夕方の光が、まだ少し低い時間。
白い皿に、白いソース。
その奥に、小さな赤が沈んでいます。
ホワイトソースは焦らない。
牛乳を急がせない。
粉は、静かに混ぜる。
木べらが鍋底をなでる音。
とろみが、ゆっくり重くなる気配。
強火にしない。
とろみは奪うものじゃない。育てるもの。
エビは、火を入れすぎない。
ぷつ、と弾む手前で止める。
「油と対話しろ。」
ロクが小さく言います。
表面にチーズをのせ、
最後は火に任せるだけ。
オーブンの奥で、じゅ、と静かな音。
泡が縁から顔を出し、
白の上に、ゆっくり色がついていきます。
きつね色より、少しだけ深く。
焦げ目は、失敗じゃありません。
火が通った証です。
「火加減は嘘をつかない。」
スプーンを入れると、
中はまだ、静かに熱い。
白の奥から、赤がひとつ顔を出します。
焦げは、逃げるものじゃない。
残るものです。
きゅうりの塩だけ和え。
塩をして、少し置いてから一度だけ絞る。
にんじんのラペ風。
酢は、入れたか迷う量。
主役の温度を、邪魔しない程度に。
余ったホワイトソースとマカロニを見て、
クゥーが言います。
「なあ、これ丸めて揚げたら絶対うまいって。」
止めないのが、ロクの止め方です。
ころりと丸めて、油へ。
成功率七割。
今日は、ぎりぎり成功。
「ほらな。」
ロクは一口だけ食べて、
「主役は崩すな。」
閉店後。
ブロッコリーの茎が少し残りました。
弱火で、ふたをして蒸し焼き。
水は入れない。
クゥーがつまみながら言います。
「なんで茎のほうが甘いんやろな。」
どうでもいい会話は、
火を落としたあとに出てきます。
洗い終えた耐熱皿は、
まだ少し温かいまま。
焦げ目は落ちません。
無理に落とさなくても、
明日また火は入ります。
湯気は、もう出ていません。
でも、
火は消えていません。
――――――――――
・焦げは仕様です(香ばしさは正義)
・エビは探さなくても出てきます(沈んでいます)
・すぐ食べると火傷します(急がないでください)
・白い中が一番熱いです(見た目に騙されません)
・クレームはクゥーが一度炒めます(香ばしくなります)
次回 28皿目 牛すじのどて煮
― 黒は、ゆっくり深くなる
