第3話 蓮根の落とし揚げ | 頑張れ!! オンボロ食堂奮闘記!! 〜今日もゆるっと営業中〜

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町はずれの少し傾いたオンボロ食堂。料理にうるさい無口オーナー・ロクと、失敗多めで元気なコック・クゥーが、ほっとする料理とゆるい日常を出しています。たぶん営業中、ふらっとどうぞ。

今日の看板は、蓮根の落とし揚げだ。

丸く、穴が空いて、油で光る。

「揚げ物って…主役になれるんですか?」

クゥーは鍋を覗く。


ロクは無言で鍋を揺らす。

穴から光が透けた。


「穴を生かせば、揚げ物も主役になる」

その一言だけで、クゥーは考え込む。

主役って…揚げ物でも?

穴で決まるのか、光で決まるのか、油で決まるのか。


クゥーは小さくうなずく。


仕込み中、薄切り蓮根を酢水に漬ける。


クゥー、その厚み…意図は?」

「シャキシャキを残したいんです」


軽く茹でて、ポン酢とゴマで和えるだけ。

少し砂糖を足すと、子どもでも食べやすい。

家庭でもできる簡単簡単小鉢の完成。


買い出しでは、小さな事件。

スーパーで蓮根がラスト1本。

後ろの主婦と目が合った。

戦闘は回避。蓮根、確保。


余った端の蓮根で、小さな味噌和えを作る。

刻んで味噌と混ぜるだけ。名前はまだない。


「新メニューです」

「言い張るな」

揚げるときに、ひとつだけ焦げた。

奇跡的に、味は香ばしく、当たり。

常連が一口食べて、目を丸くした。

「これ、何?」

「…余り物です」

「余り物でこの味か」


無茶ぶりも、意外と笑いに変わる。


揚げ物は火加減が命。

焦がさない、油を飛ばさない。

ちょっとした手加減で、天国にも地獄にもなる。


クゥーは今日も、だいたい成功した。

ロクは無愛想に食べた。

たまに奇跡、たまに焦げ。

それでいい。


暖簾が出る。

揚げ物も、揚げ物以上になる。


今日も、営業中。