2022年1月実施の大学入学共通テストで、教科書の内容とは異なる出題があるとの指摘がネットであり一時話題になりました。・・・それが教科書の内容が正しく、出題内容が不備であったならば、一時的な出題ミスということでコトは済みますが、それが逆で出題内容が正しくて教科書が間違った内容だったというので重大です。

 

 そこで、教科書はどのようになつているのか調べてみました。

尚、高校教科書は文科省による検定を受けていますので、他の教科書も同じような記述になっているとお考え下さい。

 

問題になったのは、次の二点です。

 

1..信用創造について

下記の記述は「政治経済」にあるものです。「現代社会」にもほぼ同じものがあります。

これは、共通テスト(現代社会)にも同じような内容で出題されていました。→大学共通テストについて

 

 

 このように、最初の100億円が、預金と貸出を複数の銀行において繰り返されることで、実体経済のなかにお金を増やしていくことができるというのが、ここで言うところの信用創造になります。

 

しかし、この通俗的な信用創造論には・・・・いくつかの問題点があり、信用創造とは言えないと専門家から指摘されています。その主な点は以下の通りです。

 

「預金又貸し論」の問題点

 

①最初にA銀行に持ち込まれた100億円はどこからきたのか?・・・誰がどうやってこのお金を創造したのかの説明がない。

 

②、①の100億円が別のD銀行から引き落とされてA銀行に入金されたもののとすると、全ての銀行の残高合計は増えないことになる。

 

③このような繰り返しが行われていくと、最終的には現金は全て準備金として日銀に預けられてしまうことになり、誰かが通帳から現金を引き出そうとしても引き出すお金が無くこの連鎖は崩壊してしまう。・・・誰も現金を引き下ろすことが許されない預金制度と言うことになってしまう。

 

つまり、この預金又貸し論は信用創造とは言えないとされています。

 

また、ウィキペディアにも又貸し説は信用創造とは言えないとあります。

信用創造について

 

今日的には、このウィキペディアの信用創造の説明が正しいものとの評価が一般的になっていることから、共通テストにおいては「政治経済」の出題内容が妥当なもの(「現代社会」の出題内容は又貸し説で不適切だった)と言うことになります。

 

当然のことながら教科書の記述内容の「預金又貸し説」は信用創造とは言えず是正されなくてはいけません。

 

 

 

2.公開市場操作(買いオペ)について

買いオペの出題もありました。→共通テストの問題の(2)の買いオペ問題をご確認ください。

 

教科書の記述は下記のようになっています。左側の図が「買いオペ」の説明ですが、日銀が国債を買うことで資金が実体経済に回るような説明になっています。

 

 教科書の内容を学習した受験生は、共通テスト「政治経済」の問題の正答を導くことができません。なぜならば、この教科書の記述が間違っているからです。(出題内容は正しい)

 

 このような勘違いがどうして起こっているかと言えば、国債購入は国民預金で賄われているとの思い込みがあるからです。実体経済の中の預金で国債を買うので、日銀が買いオペするとお金が実体経済に回ると考えてしまうのです。(多くの有識者も含めて、国債の売買は日銀当座預金で行われていると言う認識がないのです)

国債を国民預金で買っていると勘違いしている著名人

 

それではどうしてそんなに多くの人達が勘違いしているのかという新たな疑問が出てきます。・・・自民党の西田議員が説明してくれています→財政投融資のケースと同一視

→どうも、郵便貯金や年金積立金を原資として融資していた時代(2000年ころまで行われていた)の財政投融資制度と同じような仕組みで国債発行・購入が行われていると思い込んでしまっているのではないか、と。

 

 

3.その他 教科書のおかしな表記

「現代社会」にこんな記述があります。

「・・・多額の国債発行は、やがて国の国際的な信用力失わせ、長期金利を上昇させるリスクが高まるため、政府は基礎的財政収支の黒字化を目標に掲げた、巨額の財政赤字の削減には、歳出の根本的見直しが必要である。・・・」

 

①債務残高/GDP比について

記述にある「国際的な信用力を失わせ・・・」とは、同じ頁にあるこのグラフのことかと思われます。

債務残高/GDPのグラフ

 

 しかし、現在の国際的な潮流は、下の表のようになっています。

(作成者はcargo氏)

 

 

ECB総裁(欧州中央銀行)、 FRB議長(米国中央銀行)、 IMF専務理事(国際通貨基金)、イエレン(米国財務長官)等は、金利が成長率以下であれば財政支出が可能であるとしています。・・・債務残高/GDP比から財政支出を考えるのは誤りだということです。   

 

また、このようなグラフもあります。

利払い費/GDP比で国債支出を考えようという意見です。

 

左が債務残高/GDP比、右は利払い費/GDP比

日本が先進国の中で最も財政支出が可能ということになっています。


 

②国債発行で金利が上がる?

また、教科書記述にある「国債発行されると金利が上がる」とのことですが、国債発行と同額の預金が実体経済に産まれていますので、実際は逆で金利が下がっています。

 

 

③国債は将来世代のツケ?

 財政に係る教科書記述の全体の基調は、国債は将来的に国民が負担する(将来世代へのツケ)と言うことになっていますが、そもそも国債は国民の借金ではありませんので国民が負担する必要はありません。

 

 国債の元本償還や利払いは、新たな国債(借換債)によって賄われ、その資金は新規国債と同じように日銀が供給した日銀当座預金で賄われています。諸外国では、国債の元本償還はしていませんが、我が国では60年ルールによって償還しています。

 

 自国通貨を発行できる国の財政と言うものは、家計や地方自治体の債務とは全く異なるものなのです。こちらをご覧ください→国債償還はこのように行われている

 

 

以上です。

 

 

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