1皿目 少し遅れた一杯 ― ラーメン | 頑張れオンボロ食堂奮闘記 ― ロクとクゥーのまかない哲学 ―

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町はずれの少し古びたレトロカフェ食堂。木の温もりと柔らかい光に包まれ、落ち着いた大人向けの空間です。読書やひとり時間も楽しめ、厨房ではゆるい日常が流れています。


今日は、少しだけ遅れている。


暖簾をくぐると、ロクが鍋の火を少しだけ弱めた。


「お、来ましたね」


そう言ったきり、こちらを振り返らない。


鍋の中の湯気を見ている方が、ロクにとっては大事らしい。


朝一番の仕事は、火をつけることだ。


寸胴の中で、今日のスープがゆっくり目を覚ます。


 来る途中で、腹減ってたやつもいるだろ。



ロクが鍋を見たまま言った。


「味見します!」


「まだ早い」


ひと口すすって、少しむせた。


覚えたはずなんですけどね。


ネギは山盛り。厚みは自由。


ロクは何も言わず、半分だけよけた。


吊るしたチャーシューが、ゆっくり回っている。


見ているだけで、少しだけ気持ちが落ち着くんですよね。


カウンターの端では、クゥーが何かを混ぜている。


今日何を作っているのか、本人も半分くらい分かっていない顔をしている。


まあ、いつものことだ。


暖簾が揺れる。


最初の一杯が、静かに出ていく。


ここに来ると、だいたい何かが煮えている。


そしてだいたい、クゥーが少しだけ失敗している。


それくらいが、ちょうどいい。


今日も、営業中。



【本日の注意書き】

・営業日はだいたい気分です(開いてたらラッキー)

・味見はタイミング命です(早いと怒られます)

・ネギは自由ですが、ロクが少しだけ戻します


――次回

2皿目:「少しだけ硬かった日 ― 銀シャリ」