無敵かもしれないと思える夜を増やす/吉澤嘉代子 | quarters

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いろんなライブの記録。二丁目の魁カミングアウト・きのホ。・ONIGAWARA・ RAG FAIR・ズボンドズボンなど。

『無敵かもしれないと思える夜を増やす』

She is編集長の野村さんと吉澤嘉代子ちゃんが “無敵かもしれない夜” についてお話する会。第2四半期末でびっくりするほど忙しい仕事を早々と切り上げて、夜に対峙するとっておきのワンピースを来て、恵比寿の街を駆けて向かいました。

(レポというか、大概にして自分語りです)


集まったお客さんは60人?80人?倍率は4倍だったそうです。ラッキー。
まずShe isの紹介。野村さんの信念と行動力がすごいなと思いました。
あとかよちゃんの昔のインタビュー記事久しぶりに見た。これわたしもとても好きなインタビューです。


それから事前に寄せられた “夜にまつわるお悩み”。お悩みのセレクトはかよちゃん。明け方まで眠れないことが何ヶ月も続いた人や、『おふとんに入る瞬間が大好きだから悩みはありません』って言う人、『寝てる間に虫が口に入ってないか不安です』って言う人。眠れる人も、眠れない人もそれぞれの夜があって、それぞれの悩みがあったり、あるいはなかったりする。当たり前のことなんだけど、改めて「そうだよなぁ」と思いました。

引かれるかもしれないけど、眠れない時は薬を飲みます、ってかよちゃん言う。「体に悪いかなとかも思ったんですけど、風邪ひいた時に風邪薬を飲んだり、生理痛の時に薬飲んだり、それと同じだよって友だちが言ってくれて。それから飲んでます」
野村さんも「薬が悪いとかじゃなくて、自分に合う量を見つけるのが大切ですよね」って言ってて、かよちゃんの友だちの話はわたしも成程さんでした。わたしは劣等感しか無かったから。すてきなお友だちさんだなぁ。

あと『昼間は普通に通れる場所が、夜はちょっと怖い』ってお悩みもとても共感してたかよちゃん。「これ今日は腹割って話しますけど!」ってとっておきの切り抜け方を教えてくれた。
嘉「シリアスにしたくないので」野「ちょっと茶目っ気を出すというか」嘉「Twitterとか書かないでくださいね」野「ここにいる人だけの内緒で(笑)」ということで方法はご想像にお任せします。


そして “あなたにとっての無敵かもしれない夜は?” って質問。『彼氏の家から駅に向かって歩きながら、お互い帰りたくないなって思って無言でいる時』って回答があって、わたし今日いちばん覚えてるのがここなんですけど、「その人が世界の中心なんだね。世界の中心と一緒だから、無敵だって思えるんですね」ってかよちゃんが言った。かよちゃんはこの一文だけで、世界をぜんぶ掴んだ2人の姿が見えたんだと思ったら、なんかうまく説明できないけどゾクゾクした。「守るものがないと無敵だって思えるのかもしれない」とも。逆説的なお話で、失うものがないからなんだってできる、みたいな。このかよちゃんの言葉の意味を考えたくて考えたくて、たぶんわたしは今夜も眠れないと思う。

野村さんの「夜行バスに乗って、深夜のSAに好きな人と降りた時、この世界の最後の2人になった気持ちになりますよ」ってお話もすごく美しいなと思った。わたし3分くらい遅刻して最後列で見てたので、登壇者の顔は殆ど見えてないんですけど、「すごい!」って言うかよちゃんの声キラキラしてて、きっと表情もぴかぴかしてたんだと思いました。


『映画や本や音楽の世界に触れていると無敵だと思えます』って回答も、わたしもすぐ『一角獣』思い出した。
「わたしは本なんですけど、物語の扉が開いているうちはそっちの世界と行き来ができて、その物語に守られてるって」想像力に守られているから感受性は殺したくないなと、わたしもおもう。


『夢を追いかける彼氏を、すごく寂しいけど、「行ってらっしゃい!」って懐の大きい女のフリをして送り出せた時、無敵かもしれないと思いました』
わたしも、歌ってる間は別人になれるけど、それって短い時間で、3、4分とかで、ウルトラマンと同じで、ってかよちゃん言ってたのも印象的で、かよちゃんウルトラマンなのか……ってちょっと面白かったけど、変身するのは3分でも、わたしたちを守ってくれるのはかよちゃんの音楽そのもので、ひいてはかよちゃんなので、ウルトラマンとはちょっと違うかなと思いました。


『いつもはあまり履かない高いヒールを履いて電車に乗って、視線が高いと無敵だと思えます』って回答が、わたしはいちばん「それ!」って思った。「高いヒールでどこに、誰に会いに行くのかっていうのが透けて見えるから無敵なんだと思う」ってかよちゃん談。

わたしはとっておきの洋服を来て、丁寧にお化粧をして、しゃんとまっすぐ好き人に向き合えた夜、そんでちゃんと甘やかしてもらえた夜が無敵だと思ってる。大成功〜!って看板掲げたいくらいに。


あと「春一番が吹いたら無敵」とか。季節の匂いの話。


かよちゃん即興で1曲歌ってくれました。これはどこかで映像見れるようになるかな、もう一回聴きたいな。

“あなたに触れられたら、あなたにキスできたら、わたしは無敵になれる” って、そんな歌でした。

現世はもうこの人しかいない、って思った人がいて、でももうその人といてもわたしは無敵じゃなくて、だからこの歌はわたしのことを歌ってはいなかったけれど、でもとても綺麗な歌でした。無敵で幸せな女の子がたくさんいる世界は最高だと思います。



『一晩だけじゃなくて、人生って括りで “無敵” って思うためにはどうしたらいいと思いますか?』みたいな質問があって、「んー……ずっと傍にいてくれる人がいたら良いけど、そんなこともないので、自分が自分の味方でいるしかないんだなって。でも自分を信用するのってすごく努力が必要なことで。自分との信頼関係を築くために。自分がいちばん分かってるから」って、ニュアンスですけど。
自分が自分を信じなきゃ、みたいな言説はよくあるけど、信じるに足りるだけの行動をしてきたのかってところは自分に対して嘘つけないから。とてもシビアで、実直な、つよい女の子でした。


あと最後の方に、「眠れなくて、一人ぼっちかもしれないって思う孤独な夜でも、それは自分を育む夜」ってかよちゃん言ってくれたから、寝れなくても今までよりはちょっと平気だと思える。かよちゃんも野村さんも夜に何かを生み出している人だからかっこいい。



最後に “ギフト” で『残ってる』を歌ってくれました。顔も、ギターを弾く手元も見えなかったけど、この小柄な女の子から発せられる音と声が会場の中の空気を秋の夜明けのそれに変えていったから、じゅうぶんに届いた。

初めて聴いたのは去年の6月のやついフェスだった。すごく覚えてる。今夜この歌を聴いて、あれから1年3ヶ月でわたしはどんな風に変わったかな、って思った。いまも、あの頃も、それどころかここ何年もわたしは夜にうまく眠れないままで、でもそれだから今夜ここでかよちゃんと無敵な夜を探せたのかもしれない。『無敵かもしれないと思える夜を増やす』ってタイトル見て、絶対行かなきゃって思った。

この朝帰りの女の子は「無敵かもしれない」って思えたのかな、どうかな。


講座が終わって軽食を用意していただきました。なんかぼわぼわした頭だったから、説明していただいたメニュー全然覚えてないんですけど美味しかったです。ご馳走様でした。

かよちゃんの歌を聴くのは今夜が8回目でしたが、初めてお話できました。とても嬉しいお言葉をいただいた。「あっ、いま無敵」ってわたしこの瞬間恵比寿を掌握してた。ウルトラマンと同じ3分だっていいんだ、わたしだけの無敵夜を少しずつ重ねて、その全能感をちゃんと頭と体に染み込ませて、錯覚だってなんだって、死ぬまで向かうところ敵なしって信じていたい。

かよちゃんお洋服めちゃくちゃかわいかった。ネイビーのワンピースで、袖口の赤いパイピングがうっかり夜に紛れ込んでしまったように目に鮮やかで、女の子の余韻として完璧だった。ストライプの靴下も。


お茶会ツアー行きます。She isも楽しく拝見させていただきます。
すてきな夜をありがとうございました。