なだらかな曲線が規則正しく上下している。

ゆっくりと、まるで生きているかのように。

もう限界。こんなの耐えられない。だから。

覚悟と共に手にした包丁はとても重かった。


周りが変だと気づいたのはいつからだろう。

同じ向きに同じ速度で狂わず歩いてく何か。

かれらは僕を不良品だと声を揃えて笑った。

その様がとても気持ち悪くて吐き気がした。


人間のように喜び怒り哀しみ楽しむかれら。

寸分の狂いもなく同じ日を繰り返すかれら。

かれらは自分達こそが人間だと主張してた。

それこそが不自然だと何故気づかないのか。


あの日から、この世界は変わってしまった。

争いのない平和を叶える為におこした戦争。

こんな風になるとは知らなかったんだろう。

こんなおかしな世界になってしまうなんて。


争いのない平和な世界。確かにそうなった。

みな健康で寿命を全うするまで生きている。

笑顔で満ち溢れた世界。幸せで素敵な世界。

そんな風に見える人形劇場。否、人間劇場。


気持ち悪い。みなが同じ角度で口角をあげ、

同じ背丈で、同じ格好をして、歩いていく。

個の消えたこの世界が、とても気持ち悪い。

もう僕には耐えれない。もう無理、限界だ。


ベッド上、規則正しく上下する胸見下ろす。

その上にあるのは僕そっくりの何かの寝顔。

包丁を頭上に振り上げ、そのままその胸に。

何度も、何度も、何度も何度も突き刺した。


ソレは口角を上げ僕を見つめてこう言った。

これでやっと人に近づけたね。そう言った。