#760 レビュー 『第11回 近代化する日本と世界大戦』-3か月でマスターする世界 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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ついに日本も世界史の流れの中に大きく存在感を表わすことになる『第11回 近代化する日本と世界大戦 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』について

国民国家、帝国主義で世界をリードしてきたヨーロッパの体制が崩れることとなる世界大戦

(NHK『第11回 近代化する日本と世界大戦 - 3か月でマスターする世界史 - NHK』のタイトル画面(C)NHK)

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  国民国家・帝国主義のパッケージが崩れる二度の世界大戦

第11・12回は、「アジアの視点でとらえる世界大戦 アジアのゆくえ 戦後 そして21世紀へ」として世界史を現在にまで接続してみていく回となっているようです。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、11・12回について(C)NHK)

ゲストは、国際政治史が専攻の慶應義塾教授の細谷雄一先生です。

 

ナビゲーターの岡本隆司先生のよると今回のポイントは

    

 ①世界大戦がもたらしたものとは?

 ②日本のインパクトとは?

細谷雄一先生によると、非ヨーロッパのアメリカ、日本が国際政治の舞台で大きな影響を及ぼすと語られました。

 

”第0次世界大戦” 日露戦争

19世紀、ヨーロッパの国民国家やアメリカ・ロシアが世界各地で領土拡大や植民地獲得競争を繰り広げる時代に、アメリカが鎖国状態にあった日本にやってきて開国を求め、1858年にアメリカ、イギリス、フランス、オランダ、ロシアを修好通商条約を結んで日本(江戸幕府)は開国します。

 

幕末維新の混乱を経て、日本は1889年に大日本帝国憲法を発布するなどの近代化を進ていきます。ここでこれまでのアジアから見る世界史の視点として面白い見立てが提示されました。

ユーラシア大陸は、一番北の狩猟地帯、その次の遊牧地帯、南側の農耕地帯という色分けがなされますが、ヨーロッパと日本は自分たちのエリアにはそういう区分けがないということで地域的に「異端」な存在という定時です。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、ユーラシア大陸の異端的存在(C)NHK)

 

ユーラシア大陸の東西の両サイドが、その「異端」ゆえに、どちらもがオリエント・東アジアの帝国国家に先んじて近代化を成し遂げることができたという視点が提示されているのが興味深い視点だと思いました。

 

日本が近代化して国際政治の舞台に乗り出すのですが、それは”帝国主義”真っただ中の時代でした。日本にとって脅威となるのが、アジア側に不凍港を求めて拡大を続けるロシア帝国でした。

西側ではイギリスなどにより進出を阻まれていたので遠い東アジアで進出してきました。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、ロシアの進出(C)NHK)

清の北部の満州やモンゴルエリアを勢力範囲とし、朝鮮半島にも進出しようとし、日本も危機感を高めます。海軍国家としても巨大な力を持つロシアを危惧していたイギリスも、この状況についに1902年に日英同盟を結んで対抗する方向に動きます。

 

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、日露戦争(C)NHK)

極東アジア地域で、日本とロシアによる日露戦争が行われます。結果としては日本が勝ちますが、その戦争を詳細に語られることはありませんが、この戦争は”第0次世界大戦”と言われるそうです。

 

この戦争の大きな影響は、それまでも帝国主義を正当化するロジックである「人種的に白人が優れている」という考えが、有色人種の日本が白人のロシアに勝利したことで自明ではなくなり、アジア・アフリカの多くの民族に勇気や可能性を与えたことです。

 

一方でそれは、ドイツ皇帝のウィルヘルム2世が唱えた「黄禍論」のような考えを生み出すことになり、また日本の勝利によりヨーロッパ世界の国際関係の再編がもたらされます。

 

イギリスにとって、海軍力のあるロシアは脅威でした。日英同盟で日本を支援し、日露戦争で日本が勝利して、ロシアが沈んで、イギリスの脅威でなくなります。一方でドイツが力を持ち始め、そちらが脅威になることから、イギリスはロシア、そしてフランスのの関係を構築し、三国協商を築きます。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、三国協商と三国同盟(C)NHK)

ドイツはこれに対抗する形で、オーストリア・ハンガリー帝国、イタリアとの関係を構築し、三国同盟を築きます。

 

この関係で勢力均衡がもたらされ、安定することになります。しかし・・・・

 

崩れた均衡 第一次世界大戦

近代化をうまく取り組めなかったオスマン帝国が、徐々にその領土を縮小していく中、バルカン半島に「力の真空」が生まれます。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、17世紀の危機(C)NHK)

このエリアに、汎ゲルマン主義のオーストリア・ハンガリー帝国(三国同盟)と、汎スラブ主義のロシア帝国(三国協商)が進出してきて、争うことになります。

 

セルビアで、オーストリア帝国の皇太子が殺される事件が起き、これを契機にオーストリアがセルビアに宣戦布告、そのオーストリアにロシアが宣戦布告、そのロシアにドイツが宣戦布告、そのドイツにイギリスが宣戦布告と、宣戦布告ドミノが続き、第一次世界大戦になります。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、宣戦布告ドミノ(C)NHK)

日本は日英同盟の関係から三国協商側で戦います。ロシア帝国が、レーニンらによる1917年のロシア革命により倒れ、1922年ソビエト社会主義共和国連邦の成立で戦線離脱する中、”自由”と”民主主義”を掲げたアメリカが三国協商側で参戦し、三国協商側が勝利します。

 

1919年のパリ講和会議により、帝国主義のイギリス・フランス主導の国際秩序体制が構築されます。


(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、ベルサイユ体制(C)NHK)

ただ、この会議では、三国協商側を勝利に導くアメリカのウィルソン大統領が”民族自決””国際連盟”を提唱するなど、帝国主義批判のイデオロギーが台頭してきます。

 

ナショナリズムに結びついた国民国家を目指す独立運動が起こり、ヨーロッパ世界では、特に第一次世界大戦の敗者側で独立国家が相次いで誕生します。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、第一次世界大戦後の国民国家(C)NHK)

ただ、この”民族自決”の原則が適用されたのはヨーロッパだけで、アジア・アフリカには適用されず、イギリスなどの帝国主義国は国際連盟でも委任統治という制度をつくって、帝国主義的な植民地支配を続ける形にします。

 

しかし、それでも1928年の不戦条約締結などで、戦争のない平和な世界の構築を目指し、実際にそのような時期もありました。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、”世界史の転換点”満州事変(C)NHK)

細谷雄一先生によると、その国際秩序の基盤を壊してしまったのが、1931年の日本による満州事変でした。1935年にはイタリアがエチオピアに侵攻し、軍事大国が軍事力を使って現状を変更すること、それを防げないことが露呈してしまいます。

(ちょうどこのときは、1929年からはじまる世界恐慌で、イギリスなどの国際秩序を形成してきた国々も対応できる状況ではありませんでした)

 

第二次世界大戦 

ちょうどその頃に、ドイツにはアドルフ・ヒトラーと彼が率いるナチスが登場し、ついに1939年に第二次世界大戦が勃発します。

 

すでに1937年から日中戦争をたたかっていた日本は、ドイツと関係を構築し、1940年には「日独伊三国同盟」を築き、1941年の真珠湾攻撃でアメリカを攻撃し、第二次大戦に参戦します。

 

日本は310万人の犠牲者を出します。

 

細谷雄一先生によると、この第二次世界大戦で大きかったのは、戦争の行方を決めたのはヨーロッパの国々ではなく、アメリカとソ連であり、帝国主義のヨーロッパ世界が没落し、”資本主義”のアメリカと”社会主義”のソ連の2つのイデオロギー国家が、国際秩序を作っていく形に変わったということでした。

(NHKの『第11回 近代化する日本と世界大戦 』より、第二次世界大戦後の2つの意で御ろぎ0-国家(C)NHK)

 

ナビゲーターの岡本隆司先生も、第二次世界大戦後は国民国家とパッケージの帝国主義システムが通用しなくなると語られていました。

 

次回は、その2つのイデオロギー国家の競争?衝突?につながっていくんだと思います。

 

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