角田光代の『愛がなんだ』 2006
この小説を原作として、映画は2021年に制作された。
監督:今泉力哉
脚本:澤井香織 今泉力哉
出演:岸井ゆきの 成田凌 深川麻衣 若葉竜也 江口のり子
まず映画を観てみる。
会社員の山田テルコ(岸井ゆきの)とマモちゃん(田中守 成田凌)は恋人未満の関係。
マモちゃんから「熱があってコンビニも行けない」と電話があると、テルコはすぐ駆けつけて夕食を作り、お風呂掃除まで始める。
マモちゃんはありがとうと言いながら、そんなテルコを追い出すように帰らせてしまう。
終電はなく所持金もわずかなテルコは徒歩で帰宅と決めるが、途中で友人葉子(深川麻衣)の家に転がり込む。
葉子は「そんなおれ様男、やめときな。もっと自分が優位に立てる恋をしなよ」と忠告するが、テルコには響かない。
その後もマモちゃんからの電話を待ってダラダラと会社に残るテルコ。
あてが外れて家へ帰りシャンプー中でも、マモちゃんからの電話があれば残業中だと嘘をついてすぐ駆けつける。
その晩、二人で遅くまで飲んで終電を逃し、マモちゃんのアパートで初めてベッドイン。
翌朝は会社をサボって、二人で動物園へ……。
二人の仲は少しずつ進展しているようだが、テルコだけがぞっこんで、マモちゃんはテルコを利用しているだけに見える。
30分ほど映画を観て、小説を開いた。
角田光代『愛がなんだ』 2006 角川文庫
テルコの一人称だが、ほぼ映画の通りの展開・セリフなので、、岸井ゆきのと成田凌のイメージで読んでいける。
ただ小説ではベッドインは既に過去の話で、そういう関係なのに、テルコを「都合のいい女」にしているマモちゃんの不誠実さがよけい際立つ。
読み進むと、それはどんどんエスカレートしていく。
3か月も音信不通にしておきながら、何ごともなかったかのように連絡してきて、テルコがいそいそ出かけると、別の女(すみれさん)が同席していたりする。
読んでいると、マモちゃんのいい加減さに腹が立ってしかたがない。
かといって、テルコにも同情できない。
仕事ぶりがいい加減で会社をクビになっても、マモちゃんに呼ばれたらいつでも行ける方がいいと、正社員での再就職もやめてしまう。
なんでこんな男に執着するのかと、テルコにはほとほと呆れる。
その感想は、読み終えても変わらなかった。
イマドキの恋愛を描こうとしているのか。
テルコに共感し、何かしら癒される読者がいるのだろうか。
そんなことを思いながら、残りの映画を観た。
映画のイメージを借りて読んでいたので、映画の続きに自然と入っていける。
マモちゃんが連れてきた女 “すみれさん”が江口のり子なのは驚いたが、小説のセリフをそのまましゃべっているのを見ると、いかにも適役と思えてくる。
しかし小説が正直あまりおもしろくなかったので、映画がまだ1時間以上ある……と、少々うんざりしかけた。
だが、せっかく書きかけたブログを完成させたい(笑)。その一心で、映画を観続けた。
すると……
原作ではテルコとマモちゃんの関係だけで堂々巡りしている感じがしたが、映画ではほんの少しのアレンジで、すみれさん、葉子、葉子のお便利男ナカハラくん(若葉竜也)の存在感が増し、二人の関係にも奥行きが出ている。
すると、小説で読んだはずの同じストーリー展開でも、より心を動かされる感じがあった。
この作品は、読んでから観てよかった。
イマドキの若い人にはきっと、恋愛あるあるとして観ることのできる映画になっているのではないか、と思う。
あくまでも想像だが。



