彼女は狐につかれたんだと

何処の誰が言い始めたのかもう覚えてない

道を歩けばたくさんいしを投げられた

でも何故彼女がいしを投げられるのか分からなかった

狐につかれるのは何故悪いことなのか

誰も教えてはくれなかった

ただみんな同じ顔をしていしを投げるだけだった

神や仏に救いを求めた

何故彼女がこんな扱いをされなきゃいけないのかと

でも神も仏も何も答えてくれなかった

それならもういっそ

あくる日彼女が安らかな顔をして眠っていた

ひんやりとしたその体を抱きしめ

彼女は元に戻ったんだと思った

元に戻った彼女を車椅子にのせ

外で散歩をしていると

風に乗って村の人達の声が聞こえた

曰く僕は悪魔に魅入られたのだと

悪魔がなんなのか分からなかった

でも誰も石を投げなかった 

とても静かな日常だった

僕は幸せだった




目を開けると目の前になにかいた。
びっくりした。とってもとってもびっくりした。
びっくりしすぎて体の奥の太鼓がドドンと痛いくらい大きな音で鳴った。
それほどにびっくりした。
生きているものが。目の前にいる。

僕がいるところは大きな大きな森の真ん中にある大きな大きな木の上。
一度見つかるとしつこく追い回してくる毛むくじゃらでも追いかけるのをやめるし、
空を走り回ってるおっかない王様達だってのぼってこないくらい高いところなんだ。
それなのに、どうしてアレはここにいるんだろう。
どうやってきたんだろう。
そもそもアレは一体何なんだろう。

ちょっとしか毛、生えてないし毛むくじゃらとは違うみたい。
羽は生えてないから王様達とも違うんだろうな。
それに、僕とも違う。
なんなんだろ。まいっか。
僕より弱そうだし、ほうっておけば大丈夫だよね。

ぐーっと体を伸ばしアレをもう一回見る。
アレは青空みたいな丸い目を落っことしそうなほど見開いてパタリと倒れてしまった。
どうしたんだろう。
それよりもご飯ご飯。
久しぶりにたくさん寝ちゃってたから、お腹と背中がくっつきそうだ。




なだらかな曲線が規則正しく上下している。

ゆっくりと、まるで生きているかのように。

もう限界。こんなの耐えられない。だから。

覚悟と共に手にした包丁はとても重かった。


周りが変だと気づいたのはいつからだろう。

同じ向きに同じ速度で狂わず歩いてく何か。

かれらは僕を不良品だと声を揃えて笑った。

その様がとても気持ち悪くて吐き気がした。


人間のように喜び怒り哀しみ楽しむかれら。

寸分の狂いもなく同じ日を繰り返すかれら。

かれらは自分達こそが人間だと主張してた。

それこそが不自然だと何故気づかないのか。


あの日から、この世界は変わってしまった。

争いのない平和を叶える為におこした戦争。

こんな風になるとは知らなかったんだろう。

こんなおかしな世界になってしまうなんて。


争いのない平和な世界。確かにそうなった。

みな健康で寿命を全うするまで生きている。

笑顔で満ち溢れた世界。幸せで素敵な世界。

そんな風に見える人形劇場。否、人間劇場。


気持ち悪い。みなが同じ角度で口角をあげ、

同じ背丈で、同じ格好をして、歩いていく。

個の消えたこの世界が、とても気持ち悪い。

もう僕には耐えれない。もう無理、限界だ。


ベッド上、規則正しく上下する胸見下ろす。

その上にあるのは僕そっくりの何かの寝顔。

包丁を頭上に振り上げ、そのままその胸に。

何度も、何度も、何度も何度も突き刺した。


ソレは口角を上げ僕を見つめてこう言った。

これでやっと人に近づけたね。そう言った。