最近になって、ゼロ成長、脱成長を主張する人達が現れてきました。その顔ぶれをみますと殆どが野党系に近いリベラル派と称される人達です。与党系の政治家や経済学者に、そのように主張する人は見当たりません。 

 

 さらに詳しくみると、野党の中でも立憲民主党議員であったり、その周辺にいる経済学者に限られることが分かります。仲間内で、そのような学習会でも開催しているのでしょうか?

 

 まずは、以下をご覧頂く前に、我が国はすでに世界でも例のないゼロ成長を25年超も経験してしまっています。さらにゼロ成長・脱成長を続けさせて、どのような国にしようとしているのでしょうか?→「失われた25年」1997年の衝撃

 

 

ゼロ成長、脱成長を提唱している人達を具体的に上げますと、立憲民主党の小川淳也政調会長(年末のテレビ番組でゼロ成長を主張)、小川氏の師匠と言われている井手栄策氏(国会の参考人質疑で、日本は成長できない国、成長に依存しない国を作るべき、民主党政権時の経済顧問だった水野和夫氏(ゼロ成長の日本こそが資本主義の中でのアドバンテージになっている)、浜矩子氏(日本のような経済大国が、さらにGDPを大きくする必要があるのか)等・・・が挙げられます。

 

 

問題は、このゼロ成長、脱成長論者は共通した勘違いのもと財政論を語っていることです。

 

 

1.ゼロ成長・脱成長論者に共通している勘違い財源論

(1)国債を国民預金で買っている、としている

 彼らは、国債を購入するのに国民預金が使われると考えています。

水野氏はいずれ預金が減ってしまって国債を買えなくなる(2017年)。それまでに財政再建(消費増20%と均衡財政)を行うべきとしています。

 

 井手氏も国債購入に国民預金が使われ、かつ利払い等を国民が負担することになるので、財源は消費税を7%(最近は6%を主張)にあげて社会保障に充当すべきだとしています。

立憲民主党は民主党政権時の二の舞になるか?

 

  浜矩子氏も「企業が内部留保という形でカネを貯め込んでいて、それが金融機関介して国債を買うことに使われるというのは、実に奇異な構造です。・・・国家を支えるのに国民が資金を提供する格好になっている」(アホノミクス 33頁)と述べています。

 

 小川氏からは、国債購入の原資について言及はありませんが、上述した人達と同じような認識と思われます。

 

 

【彼らの勘違い】

 みんな間違っていますね。

国債購入資金は国民の金融資産は一切使用されていません。国債購入資金として日本銀行が日銀当座預金にお金を供給していたのです(日銀の信用創造)。

 それを民間金融機関が仲介する形で国債を買い、お金を政府に渡して、政府が実体経済にお金を回しているのです。

これを理解するのに、「貨幣が新たに生まれる方法」をご覧ください→信用創造について

 

 なぜ、このような勘違いをしているかと言うと・・・戦後の公共投資資の原資として財政投融資が使われてきましたが、それには郵便貯金や年金積立金が投入されていました。これは、2001年頃から無駄遣いが多いとして批判を浴び、国債に比重がおかけるようになった経緯があります。・・・その時の郵便貯金と同じような扱いで、国債購入資金に国民預金が使われると思い込みが生まれたのではないかと言われています。

 

 ちなみに、財政投融資は一般予算の50%近くになり、第二の予算と呼ばれていました。国債がその代わりを果たすようになっていることから、現在の予算に占める国債費の規模からしてそんなに並外れたものとは言えないように思われますが、どうでしょうか。

 

ちなみに、2001年に郵貯等の資金提供がストップしたことから、日本銀行が国債購入資金を供給する仕組みを整えたのが2002年になっています。

国債を国民預金で買っているはホントかウソか (この12分以降にあります)

 

 

 

(2)国債償還や利払いを国民が負担する、と考えている

 また、国債の元本償還や、利払い為においても、借換債や国債が発行されますが、この購入資金も日銀当座預金が使われています。

 

 

 

具体的に言いますと、上記の歳入グラフに国債費として32.5兆円が計上されています。これらは、前述の国債購入の際に触れたように、日銀当座預金で買われています。そして、その中から満期が来た国債の元本償還や利払い費として充当されています。

 

国民が、税金で負担しているわけでもなく、その必要もありません。

国債償還はこのように行われているを参照してください。

 

 

 

2.消費税で社会保障を賄うことを主張

①消費税に財源を求める

 水野氏は消費税20%、井手氏は15%を提案しています。小川氏は後述するように毎年1%づつのアップを提案しています。

立憲民主党は民主党政権時の二の舞になるのか?

 

 しかし、消費税には下グラフのように強い逆進性がありますが、彼らは法人税や所得税をあげても景気に左右され不安定であるが、消費税は安定して多くの税収額を期待できるととしています。

 

下は逆進性を示すグラフです。(グラフは池戸万作氏作成)

 

 

 

 尚、我が国の消費増税についてはノーベル経済学書を受賞した学者からも否定的な見解が寄せらけています。

 

 

②小川淳也政調会長の消費増税案

 小川議員は「ポスト・アベノミクス時代に向けて、デフレ対策、インフレ対策として消費税を議論すべき」としています。(リベラルは死なない 250頁)

 

 小川氏の特異のところは次の認識です。・・・「過去20年間のなかで2回物価が上がった時がある」として、消費税を上げた時点のことに注目するのです。

下のグラフの消費増税に2回にわたってインフレ率が上がっていることをご確認ください。

 

 

 消費税が上がれば、販売価格が物価に上乗せられますので当然のことですが、小川氏はその点を評価するのです。

・・・こうも言っています。「これほどダイレクトかつ安定的に、モノやサービスの値段を引き上げる施策は他に見当たらない。最も人為的、直接的で、安定かつ確実な方法だ」(リベラルは死なない 249頁)

 

 つまり、小川氏はアベノミクスによる金融緩和政策では物価上昇はなかったので、これからは消費増税で物価上昇を図ろうと言うのです。

 

その方法として、「毎年(又は隔年)、、例えば1%ずつ、長期的に消費税を引き上げていくわけだ。この際、消費税の名称変更も議論されるべきでだろう。例えば、価格政策税デフレ対策税など・・・。大事なことは消費税(価格税)を単年度に引き上げるのではなく、長期にわたって少しづつ引き上げることについて、国民の理解を得ることだ。」(250頁)

 

 一般的には、需要を拡大して経済成長を図っていけば、おのずとインフリ率がついてくるものですが、小川氏はそのような施策を考えないで消費税をあげることでデフレ状態を克服していくものだと考えているのですね。

 

 仮にこのような経済理論があるにしても、我が国の消費税は、賃下げや、非正規労働者を増やす要因になっています。小川氏は、100年刊続ければ消費税100%になっても物価は2倍になるだけだと楽観視していますが、その前に日本の社会が壊れてしまうことはないのでしょうか?

 

 小川氏のみならず消費税によって社会保障を図ろうと考える人達は本当に消費税のことを認識しているのでしょうか?私は、この税理士さんの説明動画を視聴して愕然としました。

皆さんはいかがでしょうか?→賃下げ・雇用破壊、そしてインボイス制で340万社が廃業危機に

 

 動画の説明の中に、「インボイス制が実施されるようになると、340万社の中小事業者は廃業の危機に追い込まれる」とあります。・・・このような切実な問題を含んだままで社会保障(ベーシックサービス)と言われても国民から賛同を得るはずはありません。

 

今一度、消費税の廃止、減税について再検討検討すべきではないかと思います。

 

 

 

③高負担、高福祉を実現すると言いますが・・・

 社会保障を消費税で財源を確保し余用とする人は、こぞって北欧の高負担・高福祉を理想として提示してきます。

一方で、このような検証意見もあります→「北欧のような税率に」は間違いです 

 

 

最後に

 脱成長論の新しい動きとして気候変動対策からのアプローチがあります。

「人新世の資本論」の著者である斎藤幸平氏が「資本主義の成長路線が気候変動問題を惹起させてきた。マルクスは、資本主義の最終着地点として脱成長を目標としていた」と主張しています。(社会主義国は炭酸ガス排出による問題はなかったのか、とツコミをいれたくなりますが)

 

 気候変動対策としては、成長しながら具体的な対策を講じていこうとする反緊縮グリーンニューディール政策が欧米では提唱されています。

こちらもご覧ください→脱成長派 VS 反緊縮グリーンニューディール

 

尚、斎藤氏の脱成長論に対する反論もあります。

斎藤幸平氏(脱成長派) VS 池戸万作氏(成長派)

 

 

 

ここも参照して下さい→国債についての認識が180度勘違いしていた