30皿目 バームクーヘン ― 重ねた時間は、甘い | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。


夕方より、もう少しあと。

木皿に、一切れ。

丸いままは出さない。
切って、はじめて層が見える。


流して、焼く。
また流して、また焼く。
急ぐと、はがれる。


薄い層でも、
ちゃんと残る。



目立たない日も、
重なっている。

甘さは、あとから来る。
噛んで、少ししてから。

クゥーが断面をのぞく。

「何層あるんやろな。」

ロクは湯のみを置く。

「数えんでええ。」

そして、少しだけ続ける。

「無駄な層は、ない。」

黒蜜は、横に置く。
かけるかどうかは、食べる人が決める。

全部かけなくていい。
全部急がなくていい。

丸いのは、
削られたから。

角が取れて、
ここまで来ただけ。

閉店後。

皿に残ったかけら。

崩れても、
層は消えない。

今日も、ひとつ重なった。

湯気はない。

でも、

時間は止まっていない。

ロクが最後に言う。

「ゆっくりで、ちょうどいい。」


そして、もうひとこと。


「甘いのは、あとから来る。」


今日の注意書き

・バームクーヘンは人生と同じです(急ぐと割れます)

・黒蜜は気分でどうぞ(甘さはあとから来ます)

・層は数えないでください(ロクが照れます)

次回 

31皿目 おにぎり

― 1番静かなごちそう。