いまは、どうなんでしょうか。
わたしが、漫画家さんにコミック誌以外の取材で頻繁に会ってたころは、
売れっ子は、けっこう囲い込まれていました。
要するに、競合他社の雑誌には書けないというか、書かない。
暗黙のルールのようなものがありました。
まあ、マンガというのも、けっこう大変なんです。
連載をこなしていくのが。物理的にも。
だから、自ずと何誌も掛け持ちはできないということもあったと思いますが。
一般の書籍編集部でも、似たことは起こることがあります。
版元によって呼称はいろいろですが、
書籍編集部の編集部長とか、編集長は、他の企業で言えば、
事業部長だったり、事業本部長だったりします。
取締役であることも多いです。
なかには、上には社長しかいない、いわゆるナンバー2の方が、
現場の編集と一緒に、出張校正に印刷所につめたりもします。
規模にもよりますが、経営者、社長が編集長を兼務している場合もあります。
で、このクラスの方たち同士が、会見したり、ランチしたりすることがあります。
紳士淑女ですから、競合他社が相手とは言え、丁々発止とやりあうようなことはありませんが、
さりげない牽制であったり、密かなジョイントベンチャーだったりします。
まあ、あまり詳しくは書けないですが、
漫画家に近いことが、一般のビジネス書などの著者についても、
あったり、なかったり。
まあ、これは編集技術というか、
経営です。
はっきりと競争が行われています。
著者には、一々知らされないことです。
単行本の文庫化が、単行本の版元とは別の版元によって行われようとするような場合、
やはり、挨拶は欠かせません。
著者がOKしても、版元がそれはちょっとと言えば、
話はなかったことになったりします。
意地悪でそうするのではなく(爆)、
「版権」というものは、出版社に属しているからです。
「著作権」と同等もしくは、それ以上の強さを持ちます。
(「版権」という言葉は、現在の法律では何も規定されていません。法的な問題を超えるところがあります。「出版権」という用語はあります。「出版権」と「著作権」の綱引きのようなものです。ですので「版権」は「著作権」と同じとしている記事を見かけますが、この解釈は、まったく意味をなしていません)。
特殊なキーワードを含む本の場合は、
「商標登録」なども必要となることがあります。
これは登録者のみが有する、使用を許される権利です。
出版法務という言葉はあまり聞きませんが、
編集者にも法務の心得は必要です。
欧米、とくにアメリカだと思いますが、
もっぱら著者の側に立って、その権利、利益を守る、
リテラシー・エイジェントが作家にはついていることが多いです。
「編集長」というと、大部屋の奥のデスクに座って、
原稿をチェックしたり、著者と企画をつめたり、取材に立ち会ったりというイメージが濃いと思いますが、それだけが編集の仕事ではありません。
「実務」というものも、欠かせない仕事として、大きな比重を占めています。
マネージとイメージの両輪が必要な仕事です。