#750 レビュー 『源氏物語あさきゆめみし 6』大和和紀 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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『源氏物語』第二部宇治十帖始まる!『あさきゆめみし(6) (講談社漫画文庫) [ 大和 和紀 ] 』を、今年の大河『光る君へ』に合わせて再読

『源氏物語』第二部宇治十帖始まる!光源氏の息子たち世代の恋と自らの生まれに苦悩する薫、恋の過程でその秘密を知る。

 

  レビュー

第6巻は、紫の上、光源氏も亡くなった次世代の貴公子たちの恋物語”宇治十帖”が始まります。

 

第6巻で登場する主な女性・男性と光源氏の関係

 

薫るの君(薫中将):光源氏と女三の宮の子として育てられるが、本当の父は柏木という不義の子で自分の生まれに悩む青年貴族。生まれつき良い香りを漂わせているため、「薫るの君」と呼ばれている。恋には奥手

匂の宮(匂う兵部卿):明石の中宮(光源氏の娘)と今上帝の三の宮、薫への対抗心から香をきつく薫きしめているため、「匂う兵部卿」と呼ばれる。恋に積極的

夕霧:薫の兄で、右大臣。自分の娘の六の君を誰に嫁がせるのかでいろいろ悩む。

八の宮:桐壷院の皇子で、冷泉院の春宮時代に春宮廃立の陰謀に利用され、計画が失敗に終わった結果捨てられて、大君・中の君の姫たちを連れて宇治に引きこもり、仏道修行に励む。

冷泉院:桐壷院の皇子として育つが、光源氏と桐壷院の寵姫・藤壺との間の不義の子、若くして今上帝に譲位する。

柏木(故):光源氏の親友の頭の中将(現在は、致仕の大臣)の息子、光源氏の正妻の女三の宮に手を出して、子ども()を成してしまい、それを光源氏に知られ、自責の念で病死する。

大君:八の宮の一の姫、父と妹3人で宇治の山里に暮らす。思慮深く気品に満ち、妹思いだが進退が弱い。が思いを寄せるが・・・

中の君:八の宮の二の姫、父と姉の3人で宇治の山里に暮らす。明るく素直な愛らしい姫に育ち、匂の宮が思いを寄せることに

女三の宮:朱雀院の三番目の娘、光源氏に正妻になるも、柏木との間に不義の子の薫を生み、光源氏との軋轢に苦しみ、薫を残して若くして出家してしまう。

明石の中宮:光源氏と明石の君の間に生まれ、紫の上に育てられて今上帝の中宮となる。春宮や匂の宮の母。

 

第6巻について

光源氏も亡くなり、次の世代の恋物語である『宇治十帖』の始まりです。

 

主人公は表向きは光源氏と女三の宮の子の薫と、光源氏の娘の明石の中宮と今上帝の間の親王である匂の宮の二人体制で、一部の光源氏と頭の中将とのようにこの二人の男性の恋愛遍歴が展開されます。匂の宮は理想の女性を探すんだと積極果敢で一部の二人と同じですが、薫は自分の出生について謎があること(父が光源氏でないこと)を知ったことからそちらに意識が向き、女性には積極的になれず、積極的な匂の宮を眺めるというところが異なります。

 

出生の悩みを抱えているとき、冷泉院のところであった僧侶から宇治の山荘で仏道修行に励む八の宮の話を聞き、その生き方に惹かれて、八の宮の所に通うようになり、そのときに見かけた八の宮の長女の大君を見て、恋心を抱くことになり、またそこで仕えている老女から実の父は亡くなった柏木であることを知ります。

 

八の宮は死期を悟り、大君と中の君の面倒を薫に託し、大君に近づきたかった薫はそれを引き受け、宇治山荘に通い続けます。そのことを知った匂の宮があの薫が異性に関心を示す女性とはと薫に頼み込んで連れて行ってもらい、匂の宮は妹の中の君が自分の理想の女性だと熱烈な恋に落ち、薫に手引きを頼むことになり、大君が好きな薫も応じます。

 

しかし、ここですれ違っていく悲劇が、薫は大君に近づきますが男女の仲になれません。ついには寝室に入ろうと押しかけますが、危機を察知した大君は、病弱な自分は短命だろうから妹のためと中の君と関係を持たせようとします。薫は大君と思って寝床に入ると中の君だったので大いにショックを受けます。ここら辺からだんだん悲恋の方向へ

 

中の君に熱を上げていた匂の宮、ついに中の君と恋仲になり、3日連続で通えば結婚成立のはずが、母の明石の中宮が次の春宮になるのだからしっかりと正妻を持つことを求めて許さず、障害として立ちはだかることになります。匂の宮には正室を迎える話などが上がります。姉妹そろって心を痛め、病弱な大君は、ついに亡くなります。

 

宇治の山荘にて、薫が中の君を慰める中、ついに明石の中宮の許しを得た匂の宮が迎えに来て、匂の宮は紫の上からいただいた二条院に迎え、幸せな生活が・・・のはずですが、次の春宮にふさわしい正妻として、光源氏の子で現政権の中心の夕霧の娘の六の宮と結婚することになり、中の君は大いに心を痛め、そんな様子を見た薫は自分が大君ではなく中の君と結婚していればという考えを持つようになります。

 

ついに薫も正室として帝の娘の女二の宮を正室に迎えることになります。望まぬ結婚と大君や中の君への思いが断てない中、八の宮には母が違うもう一人娘がいることを知り、それが大君に似ているという話を聞き、興味を持ちます。その女性が浮舟でした。

 

この浮舟を巡って悲恋が展開されるのが次の7巻になります。

 

第一部の光源氏は恋にストレートで、紫の上が理想の女性としながらも、政敵の娘だろうがお構いなく手を出し、どの恋にも本気でそれゆえに女性たちを苦しめてしまう存在でしたが、宇治十帖は恋愛遍歴とはいえ、薫も匂の宮も最愛の女性がいるのに、自分たちの立場がその女性との愛を許してくれずに、望まぬ結婚などを強いられるという形でテイストがかなり異なります。

 

このテイストの異なりが、「宇治十帖」を書いたのが紫式部ではなく、他のものではないかという説を生み出す背景にあるんだというのを感じた6巻てした。

 

 

 

〈書籍データ〉

『あさきゆめみし ⑥』

著 者:大和和紀

発 行:株式会社講談社

価 格:660円+税

 2001年8月3日   第1刷発行

 2019年10月18日 第49刷発行

 講談社漫画文庫 や1-33

 
 
 
 

 

 

 

 

 

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