立憲民主党が、今夏(2022年)に行われる参院選の公約の土台づくりのために井手英策・慶大教授が加わる・・・と報道がありました。

 

 井手栄策氏の主張は、その著「リベラルは死なない」からうかがい知ることができます。

 

主な要点を箇条書きにしてみました。

 

1.ベーシックサービスは格差是正のためにも必要な政策です

①社会保障制度ととしてベーシツクサービスを提唱。(P46)

「ベーシックサービス」とは、医療、介護、教育、障碍者福祉について所得制限なしに全国民に給付する。

 

②財源は約19兆円(2.8兆円×7%)。それは、格差是正の累進制強化を図るとともに、所得税とか法人税では十分でないので消費税を7%強あげて、これを軸として財源を確保する。(P42)(P46)

 

③消費税は、公平な税率で負担するので、底辺層の人達も後ろめたさを感じることなく給付を受け取ることができる。消費税は社会保障財源として相応しい税である。(本書の全体的な基調からその意図が伝わってきます)

 

 

  ベーシックサービスを批判する人は誰もいないと思いますが、問題は主な財源を消費増税に求めようとしているところです。しかも、その国債について根本的に勘違いしていますので提案の内容の信頼性が失われます。

 

 

 

2.国債の購入資金は日銀が供給した日銀当座預金です

国民の預金は一切使われてはいません。

 井手氏は、財源は税か国債しかないが「税も国債も国民からのお金が使われる」(P48)・・・つまり、国債も国民が銀行に預けたお金で買われていると言うのです。

 

 これは、完全に間違っています。・・国債購入の資金は日本銀行が信用創造によって日銀当座預金にお金を供給し、それが元手になって(民間金融機関が仲介するかたちで)国債が買われ、その代金が政府に渡っているのです。

 

 このような仕組みが次第に知れ渡るようになったのに、いつまでたっても多くの学者(御用学者、リベラル学者)や政治家、評論家、そして財務省関係者までもが、勘違いのままの財政論に固執し続けるようでは、決して国民生活を守ることにはなりません。

 

 古くからの貨幣論を金科玉条のごとく信じ切っているのかも知れません。現代の貨幣論はこのようになっています→「信用創造について」をご覧ください。

 

この解説動画も参考になります→信用創造について

 

 

 いずれにしても、日本銀行は政府の子会社です(資本金の55%を政府が出資)。その子会社が親会社である政府のために資金を創りだすために新たにお金を産み出しているのです。・・・よって、(事実上は)誰かからのお金を借りている訳ではないのです。

 

 

※実は・・・民主党政権時の経済ブレーンだった水野和夫氏も、国債購入の財源を国民預金と考えていました(「資本主義の終焉と歴史の危機」より)。

2017年頃になると国民預金が減ってしまい国債購入が困難になるので、それまでに財政健全化を図るべきと述べています。そして、消費税を20%近くまで引き上げるように提起しています。

 

 その影響があったのかどうか分かりませんが、当時の菅直人首相と野田首相は、日本をギリシャやイタリアと同一視して消費増税10%への地ならしを行いました。・・・そもそもギリシャもイタリアもEU参加国で自ら通貨ユーロを自国で発行できない国なのです。それに対して、わが国は自国通貨を発行できますので財政破綻危機など微塵もなかったのです。

 

 さらに言えば、当時から国債についての正しい認識があったら、民主党が選挙で公約した諸施策は全て実現できたのです。事業仕分け等のパフォーマンスは不要だったのです。・・・そのような総括なしに、再び同じような勘違いにによる過ちを繰り返そうとするならば、立憲民主党の未来はありません・

 

 

※参考

 水野和夫氏は、ゼロ成長の日本こそが資本主義のなかでアドバンテージになっていると言い、井手栄策氏は「日本は成長に依存しない国」(脱成長)を主張しています。小川淳也議員も同じように脱成長を目指す旨をテレビ出演で述べ参加者を驚かせた、とネットで炎上しました。・・・これは最近になり脱成長論を主張している斎藤幸平氏の脱成長論と軌を一にしています。

 リベラルと称せられる人達にとっては、脱成長が魅力的なものになっているようです。ちなみに、米国の民主夜会主義者であるサンダース等は、グリーンニューディールを提唱し成長路線を求めています。、

これも参考にして下さい→「ゼロ成長、脱成長論」派  対 「成長論」派

 

 

 

3.国債の元本償還や利払いは国民が負担する必要はありません

 井手氏は、国債は利払いが費が発生し、国民がそれを負担して銀行を儲けさせているのはおかしい、と主張しています(P49)。

 

 実際のところ、国債の元本償還(我が国のみの60年ルールがある)や利払いは、新たな国債(借換債も含む)発行で賄われていますが、この原資も日銀当座預金が充当されています。国民が負担する必要がありません。

 

 日銀は通貨発行権がありますので、資金が枯渇することもありませんし買い手がいなくなることもありません。民間銀行にとっては、国債は定期預金のようなものだからです。

 

 もう少し詳しく述べさせてもらうと・・・国家財政は家計と違って、もともと元本の返済など不要なのです。諸外国では利払いだけで元本返済などしていません。→「国債償還はこのように行われている」を参照して下さい。

 

 井手氏の主張のように、国民が負担して国債償還していくと、国民の資産は消滅していきます。・・・政府が赤字の時は、国民は黒字でいられますが、政府が黒字を目指そうとすると国民は赤字になっていきます。

 

 1000兆円の政府債務残高と言われますが、国民資産(預貯金)を1000兆円増やしてきた記録に過ぎませんので、政府が赤字になっていくことは悪いことではありません。

政府が国民生活を守ろうとすれば正常なものです。

 

 変動相場制を採用し、「自国通貨建て国債の発行できる国にあっては、財政破綻することはない」、と財務省もHPで述べています。また、「我が国にあってはハイパーインフレになる可能性はゼロに等しい」とも言っています。

 

ちなみに、2020年度は10万円一律給付が新規国債発行で賄われましたが、国民全員の資産を増やしました。この年度はコロナ対策として約100兆円の国債が発行されましたが、マネーストックも100兆円近くが増えていることを日銀統計で確認できます。

 

 前述の「信用創造について」を今一度ご確認ください。政府債務を返済しようとすると、この世の中からお金が消えてしまうのです。

 

 

 勘違いして、財政を黒字にしようとした政権が過去にはあります。そのあとには、景気が後退して経済恐慌に見舞われてきました。歴史から学ぶべきです。

 

 

 わが国でも、財政が破綻状態であるとの勘違いのもと、1997年から消費増税と緊縮財政政策がとられるようになりました。・・・結果は、世界の先進国のなかで唯一成長できない国になってしまいました。→「失われた25年」1997年の衝撃

 

 

 

 

4.消費税は、賃金引下げや非正規雇用を増やす悪税です

 国債についての勘違いに基づき、(民主党政権時もそうでしたが)消費増税の方が井手氏も望ましいものとして選択しようとしています。

 

 消費税が上がれば、国民の生活はますます圧迫されます。ましてや、現在のようなデフレ期においては経済もゼロ成長どころかマイナス成長になってしまいます。

 

 それよりもなにより、消費税そのものが内包する問題点をまず認識する必要があります。

単純に、価格に10%を上乗せ負担しているだけではありません。・・・消費税は、賃金の引下げ、非正規労働者を増加させるインセンティブにもなっています。

消費税の真実をご覧ください。

 

 

 

5.立憲民主党の公約作りは、実際に行われている国債発行と消化の仕組みを確認した上で検討するように要望したい。

 井手氏の財政論は・・・国民から消費税を17兆円徴収して、それを国民にベーシックサービスとして還元する、という案になります。つまり、約19兆円分は「行って来い」の関係で、お金の流通量からみれば、マイナス(徴税)7→プラス(社会保障で還元)で差し引きゼロで変わりません。

 

 むろん、社会保障の充実でメリットもあるかと思いますが、一方で消費増税で国民生活や経済面でのデメリットも大きなものになることが予想されます。ましてや、井手氏は、これからの日本は成長に依存しない国造りを提案していますので、国民生活は厳しくなっていくことが予想されます。

 

 

 一方で、国債を財源としたベーシックサービスをした場合はどうなるでしょうか?

国債は国民預金が使われることはなく、日銀の通貨発行によって産まれたお金で買われていました。それが政府に渡り国民に還元されることになります。

国債発行されると同額が国民資産を産んでいました→国債発行で同額の国民資を産んでいる

 

 ここでのベーシックサービスの場合は、約19兆円が国民の資産として増えていくことになります。上述のように井手案ではゼロでしたので、どちらが国民によってプラスになるかは明らかです。

 

 また、国債の返済に国民の負担は必要ありませんでした。ただし、日銀当座預金を利用しているとはいえ、民間金融機関には利払い分が利益として入ります。・・・しかし、これも国民負担は必要ありませんでした。

 

 どうしても民間金融機関に利払いをしたくないというならば、日銀に直受けさせるような制度゛にすればよいではないでしょうか?・・・例えば、社会保障費のみは日銀の直受けを認めるとかの改善策を国会で容認すれば良いのです。立憲民主党がそれを提起すれば済むことです。(私は、民間金融機関への利払いがあっても良いかと思いっていますが)

 

 いずれにして、井手氏の国債についての勘違いが是正される中で、本当に消費増税がそんなにメリットがあるのか? 再検討してほしいものだと願っている次第です。

 

下記の頁もご覧ください→「国債の認識は180度の勘違いだった

 

こちらもどうぞ→井手栄策 VS 池戸万作

 

 

最後に・・・・

リベラル派の人達から北欧並みの高負担高福祉を求める意見があります。

それに対する批判的意見(cargo氏)→北欧型高福祉・高負担論への批判