36皿目 泥を洗えば、味が出る ― ちょっと、太いけど ― | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。


カウンターに置かれた一杯の豚汁。  

白い湯気が、ゆっくりほどけていく。  

味噌の匂いが、静かに残る。  




「できたー!」  


厨房の奥で、クゥーが声を上げる。  

水道の音が、まだ流れている。  


「ロクさん見て、この里芋。  
石みたいに固かったんだよ」  


流しに泥の跡。  

濡れた手で、ゴボウを並べている。  


トン、トン、トン。  

包丁の音が、少しだけズレる。  


「……太いな」  


「え、うそ?ちゃんと薄くしたよ?」  


「まあ、いい。食えなくはない」  


鍋の中で、ぐつぐつと低い音。  

表面の油が、ゆっくり揺れる。  



クゥーが味噌を溶く。  

少しだけ、手が止まる。  


「……これくらい、かな」  


火を止める。  

音が、ふっと消える。  


「はい、おまちどおさま!」  


湯気が立つ。  

顔に当たって、少しだけぼやける。  


一口すする。  

味噌のあとに、生姜が少し強い。  


「……入れたな」  


「ちょっとだけだよ!」  


「ちょっとじゃないな」  


クゥーが笑う。  


ゴボウは少し太い。  

噛むと、ちゃんと香りが出る。  


湯気が、ゆっくり消えていく。  


「ロクさん、おかわりいる?」  


「……まあ、もらっとく」  


今日の注意書き  

※ 火傷に注意。油の膜は、見た目より熱い。  
※ ささがきは細い方がいい。でも太くても食える。  
※ 味見は大事。たまに外すくらいでちょうどいい。

次回