31皿目 おにぎり ― 一番静かなごちそう。 | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。


夕方の光が、カウンターの木目をゆっくりなぞっていた。

鍋の湯気が、店の古い窓にふわっと触れて消える。

クゥーが奥から顔を出す。

「ロクー、今日はね、すごいの作った!」

ロクはフライヤーの前で腕を組んだまま、ちらっと見る。

「……また変なのか。」

クゥーは胸を張る。

「おにぎり!」

沈黙。

「……普通だな。」

クゥーは慌てて続ける。

「でもね!ただのおにぎりじゃないよ!
ロクが昨日言ってたやつ!」

「……?」

クゥーは得意げに言う。

「『腹減ったときの米が一番うまい』ってやつ!」

ロクは一瞬だけ止まる。
そして、小さく笑う。

「……言ったな、そんなこと。」

クゥーは皿に三角のおにぎりを置く。
少しだけ形がいびつ。

その横に、湯気の立つ味噌汁。
小皿には、ぽりぽり音がしそうな香の物。

📷 今日のまかない




・おにぎり
・味噌汁
・香の物

ロクがそれを見る。

「……ずいぶん揃えたな。」

クゥーは得意げ。

「おにぎりはね、仲間がいると強いの!」

ロクは一つ持ち上げて重さを確かめる。

「……重いな。」

クゥーは目を輝かせる。

「でしょ!」

ロクが一口かじる。

中から出てきたのは──

からあげ。

沈黙。

クゥーはドヤ顔。

「からあげおにぎり!」

ロクは静かに噛みしめる。

「……米と油か。」

クゥーはうなずく。

「最高の組み合わせ!」

ロクはもう一口食べる。
そして味噌汁を一口。

湯気が少しだけ、顔に当たる。

ロクはぽつりと言う。

「……悪くない。」

クゥーは飛び跳ねる。

「でしょでしょ!」

ロクは香の物をつまむ。

「ただし。」

クゥーが固まる。

ロクは静かに言う。

「腹減ってるとき限定だな。」

クゥーは笑う。

「じゃあ大丈夫!」

ロクが聞く。

「なんでだ。」

クゥーは胸を張る。

「ここ来る人、だいたい腹減ってるもん。」

ロクは少しだけ笑った。

店の外、夕方の風がのれんを揺らす。
湯気の向こうで、味噌の香りがふわっと広がる。

おにぎりは、
まだ少し温かかった。
 

ロクはたまに、こういうことを言う。
料理のことなのか、人生のことなのか、よくわからないやつを。

今日の注意書き

・おにぎりは少しいびつです(握ったのはクゥーです)
・中身はからあげです(ロクはまだ知りません)
・腹が減ってる人限定です(たぶん一番うまい)

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