#727 レビュー『歴史群像 令和6年6月号』の感想 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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最新研究で見る日本海海戦や、ムッソリーニの政治判断で悲劇を招く東部戦線のイタリア軍、黒田長政の特集や、機動戦の視点から読み解く中東戦争などを取り上げた『歴史群像 2024年 6月号 [雑誌] 』の感想

 

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  内容やレビュー

今月は、日本海海戦、黒田長政、丹羽長重、第4次中東戦争、M4シャーマン中戦車、ナポレオンのロシア戦役はボロディノの戦いに、日本陸軍軍楽隊の歴史などで構成されています。

 

特に印象に残った特集

 

史料と最新研究が明かす日本海海戦

司馬遼太郎先生の『坂の上の雲』をNHKがドラマ化したときも、日本海海戦の「丁字戦法」が描かれていましたが、正直以前から、相手も動きに反応してなんらかの動きを起こすはずなのに、そんなにきれいに「丁」になるんだろうかという疑問がありました。

 

今回の特集は、その「丁字戦法」がどうだったのかなどを最新研究でどんなものだったのかということを説明してくれます。

 

まずは、その「丁字戦法」について、必ずしもきれいな「丁」の形というわけではなく、相手も動いていく中、「イ」が崩れた形でも相手の頭を押さえて叩くという形でも成立するものと考えられていたそうで、それなら確かに「丁字戦法」と呼べるんだろうなということが分かりました。

 

また、日本海軍はこの戦法をロシアのバルチック艦隊にぶつける前に、黄海海戦でロシアの旅順艦隊に対して行ったそうですが、敵側に繊維がなかったことや距離が1万メートルと離れていたので不発に終わります。この経験から、敵艦隊と8,000メートルで一斉回答をはじめ、6,000メートルで発砲開始と決められ、ドラマでは東郷平八郎が決断して回答する「東郷ターン」として描かれたりしていますが、実際には前もって距離が定められていました。元海上自衛官の方によると、当時の射撃技術が6,000メートル以内でないとなかなか命中させられないことから、逆算して回頭する距離が8,000メートルということなんだそうです。

 

私としては、あまりに劇的な展開すぎるので、不自然さも感じていましたが、こういった資料や最新研究でそれを確かめることができたのが有意義な特集といえるものでした。

 

「豊臣の藩屏」から「徳川の北の守り」へ 丹羽長重

関ヶ原で西軍に属して領地を失うも復活した大名として、もっとも有名なのは旧領を回復することができた立花宗茂だと思いますが、旧領ではないですが10万石の領地を回復した大名が子の丹羽長重です。

 

父は、織田家中で安土城を築城するなど器用で「米五郎左」と言われた丹羽長秀です。妻は織田信長五女と、もし織田信長が天下をとれば自身もかなり上位の家臣として遇される可能性のある人物です。

 

父は本能寺の変後、次の天下人となる羽柴秀吉を支えることで加賀の前田利家ともに越前を支配する北陸の抑えとなるはずでしたが、秀吉VS家康の小牧・長久手の戦いが続く中で病没し、丹羽長重は15歳で家督を継ぐことになり、羽柴姓も名乗ります。秀吉にも期待されていたんだと思いますが、その後は家中不和を起こしてしまい、北陸地方で転封を繰り返していくことになります。

 

関ヶ原の戦いでは、丹羽長重は必ずしも西軍ではありませんでした。前田利長が丹羽長重を石田方と一方的に見なして攻め込み、領内を放火して荒らしまわったので丹羽長重も戦うことに決めます。この徳川方の前田家と交戦した事実が改易処分につながり、領地も前田利長に与えられてしまうという不運でした。

 

しかし、丹羽長重は徳川秀忠と秀吉の小田原合戦の時の縁で仲が良かったことから、秀忠に江戸に召し出され、常陸国内の1万石を与えられます。この当時の常陸国には、長重のほかに、立花宗茂や新庄直頼らの「関ヶ原復活組」も領地を与えられ、訳あり外様大名が譜代大名になるような場所だったそうで、そこの丹羽長重は大坂の陣で奮戦し、関東と奥州の要衝の地の白河に10万石の大名に返り咲きます。当時は仙台の伊達政宗に、米沢の上杉景勝にと戦国時代の生き残り武将たちもいる中での要衝の地を与えられるわけなので、その信頼の高さが分かります。

 

その後の子孫は二本松に転封となるも、幕末まで続き、戊辰戦争では会津の白虎隊が有名ですが、二本松少年隊という徳川公儀への忠節を貫くんだそうですが、丹羽長重が10万石の大名に返り咲いたときの幕府への感謝の遺訓が大きく影響を残したんだそうです。

 

立花宗茂は戦国ファンならだれもが知る知名度ですが、こういったそうではないけどもという人の歴史を知ることができるのはありがたいです。
 

『歴史群像 令和6年6月号 No.185』

発 行:株式会社ワン・パブリッシング

価 格:1,100円(税込み)

発 売:2024年5月2日

 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

 

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