ・・・。
現在のサヘルさんがどうやって大学まで行けたの
か？芸能界に入るきっかけは？など放送されない
部分も知りたいところではありました。
久々感動した番組でした。
そして想いました、本当は優しい人間同士が殺しあ
ってはいけません！
権力者は無傷、いつも犠牲になるのは女性・子供
なのですから・・・。
明日13日(木)AM8～9、再放送があります。