23皿目】雨の日に、セレブを割る | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。


朝から、雨でした。

揚げるには、少しだけ静かすぎる日です。

油には、火を入れていません。

その代わりに、冷蔵庫を開けました。

「あの日のセレブ、まだおるで。」

クゥーが小さく言います。

ドバイチョコ。

揚げてもなお、セレブだったやつ。

あの日は、割らなかった。

今日は、割ります。

ロクが皿を置きます。

ナイフを入れる前に、少しだけ雨音を聞きました。

「いくで。」

刃が、衣に触れます。

サクッ。

静かな音。




衣の内側に、とろけきらなかったチョコ。

少しだけ温もりを残したピスタチオ。

カダイフは、思ったより素直です。

完璧ではない。

でも、悪くない。

クゥーがのぞき込みます。

「セレブ、ちょっと庶民なっとるな。」

ロクは断面を見つめたまま、

「揚げられたら、みんな一回は裸になる。」

とだけ言いました。

雨は、まだ降っています。

油は、今日は休みです。

あの日、募集したままの油は、

責めることもなく、冷えています。

また火を入れればいい。

今日は、断面だけで十分です。

本日の注意書き

・今日は揚げません(雨やし、油も寝とる)
・セレブも割ったら中身見えるで(キラキラは外側担当)
・断面に夢を見すぎ禁止(現実はわりと正直)
・冷えたチョコは怒ってません(たぶん)
・クレームはクゥーが半分聞いて、半分忘れます(便利な耳)
次回
24皿目 夕方のプリンアラモード
  ― 黒が、真ん中に近づく夕方に