2皿目 「少しだけ硬かった日 ― 銀シャリ」 | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。


少しだけ、硬かった。


看板は白飯だ。

地味だが、逃げ場がない。

「主役ですか」

「逃げるな」

ロクが炊飯器を開ける前から言う。

米は正直だ。

水と時間と扱い方が、そのまま出る。

「早炊きでいきます」

「却下」

ボタンを押す指を止められた。

「便利は最後に使え」

「最初じゃないんですか」

「最初に使うと、それしかできなくなる」

よく分からないが、戻した。

研ぎは三回。

混ぜすぎない。

白くしすぎない。

「SNSだと透明になるまでやってました」

「それは映像用だ」

包丁より切れ味のあるツッコミだった。

炊き上がりまで四十分。

買い出しのレシートを整理する。

先月より、遥かに全部高い。

「米、また上がりますかね」

「もう上がってる」

「心が追いつきません」

「先に働け」

炊き上がり。

ふたを開ける。

湯気が立つ。

甘い匂いが、少しだけ先に来る。

「すぐ混ぜるな」

「え」

「三十秒待て。蒸気を落ち着かせる」

ちょっとだけ役に立つコツだった。

底から返す。

切るようにほぐす。

押さない。

撫でない。

信じる。

だいたい成功した。

余った端のご飯で、まかないを作る。

卵と醤油とバター。

名前はまだない。

「新メニューです」

「言い張るな」

ロクは無愛想に食べる。

二口目が早い。

これは、たぶん当たりだ。

常連が顔を出す。

「白飯だけってできる?」

「できます」

「最高のおかずで」

無茶ぶりだった。

塩を出した。

真顔でうなずかれた。

今日の甘味はなし。

それでも、腹は減る。

暖簾が出る。

白い粒が、静かに光を返している。

主役かどうかは、誰も決めていない。

ただ、減っていくだけだ。

今日も、営業中。

【本日の注意書き】
・話はだいたい本当、たまに玉子くらい静かに盛る
・焼きすぎると、だしが少しだけ拗ねます
・午後はだいたい、理由もなく静かです

次回