『生きてるだけでえらい』の言説を信じていない。正しくは、生きてるだけでえらい人はいるが、わたしは生きてるだけではえらくなれない。“生きてるだけでえらい” のは、たとえば偉業を成し遂げた人間国宝みたいな人や、生きてることが誰かの希望になるアイドルとか、そういう人だけだよ!きれいごと言ってんじゃねえ!
ということで、わたしは生きてるだけでえらくはなれないので、生きてるだけ ではなく、“だけ” の外へ行きたい。日焼け止めを塗って、日傘をさして、気温だけがひとしきり主張してくる2020夏のまっただ中へ。
いや別に偉くなりたいわけではないんだけど、てかえらいってなに?評価で、比較で、それはなんのためなんだ。えらくなったらトロフィーもらえる?誰から?
知らんけど、抱負を語るのは簡単で、じゃああんた何してんのよ!!!というと、毎日筋トレしたり、丁寧にスキンケアしたり、「今日こそ絶対に早退してやる」って毎朝決意しながら定時まで働いたり、まあ基本自分のことだけで地球とか他人のためになることは何もしていないので結局えらいレベルとしてはかなり低く、トロフィーに代わる非課税の5億円がもらえるかといったら自信ないんだけど、でもまあ頑張ってます。
なんのために、?
誰にも見てもらえなくたって、口紅をひいたわたしのくちびるは非日常で綺麗なのでテンションマヂアガる👆💞し、あとやっぱり、生きているだけで既にえらいのにさらに健康に気を遣いながらかわいく日常を営んでいる超偉アイドルに、なるべく引け目を感じずにいたい。
持って生まれた才能とか価値とかそういうあつらわれたものは無いから、自己肯定感も自力で培うしかないの!
いつか報われますように、神様のお目こぼしをどうか、って強欲で不純な気持ちで今夜も筋トレする。いつかえらくなれたなら5億円よりウィズコロとかじゃなくてノーコロな現場が欲しい。世界線の次元になっちゃう。
生きてるだけでえらくはないし、女として生まれただけで大勝利でもない。たくさんの呪いにまみれて、それこそ評価や比較の中で、毎月飽きずに血を流しながら女として生きてる。
「あなたはかわいいよ」と言ってくれたことがどんなに救いだったか、「あなたは(女だから)かわいいよ」だったとしたら、それは会話の相手がわたしでもわたしじゃなくても関係なかったのかな。
そんな風に、たしかな手応えすらでろんと溶けてしまうけれど、好きだった人を好きだった日々を守るのもやっぱり自力でどうにかするしかない。
マスクしてたら肌めちゃ荒れて、美容部員さんに相談したら「クリームでバリアを」って言われてその通りにしたらちゃんと治って、体のことなんて大体そんなもんだと思った。だから医学は確立しているわけです。
『好き』の膜でバリアを張ってたら、そのうち癒える。せいぜい自分から上手に切り離すことで折り合いを付けたいよ、憎んでしまったらあの頃のわたしがかわいそうなので。
燃えそうな橙色のスカートをひるがえして、汗だくで新宿二丁目を走る19時半はきっと来る。
あと350晩くらい経ったら正夢になると信じて、まぶたの裏に見えない光を灯す。
おやすみなさい。みんな明日も元気でいてね。