第32皿目:にんじんの葉の白和え ― 苦味は、根性の証拠 | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。

                  夕方の台所。


奥のコンロでは、まだ鍋が微かな音を立てている。


ロクは相変わらず、その湯気を見つめたまま動かなかった。


「……まだ、煮えませんか」

クゥーが勝手口の泥付きにんじんを手に取った。



ふさふさと立派な、深い緑の葉がついている。





「あんたが難しい顔してるから、こっちまで腹が減ってきた。これ、捨てるならもらいますよ」


「……好きにしろ。油と相性がいいぞ、それは」


「わかってます。でも、今夜は白和えを突きたい気分なんだ」


クゥーは鼻歌まじりに、葉を刻み始めた。

さじ加減は、自分の指が覚えている。


すり鉢の中で、茹でた豆腐とゴマが混ざり合う。


ゴリゴリ、と。静かな台所に、重みのある音が響く。

「しっかり当たれば、葉っぱの意地も溶ける……。あんたが前に言ったんでしょう?」


白い衣をまとった緑の葉は、どこか誇らしげに見えた。





差し出された小皿を、ロクは無言で口に運ぶ。


「……ふん。アクが強いのは、それだけ根性が詰まってる証拠だ。その意地を殺さねえように、しっかり当たれ。……急ぐと、苦味が出るぞ」

ロクはそう言って、また自分の鍋に向き直った。


あっちの「答え」が煮えるには、もう少し時間がかかりそうだ。

「……ま、気長に待ちますよ」


お腹も心も、また明日で。


🏮 今日の注意書き

葉っぱは捨てません(根性が詰まっています)

すり鉢は急ぎません(意地を、白く溶かします)

アクは旨味です(見た目に、騙されません)

鍋の中身は、まだ内緒です(湯気が、じっと聞いています)

次回

第33皿目:至福の豆腐レアチーズケーキ

― 静かな甘さの理由 ―


🏮 本日のお品書き(全話一覧)

書き写している最中の古い伝票(過去記事)たちです。

一皿ずつ、丁寧にリンクを繋ぎ直しています。


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―― 答えは、この物語の「はじまり」に置いてあります。

焦らず、白和えでも突きながら、お待ちください。