明日、僕は死ぬ。

そう決めたとき、憑き物がとれたかのようにスッキリした気がした。


物がほとんどなくなった部屋は、何故か心地よかった。

案外広い部屋だったんだと、少し驚いた。

結局、誰かから貰ったこのぬいぐるみだけは最後まで捨てられなかったな。

気に入っていたわけではない。

何故だろうね。


携帯が微かに震えたような気がして開いてみた。

何のこともない迷惑メールだった。

一体、何を期待していたんだろうか。

壁掛けの時計の針がゆっくり動いている。

あと、3時間で。


いい事が無かったわけではない。

悪い事ばかりだったわけではない。

理由なんて、多分ない。

ただ、死にたくなってしまっただけ。

きっとそれだけなんだよ。


目を閉じてみても見えるのは黒だけで、思いを巡らせても行き着く先はいつもと同じ。

ここまできても変わらない自分に嫌気がさした。

変わりたかったわけではないけれどさ。


冷たい床に横になっていたせいか、変に腕が痛い。

先に結んでいてよかった。

立ち上がり伸びをする。

今までないくらいに背骨が鳴った。

さて、もう時間だ。


目線が変わると違った世界が見えるというのは本当らしい。

あんなところに押しピン刺さってたなんて、今の今まで気づかなかった。

きっと前の住人だろう。

いないはずだけど。


最後に思い残すことは、ない。

ただ、少しだけ寂しいとそう感じた。


携帯が引きとめるように鳴り出す。

ここからじゃ誰だか分かんないや。

誰だか分かんないけどごめんね。

僕はもう、




そんな、夢をみた。

そういうことにしよう。




おや、いらっしゃい。こんな時間にどうしたの?

…あの人は何処?

あの人?

あなたなら知ってるでしょ⁈

あの人ねぇ…とりあえずそこに座ってよ。

こんなに冷え切ってしまって…

とぼけないでよ!

いいからいいから。今温かいものを用意するよ。

はぐらかさないで!あの人は何処って聞いてるの!

コップはどれにしようかなぁ…

ねぇ!

…そもそも、君の言ってるあの人って誰なんだい?

誰って何言ってるの⁈

さっきからあの人あの人ってそれだけじゃないか。

だって…

じゃあさ、あの人って名前は何ていうの?

それは…あれ…?

名前は?

あれ、名前わからないのかい?

違う…

答えられないのに?

違うの…

何が違うの?

違うのよ…

じゃあなんで分からないんだろうね?

その人はどんな顔をしてるの?

それ、は…

どんな髪色?背丈は?

何もわからないの?

君が言っているのは一体誰のことなんだろうね?

はいどうぞ。砂糖は3つだったよね。

もしかしたらあの人なんて言うのはいないのかもしれないね。

そんなこと…

そんな事ないってどうして言える?

それは…

名前も顔も背丈も何もわからない。そうでしょ?

でもっ

でも、なぁに?

とりあえず冷める前に飲んでよ。

今の君は冷静じゃない。一旦落ち着こう?

一口だけでもいいからさ。

…分かった。

美味しい?

…うん。

それはよかった。

君の言うあの人ってまるで夢のようだね。

夢…?

姿も何も忘れてしまったのだろう?

ちが…

本当に?

もしかしたら本当に夢なのかもしれないね。

今この瞬間すらも夢の中なのかも。

今日はもう疲れたろ?ゆっくりおやすみ。

 

それで、いつまでそこにいるつもりだ?

私は言ったよな。覚悟はあるのかと。

お前は言ったよな。覚悟はあると。

その結果がこれか?

お前の覚悟はこの程度だったというのか?

私はお前を唯一無二の友だと思っていた。

だから私は本気で君に問うた。その答えがこれだというのか。

お前には失望したよ。

出てってくれ 。

今ここで殺されたくないのなら今すぐに出ていけ。

そして二度と降りてくるな。

…分かった。


よ、久しぶり。

そんな顔するなよ。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?

…何の用?

つれないなぁ…近く通ったから顔だしてやったって言うのに。あれ今日は××はいないんだな。ま、俺には都合がいいけど。

え?

…なんだ?

誰?それ。

は?

××って誰?

おま…は?誰って…××だよ。

…?

どういうことだ…?






黒いのは退屈していました

そこで黒いのは何処かに行く事にしました

特に何も持つ事なく外を歩いていきます

普段の景色でさえも何故かきらきら見えて嬉しくなります

歩いていくうちに黒いのは傷だらけの猫を見つけました

黒いのは猫を手当てして甲斐甲斐しく世話を焼きました

猫も黒いのにいつしか懐き二人は友達になりました

いつしか猫の傷は良くなり猫は喜んで外を跳ね回ります

それを黒いのは眩しそうに眺めます

それが二人の時間でした

ある日いつものように猫のもとに向かっていると猫の側には他の猫がいるのを見つけました

二人はとても仲よさそうに寄り添ってました

猫の顔は見たこともないほど幸せそうな顔をしていました

黒いのはここにいるべきではない気持ちになってその場を後にしました

少し寂しい気持ちでした

どこか遠いところに行きたくなって黒いのはどんどん歩いていきました

何度か日が昇っておちた頃黒いのに声をかけるものがありました

それは大きな狼でした

狼は優しい言葉を黒いのにかけます

嬉しくなった黒いのは狼を好きになります

黒いのはそのまま狼についていってしまいました

狼は家に入るとさっきとは異なる怖い顔になりました

そして黒いのを半分以上食べてしまいました

そして満足したのかねむってしまいました

黒いのは悲しくなってその場を後にしました

黒いのは歩いていきます

あたりは暗く寒くなってきました

その時遠くの方に光が見えました

黒いのはそこに向かって歩いていきます

そこには一軒の家がありました

そっと扉を開けるとそこには大きな炎がいました

炎は黒いのを手当てしてくれました

黒いのはとても嬉しくなりました

炎の家にはたくさんの人が来ました

いろんな人が来ました

炎はみんな平等に接します

黒いのはまた少し寂しい気持ちになりました

でもなぜか分かりませんでした

ぼんやり炎の家で過ごすうちに黒いのは気づきます

人が来るたびに自分と接するうちに炎が小さくなっていってることに

黒いのは怖くなりました

怖くて怖くて黒いのは炎の家を飛び出していきました

黒いのはあかりに背を向けて走っていきました

走って走って走って後ろからの声にも気に留めず走っていきました

黒いのが力尽きて立ち止まったところは湖の前でした

水を飲もうと湖を覗き込むと底の方に何かがうずくまっているのが見えました

黒いのは声をかけます

何かは何も答えません

黒いのは心配になって何かの近くに行こうとします

でもその度何かは遠くに行く気がして一向に距離は縮まりません

何度近づこうとしても近づくことはできませんでした

黒いのは悲しくなって水を飲むのも忘れてそこを離れていきました

歩いていきます

いつしか黒いのは自分の家に着いていました

黒いのは家に入り自分のベッドに飛び込みました

黒いのは疲れていましたのでたくさん眠りました

誰かが家を訪ねてきた気がしましたが疲れていたので無視して寝続けました

黒いのが起きたのはあれからたくさんの月日が経った時でした

黒いのはその事にとてもびっくりしました

黒いのは眠る前何をしていたのか思い出すことは出来ませんでした

その事にもやもやしながら黒いのは外に出ました

何故か扉の前にはたくさんの紙が落ちてました

黒いのは頭を傾げながらそれを見ることもなくゴミ箱に入れて行きました