29皿目 湯豆腐 ― 白は、揺れるだけでいい | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。

夕方より、もう少し遅い時間。


鍋の中で、

こと、こと。


ぐつぐつではない。

跳ねない音。


豆腐は煮ない。

温める。


強くすると、崩れる。


湯は沸かさない。

揺らすだけ。


昆布は朝から沈んでいる。

だしは前に出ない。


「火は当てるな。置け。」


ロクが言う。


湯気は軽い。

黒のあとに、白。


どて煮の余韻を、

ほどく役目。




薬味は増やさない。

ねぎと、少しの生姜。


しょうゆは、落とす。


かけない。


豆腐は、

待てる人の皿。


箸を入れると、

すっと割れる。


崩れない。

ほどける。


閉店後。


鍋の湯を流すと、

今日の音が消える。


でも、


火は消えていない。

ロクが最後に言う。

「ゆっくりで、ちょうどいい。」


今日は注意書き


豆腐は急ぎません(追いかけないでください)

・ぐつぐつは禁止です(豆腐が驚きます)

・しょうゆは落としてください(かけすぎ注意)

・熱いのは白いほうです(見た目に騙されません)

・クレームは湯気と一緒に流します(鍋が聞きます)


次回 30皿目
バームクーヘン
― 重ねた時間は、甘い