第0話 :暖簾のむこう側古い暖簾は、今日も少しだけ曲がっている。直しても曲がる。なぜか曲がる。もう誰も気にしていない。店の奥では鍋がことこと鳴っている。手前では椅子がひとつ、またひとつと埋まる。皿が置かれる。言葉は少ない。湯気だけが先に届く。うまくいく日もある。同じだけ、うまくいかない日もある。それでも火は落とさない。大きな店じゃない。立派な厨房でもない。それでも今日も扉は開く。本日も、営業中。