こんにちは。先月(2024年1月)本を買っていない、エドゥアルド・ルイスです。雑誌は一部買ったんですが、本とはちょっと違うし含めるにしても一冊だけじゃなぁということでやめときました。それに、家にある本をまだ読み終えていないうちから買うのもどうかと思うしお財布も危機的状況だし。
そんな枕から今日は新書『刀伊の入寇 平安時代、最大の対外危機』を紹介します。そんな事件あったっけ?となるのも無理ないです。今年の大河ドラマ「光る君へ」の登場人物FUJIWARA多すぎぃ!な日本史取ってない人にはなおさら酷だし、歴史と言えば戦国と幕末なオッサンにもなじみがないし、フィクションでも葉室麟が『刀伊入寇 藤原隆家の闘い』で取り上げたくらいだし、本書の筆者からして執筆依頼を受けたとき(2019年)この一大危機から「千年などとは考えもしなかった」(p.180)とあとがきで書いているし、というくらいマイナーなのですから。
内容は専門的とはいえ、論の組み立てが整然としており全体の把握にはもってこいとなっています(権門とかわかんねーよ、という方には『中世に国家はあったか』の一読をおすすめします)。中国唐王朝の崩壊から始まる前史、事件そのものの実相、語られ方も含む後日談と、刀伊の来襲(入寇はバイアスがかかっているきらいのあるターム)を中心軸に文字通り古今東西論じています。
特徴的なのは日本史全体における事件の位置づけ。外国との交流を盛んにしていた「開の体系」と国を閉ざし時にとげとげしくあたる「閉の体系」の交互の波を演繹的に設定しそれに沿った説明を試みています。
日本内部の国のあり方の移り変わりも、刀伊来襲と他の時代の対外勢力との衝突(具体的には寛平6年(894年)の新羅船の対馬来襲といわゆる元寇)への対処方法を通じて観察しています。古代の律令制と律令制解体の穴埋め的に発達した王朝国家体制、そして幕府と呼ばれる武家体制の対処の違いが体制の仕組みを大きく反映しているのがまことに興味深いです。
違いの一方で時代の地平のつながりっぷり、具体的には平安時代と鎌倉時代の近さも感じられます。イメージが対照的な両時代ですが平安時代に武士の素地がかなり作られていたんですねぇ。「鎌倉殿の13人」を見ていた人も「光る君へ」を楽しみにしている人も一度読めば時代背景理解がかなり鮮明になるのでは。
と、ここまで書いて内容に踏み込んでいないのに気づきましたが、豊富かつ確かな史料に基づいていることは保証します。藤原実資、筆まめでありがたい。ロバート秋山、大丈夫なのか!?(ってこんなシメ方している私が大丈夫なのか?)
La dinastía Tang era tan influyente que su caída dio un golpe al orden internacional en Asia Oriental.
(唐王朝の影響力は絶大で、その崩壊は東アジアの国際秩序に打撃を与えた。)
『刀伊の入寇 平安時代、最大の対外危機』
関幸彦
中公新書
高さ:17.4cm 幅:11.2cm(カバー参考)
厚さ:0.9cm
重さ:150g
ページ数:189
本文の文字の大きさ:3mm