カウンターに置かれた一杯の豚汁。
白い湯気が、ゆっくりほどけていく。
味噌の匂いが、静かに残る。
「できたー!」
厨房の奥で、クゥーが声を上げる。
水道の音が、まだ流れている。
「ロクさん見て、この里芋。
石みたいに固かったんだよ」
流しに泥の跡。
濡れた手で、ゴボウを並べている。
トン、トン、トン。
包丁の音が、少しだけズレる。
「……太いな」
「え、うそ?ちゃんと薄くしたよ?」
「まあ、いい。食えなくはない」
鍋の中で、ぐつぐつと低い音。
表面の油が、ゆっくり揺れる。
クゥーが味噌を溶く。
少しだけ、手が止まる。
「……これくらい、かな」
火を止める。
音が、ふっと消える。
「はい、おまちどおさま!」
湯気が立つ。
顔に当たって、少しだけぼやける。
一口すする。
味噌のあとに、生姜が少し強い。
「……入れたな」
「ちょっとだけだよ!」
「ちょっとじゃないな」
クゥーが笑う。
ゴボウは少し太い。
噛むと、ちゃんと香りが出る。
湯気が、ゆっくり消えていく。
「ロクさん、おかわりいる?」
「……まあ、もらっとく」
今日の注意書き
※ 火傷に注意。油の膜は、見た目より熱い。
※ ささがきは細い方がいい。でも太くても食える。
※ 味見は大事。たまに外すくらいでちょうどいい。
次回
