朝から、雨でした。
揚げるには、少しだけ静かすぎる日です。
油には、火を入れていません。
その代わりに、冷蔵庫を開けました。
「あの日のセレブ、まだおるで。」
クゥーが小さく言います。
ドバイチョコ。
揚げてもなお、セレブだったやつ。
あの日は、割らなかった。
今日は、割ります。
ロクが皿を置きます。
ナイフを入れる前に、少しだけ雨音を聞きました。
「いくで。」
刃が、衣に触れます。
サクッ。
静かな音。
衣の内側に、とろけきらなかったチョコ。
少しだけ温もりを残したピスタチオ。
カダイフは、思ったより素直です。
完璧ではない。
でも、悪くない。
クゥーがのぞき込みます。
「セレブ、ちょっと庶民なっとるな。」
ロクは断面を見つめたまま、
「揚げられたら、みんな一回は裸になる。」
とだけ言いました。
雨は、まだ降っています。
油は、今日は休みです。
あの日、募集したままの油は、
責めることもなく、冷えています。
また火を入れればいい。
今日は、断面だけで十分です。
本日の注意書き
・今日は揚げません(雨やし、油も寝とる)
・セレブも割ったら中身見えるで(キラキラは外側担当)
・断面に夢を見すぎ禁止(現実はわりと正直)
・冷えたチョコは怒ってません(たぶん)
・クレームはクゥーが半分聞いて、半分忘れます(便利な耳)
次回
24皿目 夕方のプリンアラモード
― 黒が、真ん中に近づく夕方に
