夕方より、もう少しあと。
木皿に、一切れ。
丸いままは出さない。
切って、はじめて層が見える。
流して、焼く。
また流して、また焼く。
急ぐと、はがれる。
薄い層でも、
ちゃんと残る。
目立たない日も、
重なっている。
甘さは、あとから来る。
噛んで、少ししてから。
クゥーが断面をのぞく。
「何層あるんやろな。」
ロクは湯のみを置く。
「数えんでええ。」
そして、少しだけ続ける。
「無駄な層は、ない。」
黒蜜は、横に置く。
かけるかどうかは、食べる人が決める。
全部かけなくていい。
全部急がなくていい。
丸いのは、
削られたから。
角が取れて、
ここまで来ただけ。
閉店後。
皿に残ったかけら。
崩れても、
層は消えない。
今日も、ひとつ重なった。
湯気はない。
でも、
時間は止まっていない。
ロクが最後に言う。
「ゆっくりで、ちょうどいい。」
そして、もうひとこと。
「甘いのは、あとから来る。」
今日の注意書き
・バームクーヘンは人生と同じです(急ぐと割れます)
・黒蜜は気分でどうぞ(甘さはあとから来ます)
・層は数えないでください(ロクが照れます)
次回
31皿目 おにぎり
― 1番静かなごちそう。
