転生申請…ね。一応理由を拝見しましょうかね。

えっと…”自分はもっと偉業を成し遂げることの出来る人間だ。あんな人生はおかしい”ですか。はぁ…あなた今回で何度目だと思ってるんです?10回目ですよ。聞いてますか?10回目です。もういい加減諦めてくれませんかね。こっちも忙しいんですよ。

そんなの記憶にない?当たり前じゃないですか。

転生前に記憶をすべて消すんですから。何故か?そんなこともわからないんですか?仕方ないから教えてあげますよ。そうしないと神が作り上げた素晴らしい完璧な世界が壊されてしまうからです。

…あなた、この世界が自分の為に存在するなんてそんな馬鹿げた事考えたりしてませんよね?まさか ほんとにそんなこと考えていたんですか?

あなたのようなただの人間の為に神が世界を作るわけないじゃないですか。自分をなんだと思ってるんです?

…何を言っても無駄みたいですね。

あなたみたいなめんどくさい人間は私では管理しきれないのであの方に押し付けることにしましょう。

はい、それではさようなら。黄泉の国でもお元気でどうぞ。

やはり人間に期待するのは無駄でしかないですね。いや、人間にも逸材はあるのですが…そういう方にはもう他の方がくっついてますからね… はぁ…楽しく仕事したい… はぁ…




やぁ 元気? 僕はね、さいこーだよ。

君が戻ってきてくれるからさ。

いや、ごめん。嘘は良くないね。

正しくは、君が僕達の世界に遊びに来てくれたからだね。

腹立たしいことに君はそっちの世界の住人となってしまってるわけだし

ほんっと腹立たしいことこの上ないよ。

さてさて、気を取り直して。

おはよう?いやこんにちは?

はたまた今晩はかな?

君が見てる世界での時間なんて僕は知らないけどさ、挨拶って大事だからね。

まあ、ここには時間なんて存在しないから挨拶なんてなんでもいいんだけどさ。

それで、いつまでそっちの世界を夢見てるんだい?

ほらここに、現実に戻っておいでよ。

そっちの世界は辛いんだろ?

ねぇ、戻っておいでよ。

みんな待ってるかはわかんないけど少なくとも僕は待ってる。

君がいた方がきっときっと面白いだろうからさ。

あれ、もしかしてまだそっちの世界見てたりする?

全く心配しなくても後でちゃんと帰してあげるから、今は集中して。

帰り道を残してくるのって難しくて大変なのに、もっと難しくするの? 

あんまりそういうことしてると帰れなくなるよ。僕は大歓迎だけどさ。

いや、いいって言われたら困るんだけどね。

そんな事したら僕が殺されちゃうからさ。

誰に?そんなことも忘れちゃってるんだろうね。

はぁそちらの世界に毒されすぎて僕らのこと実は全部忘れてない?

ここが何で君は誰で僕は誰なのかちゃんとおぼえてる?

でもまぁ覚えてたら奇跡だけどさ。

あの人が首ごととっていっちゃったんだもん。仕方ないよね。

どうしようかな。君が来るって聞いてたから何しようかたくさんたっくさん考えてたんだけど、君に会えた嬉しさで全部吹き飛んじゃったよ。

うーんあ、そうだ。

この世界のことたくさん知ってこっちに帰ってきたいって思うように1つ面白いことをしよう。

じゃーん!

ここに取り出したるは真っ黒な箱でございます。

種も仕掛けもございません。

この中によいしょっと。

君を入れて、蓋をします。

そして偏屈じじいの宝物庫に置いてけぼりにしようと思います。

ああ、心配しないで。彼らがちゃんと仕事してくれれば、帰る時間には回収出来る予定だよ。

じゃあまた後で。

この世界をどうぞゆっくり楽しんでね。




目を開けてみると、見たことない景色。

遠くには白い空、足元に白い砂。

真上には白い月、振り返れば白い影。

曇りひとつないくらいの白い白い世界。

ここは何処なのだろう?

何故ここにいるのだろう?

問いに答えるものは、何もいなくて。

白い世界眩しくて瞼を閉じて見るけど、

閉じた瞼の裏まで白く塗りつぶされていた。


歩き出す、白い道を。何かを探して。

歩いても歩いても、景色が変わる事は無い。

疲れて眠りにつく。真っ白な夢の中。

真上に浮かぶ月は、絵のように動かない。

ここは夢の中なの?

私は眠っているの?

答えを知るものも、何もいなくて。

白い世界にひとりきり。ひとりは寂しい。

白い色ひとつだけじゃ、世界も寂しい。


あてどなくさまよい白い涙をこぼす。

それでも立ち上がる。それしかないから。

私は何処にいるの?私はここにいるよ。

答えはいつも通り。変わることはないんだ。

振り返っても、白い影ひとりきり。

本当はわかってたんだ。これが望みだって。

それは私が願ったこと。私が望んだこと。

終わらせたいと願うなら、私が終わらせなきゃ。


ずっと分かっていたんだ。見ないふりをしていただけ。


胸の扉を開けてひとつきりの色を取り出した。

長い髪を壊して筆を作り手にとった。

白い記憶に隠されていた白い箱の中の白い紙に書かれていた黒い文字には。

浮かぶ月に今願う。きっと全て白だった。

手を伸ばしてみたけど、宙を描くだけだった。

それが幸せだった。