#747 レビュー 『新生』ダンテ・アリギエリ | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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9歳のときに心を奪われた早逝の女性ベアトリーチェに捧げる作品『新生 (河出文庫) [ ダンテ ]  』について

理想の女性を超越した学芸を司るギリシア神話のムーサな存在への思いあふれる作品

 

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  レビュー

ダンテ・アリギエリの『神曲』を読むにあたり、『神曲』で彼を地獄から煉獄、天国へと導く存在であるベアトリーチェという女性について、ダンテが詩を書いていることを知って読みました。

 

各章ごとに、その詩や歌を作る背景などが述べられ、そして詩や歌が発表され、最後に詩や歌の構成についての説明がなされる形で展開されます(一部例外あり)。

 

ダンテ9歳のときに出会った同じく9歳の女の子ベアトリーチェ、彼女に心を奪われてしまいます。といっても彼女に自らの口で思いを伝えるようなことはなく、時間が9年流れて見かけることになり、彼女からの会釈に酔いしれます。しかし、そんな彼女ですが父の意向により銀行家と結婚しますが、1290年に24歳で早逝してしまいます。

 

ダンテにとっては大きなショックですが、それがかえって彼女をギリシア神話の学芸を司るムーサのごとく、また天国に住む天子の女神のような存在になることになります。

 

ダンテが神格化するという意味では、”9”という数字が彼にとってとても神秘的な数となっています。それは、キリスト教の三位一体の”3”を二乗した数だからです。

 9歳で出会っ手心を奪われたこと、

 9年後に彼女からの会釈でその美しさに酔いしれたこと

 彼女が死んだ1290年は、1200年代で”9”が10回目の年であること

などから、ダンテが彼女が自分にとっての神のごとき存在であることをこれでもかと伝えてきます。

 

彼女に捧げると書きましたが、この作品自体は一気に書き上げたものではないようで、初めの法では、彼女だと分からないように他の女性に捧げるようにしたなんてことを書いていたりと、彼女が好きだけど・・・とこじれた感も表わされています。

 

しかし、彼女が死んだあと、フィレンツェは「市全体がいわば品位をことごとく失った寡婦のごとくになってしまった。私はこの荒廃した市で・・・」と彼だけでなく、フィレンツェ自体もだめになったかのような表現など、本当にスペシャルな存在であることを歌いあげています。

 

ダンテにとって、特別な存在であることがよくわかるとともに、一方で、当時のフィレンツェではどうだったのか?ベアトリーチェはダンテをどう思っていたのかな~なんていう疑問もわいてくる1冊でした。

 

〈書籍データ〉

『新生』

著 者:ダンテ・アリギエリ

訳 者:平川祐弘

発 行:株式会社河出書房新社

価 格:2,000円(税別)

 2022年9月15日 第1刷発行

 図書館で借りた本のデータです

 
 
 
 

 

 

 

 

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