13皿目『ロクのレシピノート』― 再現性は偶然じゃない。」 | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。

   

ロクのレシピノート』

ページの端が、少しだけ丸まっている。
使っているノートは、だいたい角から傷む。

ロクは静かにレシピノートをめくっていた。

くぅーが横からのぞき込む。

「それ、例のやつ?」

ロクはページの下半分を指で押さえた。

「設計図は見せない」
「けち」
「再現性は秘密でできてる」

そう言って、上半分だけを見せる。

今日は、その参考ページの話だ。


ロクが参考にしたノートページ。

貼られているのは、
作州黒豆ロールケーキの設計メモ。

分量より先に、方向が書いてある。
手順より先に、考え方がある。

味の軸。
軽さの理由。
豆の扱い。

数字はあとから乗せるものらしい。




ノートの余白メモ。

・軽さは正義
・甘さは輪郭を作る
・豆は主役だが暴れる
・止めると割れる
・足しすぎない

くぅーが言う。

「これ、分量も書いてあるだろ」

ロクはページを閉じた。

「そこは後日だ」


■ 設計の考え方(ロク流)

このロールケーキは、
“うまく作る”より先に
“壊れない設計” が優先されている。

家庭での失敗は、だいたい同じになる。

・巻きで割れる
・甘くなりすぎる
・豆が沈む
・断面が崩れる

だからノートは先にこう書く。

形を作れ。味はあとから乗る。


完成イメージ。





■ ノートからの教え

味を足すな。
味を並べろ。

盛るな。
設計しろ。

偶然に頼るな。
再現させろ。

ページの最後に、赤で丸がついている。

再現性は偶然じゃない。


ロクはノートを閉じた。

くぅーはまだ納得していない顔をしている。

「で、結局、分量は?」

ロクは答えない。

次のページに指をかけただけだった。

そこには、まだ火を入れていない名前が書いてあった。

14皿目 歌舞伎揚げの日  サクサクで、日常に小さな驚きを。