― 鉄板の上で、少しだけ迷う ―
材料はこちら
パスタ。
ケチャップ。
玉ねぎ。
ベーコン。
特別なものは、なにもない。
今日の昼も、焼きパスタ。
太さだけ、少し変えてみる。
ジュワッ……
押して、待つ。
ロク
「油と対話しろ」
同じ火加減。
同じ時間。
それでも、音が少しだけ軽い。
鉄板の縁で、油が小さくはねる。
焼きパスタ定食風
味噌汁を添えると、
ちゃんと昼になる。
湯気が立つうちに、試食会。
年配のおねえさま
「これぐらいがちょうどええかも」
若い子
「焼きそばみたいで美味しいです♪
でも、もうちょっとしこしこでもいいかも」
ロク
「……ほう」
若い子
「ケチャップ味もいいですね♪」
ロク
「それは、まあ……」
少し、間。
ロク
「火加減は嘘をつかない。」
奥の席で、
息子が黙ってフォークを回している。
まだ、うまく巻けていない。
夕方の光が、
鉄板をやわらかくなぞる。
湯気が、ゆれる。
ロク
「ゆっくりで、ちょうどいい。」
店の外が、
少しだけ暗くなる。
ケチャップの赤が、
昼よりも深く見えた。
今日の注意書き
・営業日はだいたい気分と夕焼け次第です(暗くなってたら閉めてます)
・焼き色には個体差があります(それも含めて前夜です)
・ナポリタンかどうかは聞かないでください(まだ少し迷っています)
次回
23皿目|雨の日に、セレブを割る
― 冷えたままの油のこと ―


