蝦読は私の拙い「読書感想文」です。
記事内は敬称略ですのでご了承を。
なるべく大きなネタバレをしないようにするつもりですが、ネタバレになっていたら目を瞑ってくださいますよう。
上野 瞭著 『ひげよ、さらば』
記憶喪失の猫・ヨゴロウザがたどり着いたナナツカマツカ。そこは野良猫と野良犬、そして野ネズミによる縄張り争いが続いているところでした。片目という名の隻眼の猫との出会いによって、ヨゴウロウザもその争いに巻き込まれ、猫たちをまとめるべく奔走することになります。
昔、NHKで放送された人形劇「ひげよさらば」の原作だったことが、この本との出会い。
当時は中学生で、人形劇は卒業していましたが、「ひげよさらば」は出てくる人形のカッコよさと思っていた以上に「燃える」展開に同級生内視聴率は非常に高かったのを覚えています。で、書店をめぐってみつけたのが辞書みたいなハードカバーの原作本。なけなしの小遣いから購入。せっかく高い本を買ったし、何よりストーリーが面白かったことから食い入るように読みました。文庫じゃなかったので持ち歩きもできず、帰宅後にひたすらページをめくる日々。明るいエンディングを迎えた人形劇とは違う結末が待っていたことに唖然としたのは、今となっては良い思い出です。(今は5000円超えるみたいです。amazonによると)
本作では犬も猫も擬人化されていて、セリフもあるし、猫どうしだけではなく、ネズミや犬との意志疎通もできます。個性的な猫たちとのやりとり、狡猾で抜け目なく存在感たっぷりの野良犬のボス、リーダーの暴走、マタタビに溺れる展開、目の前で起こったことにショックを受けて錯乱する猫……人間の社会で起こっても不思議じゃないことが描かれていて、人間社会の縮図としての「猫と犬の争い」を描いているんでしょうね。と感じた狙いも真意も推測の域はでませんが、そう考えるとなかなか重い内容です。
ジャンルとしては児童文学のようですが、児童対象でも媚びない作風になっているのがスゴイところです。
今年、数十年ぶりに文庫を入手して読み通しました。懐かしさと、何度読んでも変わらないハードさを堪能できました。きっとまた読みます、ハイ。