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今回は、失活歯(しっかつし;神経の無い歯)の漂白法、ウォーキングブリーチ(ホワイトニング)について書きます。
歯は、歯髄(しずい)と呼ばれる神経が内部にあります。
この歯髄を取った歯を失活歯(しっかつし)と呼んでいます。
失活歯は、神経を取ることで変色を起こしやすくなります。
ただ、神経を取った歯がみんな同じように変色するわけではありません。
変色の強いもの(濃いもの)もあれば、ほとんど変色を起こさないものもあります。
押しなべて言うと、変色の強い歯であるほど、歯の内部が腐敗しています。
これは、虫歯の取り残しや、神経の取り残しなど、内部に腐敗物質が多いほど歯の変色が強くなりからです。
したがって、変色が強いということは、歯の内部に問題が潜んでいるということであり、そのまま放置すれば、いずれ抜歯となる可能性が高いと言えます。
歯の変色の改善を希望し来院。典型的な失活歯の変色(矢印)。治療法には、セラミッククラウンを被せる方法(補綴)とウォーキングブリーチ(ホワイトニング)がある。補綴の決定的な欠点は、歯茎が下がった時に被せ物の縁(へり)が露出して、審美性が悪化するところにある。ウォーキングブリーチでは、そのようなことは一切起こりえない
失活歯のウォーキングブリーチ後。隣の歯の色調と合っており、ほぼ見分けが付かない。
ウォーキングブリーチは、健康な歯質を削らずに歯を白くする方法です。(既に詰めてあるプラスチックや虫歯は削る必要があります)
歯の裏側に開けられた穴からホワイトニング剤を内部に数日間留置し、これを数回交換して歯を漂していきます。
手間のかかる治療ですが、歯を削らずに済むメリットは大きいと言えます。
ただし、ウォーキングブリーチにも漂白の限界や適応があるため、変色が極端に強い場合や、歯の崩壊が著しい場合には、セラミッククラウンによる治療が第一選択になるでしょう。
セラミッククラウンは、経年的には、歯茎の退縮(下がること)とともに被せ物の縁が歯茎から露出してきます。
当然ながら、審美性が損なわれてきますが、これは避けようがありません。
したがって、一度セラミッククラウンの治療を施すと、いずれやり替えが必要になります。
ウォーキングブリーチも、当然一生ものではありませんが、セラミッククラウンによる治療を確実に先延ばしすることが出来ます。
そうすれば、セラミッククラウンをやり替える回数を減らすことが可能になり、費用の負担も少なくて済みます。
そのような長期的視野に立った治療が非常に大切です。
歯科医院にとっては、セラミッククラウンにした方が確実に利益が上がると思われますが、決して目先の利益優先で治療法を押し付けたり、選択したりすべきではありません。
優先されるべき利益は、患者さんの利益です。
患者さんにとって、その治療が人生のより良い選択となるようアドバイスをすることは、歯科医師にとって何にも代えがたい信用を得ることにつながると信じています。
治療法の選択においては、各々の治療法のメリット・デメリットを担当の先生にお聞きし、よく吟味されることをお勧めいたします。