22皿目 焼ナポリタン前夜 | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。


― 鉄板の上で、少しだけ迷う ―


材料はこちら






パスタ。

ケチャップ。

玉ねぎ。

ベーコン。


特別なものは、なにもない。


今日の昼も、焼きパスタ。

太さだけ、少し変えてみる。



ジュワッ……





押して、待つ。


ロク

「油と対話しろ」


同じ火加減。

同じ時間。


それでも、音が少しだけ軽い。


鉄板の縁で、油が小さくはねる。


焼きパスタ定食風






味噌汁を添えると、

ちゃんと昼になる。


湯気が立つうちに、試食会。



年配のおねえさま

「これぐらいがちょうどええかも」


若い子

「焼きそばみたいで美味しいです♪

でも、もうちょっとしこしこでもいいかも」


ロク

「……ほう」


若い子

「ケチャップ味もいいですね♪」


ロク

「それは、まあ……」


少し、間。


ロク

「火加減は嘘をつかない。」


奥の席で、

息子が黙ってフォークを回している。

まだ、うまく巻けていない。


夕方の光が、

鉄板をやわらかくなぞる。


湯気が、ゆれる。


ロク

「ゆっくりで、ちょうどいい。」


店の外が、

少しだけ暗くなる。


ケチャップの赤が、

昼よりも深く見えた。


今日の注意書き


・営業日はだいたい気分と夕焼け次第です(暗くなってたら閉めてます)

・焼き色には個体差があります(それも含めて前夜です)

・ナポリタンかどうかは聞かないでください(まだ少し迷っています)

次回


23皿目|雨の日に、セレブを割る

― 冷えたままの油のこと ―