#719 レビュー 『源氏物語あさきゆめみし 4』大和和紀 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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引き続き、紫式部の『源氏物語』のマンガ『あさきゆめみし(4) (講談社漫画文庫) [ 大和 和紀 ]』を、今年の大河『光る君へ』に合わせて再読

藤壺に囚われ続ける光源氏の恋愛遍歴がついに紫の上の心を壊してしまい、女を奪い続けた光源氏が逆に奪われる事態まで起こってしまう第4巻

 

  レビュー

第4巻は、相変わらず藤壺に囚われ続ける光源氏、それが紫の上に更なる苦しみを与え、その苦しみが紫の上の心を砕いてしまうことに・・・

 

第4巻で登場する主な女性・男性と光源氏の関係

藤壺:死去するも相変わらず心をとらえ続ける女性。

紫の上:北の方として長年連れ添うも、光源氏が新たな正妻に女三の宮を迎えることにより、また苦しみ、病に倒れて出家を希望する。

明石の上:光源氏との娘の明石の姫が春宮妃になることに伴い、生母であることを隠してその女房として仕えることに

朧月夜(六の君):一度終わらせたはずが、夫の朱雀院が亡くなると光源氏が現れて男女の関係が再開されることに

花散里:光源氏の心休まる存在の女性、元服した光源氏の息子の夕霧の母役を務める。

玉鬘:光源氏の下で養育されるもようやく本当の父の頭の中将と再会を果たす。髭黒の右大将に嫁ぐことになる。

女三の宮:朱雀院の三番目の娘、光源氏に正妻に迎えてくれるようにお願いする。その願いを聞き入れたことがいろいろな問題の火種となる存在になってしまう気の毒な女性。

頭の中将(内大臣):若いころからの光源氏のライバル、内大臣となった今もライバル視しつづける。

夕霧:光源氏と亡き葵の上との間の息子。頭の中将の娘の雲居の雁とは幼きころから一緒に育ち結婚し合おうと誓った仲だったが・・・

柏木:頭の中将の息子で、光源氏の正妻となった女三の宮に恋心を抱いてしまって、一線を

 

第4巻について

娘のように育てた玉鬘に言い寄る姿を息子の夕霧に見られてしまうも、光源氏は自分のものにしてしまおうか、婿取りさせようか、いっそのこと宮仕えさせてしまおうかと逡巡しますが、ようやく本当の父の頭の中将に玉鬘のことを伝えて、本当の父娘の再会を果たさせます。

 

玉鬘には、夕霧までもが言い寄ってしまう始末の中、ついに髭黒の右大将が玉鬘の住む光源氏の邸に入りこんでものにしてしまいます。髭黒が婿になります。ただ正妻もおり、子どものいたのでこの結果、髭黒の右大将の家庭が崩壊してしまう悲劇も発生しますが、のちに玉鬘は髭黒のもとが自分の居場所だと見つけ生きていくので、遠回りの末の幸せをつかむことになります。光源氏にとっては恐らくいずれは自分の女にと思っていたはずの女性を奪われてしまうという体験をすることになります。

 

そんな光源氏ですが、政治的には全盛期を迎えます。明石の上との間に生まれた明石の姫が紫の上によって立派に育てられ、春宮妃となり、すぐにご懐妊、冷泉帝の中宮は自分の養女(秋好中宮)と二代にわたる入内政策の成功です。

 

これに加えて、ついに人臣をも飛び越えます。自分が光源氏の子であることを知った冷泉帝から、準太上天皇の位が授けられます。皇子に生まれるも源氏姓で臣籍降下した光源氏ですが、この位により皇族と同列になります。

 

40歳を迎える光源氏の絶頂と言える状況です。

 

これで終わっていれば幸せな結末と言えるのですが、光源氏の恋愛遍歴が収まらず、ついにそれが紫の上の心を砕いてしまうことになります。

 

事の起こりは、朱雀院が出家するにあたり、娘の女三の宮の行く末を案じて、光源氏の正妻にさせます。朱雀院の申し出当初は難色を示しいた光源氏ですが、亡き藤壺のゆかりときいて、心が動いてしまい、正妻として迎えることになります。

 

事実上の正妻として長年振舞ってきた紫の上、光源氏の恋愛遍歴に悩まされ続けるも、それでも事実上の正妻は紫の上でした。それなのにここに至って、内親王という高位の女性である女三の宮を正妻に迎えるという光源氏の決断は紫の上の心のよりどころを砕くもので、光源氏が女三宮に通う姿から思い詰めて、病に倒れます。

 

しかも、その女三の宮はあまりに幼く、残念なことに藤壺とは・・・で、光源氏としては朱雀院にお願いされた正妻だから無下にも出来ず、さりとて恋愛感情もというところでした。

 

そこに入ってきたのが、頭の中将の息子の柏木でした。彼は朱雀院の娘の女二の宮を妻にしているにもかかわらず、女三の宮の猫が驚いて逃げたときの女三の宮の顔や姿を見ることでより一層の恋の炎を燃え立たせてしまい、ついに女三の宮のもとに入り込んで、男女の関係となります。このことを光源氏は知ることになり、怒りを覚えたところで第4巻終わりとなります。

 

相変らずの恋愛遍歴を重ねる光源氏、朱雀院に娘の女三の宮を頂きながら、院が出家すると院の妃で自らの須磨隠遁の原因となった朧月夜の君に迫り、男女の仲になるなど、不義を不義と思わない女性好きな感情そのままに行動しつづけていますが、それが紫の上の心を砕いてしまいますが、それも自分がこんなに大事にしているのにと気づきません。光源氏が女性に対する自分の思いに正直すぎるところとそれゆえに苦しむ人たちへの鈍感さをより強く思い知らされる第4巻でした。

 

〈書籍データ〉

『あさきゆめみし ④』

著 者:大和和紀

発 行:株式会社講談社

価 格:660円+税

 2001年8月3日 第1刷発行

 2019年5月8日 第48刷発行

 講談社漫画文庫 や1-31

 
 
 
 

 

 

 

 

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