Mちゃんが引っ越してきた日に、デポジットの200ドルを大家さんに払うため、そのお金を引き出しに、近くのATMのある銀行の前に、私たちは行きました。
ATMで200ドル引き出そうとしたのですが、引き出せず、私たちは銀行の中に入ろうと、扉を開けようとして押したり引いたりしていた時です。
横から誰かに声をかけられました。
見た感じ、10代後半から20代前半くらいの青年でした。
彼の様相はと言うと、スティックインセクトのような細い体に、頭には黒い野球帽を被り、メガネをかけていて、ウォークマンをぶら下げ、小さいリュックを背負っていました。
そして、銀行に入ろうとしてた私達に、こう言ってきたのです。
青年 「財布を落としてしまって、デトロイトに帰るお金がありません。
20ドルあれば助かります。貸してくれませんか?」
私達 「ハッ?」
青年 「デトロイトに着いたら、祖母からお金を貰って、必ず返すか
ら...。」
この話に私たちは半分信じかけたものの、良く考えてみると、バンクーバーからデトロイトまでは結構な距離があり、$20だけでは、とてもでありませんが、辿り着くことなんて出来るはずがありませんん。
何よりもその時ラッキーだった事に、私は手ぶらだったのと、Mちゃんは銀行からお金を引き出さない限り、20ドルも持っていなかったのです。
Mちゃん 「20ドルなんてお金、私達持っていません。」
青年 「銀行からおろせばいいんじゃない。」
Mちゃん 「この銀行の扉、開けようとしてるんだけど、開かないんです。」
この時、実際に銀行の扉を開けることが出来なかったのは本当です。
Mちゃん 「申し訳ないんだけど、銀行にも入れないし、お金も引き出せない
から、20ドルは貸せません。」
私 「ガンバレー、Mちゃん!」
Mちゃん、怖さのあまり、ちょっぴり涙目になっていました。
青年 「お金がないと、デトロイトまで帰れないんだ。お願いだから20ド
ル貸して!」
彼もなかなか引き下がってくれません。
しかし、私達は何とか彼を説き伏せ、その場を逃れることが出来ました。
...のですが、どう、その場を切り抜けたのか、いまいち記憶が定かでありません。haha...
とにかく、彼はその後、近くのバス停からバスに乗って、何処かへ行ってしまったと思います。
私達 「バス代持ってるんじゃん。」
そう、彼はただの引っ掛けだった訳です。
その後、Mちゃんと私は、無事に銀行の中に入ることが出来、お金も引き出すことが出来たのでした。
扉が開かなかったのは、銀行のセキュリティシステムで、ボタンを押すかなんかで、中から開けてもらって入る仕組みになっていたからだったと思います。
この事があってから、近所で同じ青年が、彼女らしき連れと一緒に、アジア系の女の子に近づいているのを見かけたりしました。
そして、またです
同じ青年に、近くのバス停で声をかけられました(今度は一人の時に)。
その時、私はとっさに、"I know you."という言葉を彼に投げかけると、"Where? "と返されましたが、あくまでも無視していたら、彼は去って行ってくれました。
それから数ヵ月後、今度はアルファコースの帰り道、夜のバンクーバーの街を、Mcちゃんと歩いていたら、またもや黒尽くめの格好をした同じ青年が、私達に声をかけてきたのです。
私はまたかと思い、そして、彼がMcちゃんに「お金を貸して」という話を始めたところで、" I know you "
と叫び、気のいいMcちゃんに、
「そいつ引っ掛けだから、話し信じないで逃げてー」
と言って走り出しました。
またもやその青年は、"When? Where?"と言って、全然私を覚えていない様子。
私は内心、「何なんだコイツ、記憶喪失か?」とあきれ返っていました。
Mcちゃんはというと、とっさのことで何がなんだか分からず、キョトンとした状態。
幸いにも、彼は私達を追っては来ていませんでした。ホッ...
...とまー、バンクーバーで三度も同じ引っ掛け青年に声をかけられた話でした。
何も取られなかったので、ホント、それだけでもラッキーだったと思っています。