今でも鮮明に思い出す。その度にこう思うの。

あいつらを見てしまった目を潰したい。あいつらの声を聞いた耳を割りたい。あいつらの臭いがこびりついた鼻を切り落としたい。あいつらが触れた皮膚を全て剥がしたい。あいつらが入った私の中身を引きずり出してずたずたに引き裂いて燃やしたい。あいつらに関する記憶を持つ脳をかき出して投げ捨てたい。あいつらに傷つけられた心を抹消してしまいたい。

そう、思うの。

ねぇ。何故許されないの?

あいつらがこの世から消えればあいつらが行った全ても無かったことになるの?

私にこんなにもこびりついたあいつらの存在はどうなるの?

無かったことに出来るわけないじゃない。

やり直すことなんて出来るわけないじゃない。

可哀想にそういうならいっそ私を殺してよ。死ぬことを禁じられ、日々死んだように過ごす私を殺してよ。

私は何の為に生かされてるの?





名が消える。それは存在の消滅を意味する。

これは死ではない。

つまり、私は最初から生まれなかったこととなる。そう世界が修正されるのだ。


あの人も私を忘れてしまうのかな。

ただ1人、大好きなあの人にだけ捧げた私の名前。

結局、最後まで呼んでもらえなかったな。


そういえば、あの人はどんな声だったろうか。どんな顔だったろうか。頭の中を駆けていくこの思い出達は、刹那の幻だったのだろうか。


結ばれていた糸がさらさらと解け、私の存在が命が零れ落ちていく。世界から私が消えていく。

嗚呼、私はなんだっけ。

自分すらも分からなくなって。

終わりへの恐怖と寒さに身を震わせた。






ずっと前から願っていたことだった。

全てはシナリオ通りに。

それが希望であり私の生きる全てだった。

それを完成させるために作られた存在でありただの駒であった私。

嫌だった。私の意思などないこの関係など。

でもその役目も今日で終わり。

これで全部、全部終わったのだ。

そう、やっと叶ったのだ。

自由になるという夢が。

やっとあの人から解放された。

とても嬉しいことなのに。

なのに、視界が滲んだままなのはどうして?

その答えを私は知っている。

今更気づいても遅い、その答えを。

白い衣装を着たあの人はとても綺麗だった。

無意識に探してしまう薬指の違和感を無視して、私は綺麗な笑顔を作った。