#717 第21回「旅立ち」感想~大河ドラマ『光る君へ』 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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道長の政治の始まりと清少納言の枕草子の執筆始まりを描いた大河ドラマ「光る君へ」 - NHK』の第21回「望みの先に」について

一番利を得た道長のその周りが動いて大きな事件となった長徳の変と、その被害者の定子を慰めるべく始まった清少納言の『枕草子』という描かれ方の第21回

第21回も、996(長徳2)年の話になります。

(NHK大河ドラマ『光る君へ清少納言、まひろのすすめで『枕草子』を書く(C)NHK)

 

伊周隆家の弓矢から始まった一件は、そこに一条天皇の生母の詮子の呪詛なども加わって大きく事件化され、”長徳の変”になります。二人のこの状況に勢い余って中宮定子は髪を切って出家するという騒動も加わりますが、伊周を捕らえに来た検非違使の刀を奪っていきなり髪を切るなんて言う大立ち回りは、よりドラマチックに見せるためのものだと思います。

 

そのショッキングな出来事に一条天皇は伊周に対してだけでなく、定子にも怒りを

 

その後、伊周を捕らえるべく、道長を通して一条天皇の許可を得た検非違使別当(長官)の実資が検非違使らとともに再び定子らの二条第にやってきます。ここから先の伊周が太宰府権帥として北九州野田財布に流されるまでの顛末は、調子に乗った経験なき若き貴公子の落ちぶれ振りをこれでもか、これでもかとまで無様に描かれているのが気の毒なほどです。

(NHK大河ドラマ『光る君へ』二条第で捕えたれた伊周(C)NHK)

 

一方の道長の方は、この大事件で道長政権が成立し、一条天皇のお気に入りの中宮定子も出家してしまったので、入内競争も発生するということで一番利を得た存在として周囲からはそのような目で見られるも、今作の”いい人道長さん”は、まひろと二人で密会したときも、道長の様子から、世間の言うように道長が主導して大きく事件化した人ではないと評価されるように、自分はあくまでもそういうことを望んでいるわけではなかったが周りが・・・・という感じの描かれ方になっています。

 

それゆえなんですが、その周りとして恐ろしい存在として挙げられるのが、姉の詮子と妻の倫子の二人です。

(NHK大河ドラマ『光る君へ』姉の詮子と妻の倫子(C)NHK)

 

詮子が具合が悪い状況が続く中、倫子が邸内を捜索させると呪詛の証が出てきて、倫子は家のことは自分が道長に伝えたにもかかわらず、実資を通じて一条天皇にも伝わって、事件がさらに大きくなりました。

 

倫子が、詮子と道長の三人で、出家した中宮定子のあとの入内競争を話している時に、詮子の仮病のうまさを、父の兼家が実権を握る際に使った仮病と重ねて指摘して笑う姿などは、二人の間に今回の一件ついての何らかの協力関係と、そして倫子が指摘することで今後の主導権を握ろうとする示唆するような描かれ方です。

 

権力の階段を上っていく上で、相手を蹴落すことも必要な世界で、頂点に昇りつめる”いい人道長さん”のためには、今作のような詮子倫子が水面下で動くように描かれなければならないのではないかと思います。

 

一方の中宮定子については、更なる悲劇が襲い、それが清少納言の『枕草子』誕生秘話につながる描かれ方になっています。

 

二条第で目の前で伊周が出家したと実資に偽るも簡単に見抜かれて、お菓子とかを買ってもらえないでごねる駄々っ子のような振舞をしながら、太宰府に流されるのを見た中宮定子、彼女が一条天皇との間の子を妊娠していることを清少納言は気づきます。

 

ここに更なる悲劇が、伊周も流されてしまった後、二条第が燃えてしまいます。不幸が重なる中宮定子はその炎の中でそのまま死んでしまおうとしますが、その燃え盛る邸に飛び込んで思いとどまらせたのが清少納言でした。清少納言がこれら一連の悲劇の後に、まひろのところを尋ねるたところ、まひろが中宮から賜ったという高価な紙に何かを書くことを提案し、内容について相談すると「史記」に引っ掛けて、「四季」を書いたらということで、『枕草子』がたった一人の哀しき中宮のために書き始められることになるという誕生秘話として描かれています。

 

「春は曙、夏は夜・・・」と、書き上げるたびに、励ますために中宮定子の枕元に届ける清少納言。それを中宮定子も読み、少しずつ元気を取り戻していく姿が描かれ、『枕草子』を通しての二人の心の交流が美しく描かれています。

(NHK大河ドラマ『光る君へ』中宮定子のために執筆する清少納言とそれを読む中宮定子(C)NHK)

まひろこと紫式部は彼女の日記『紫式部日記』において清少納言を筆誅と言っていいくらいの酷評をしています。ドラマなのでそういった史実の人間関係よりも、さまざまなことにまひろこと紫式部を関わらせる形で、清少納言との交流から生まれる『枕草子』という設定にしたんだなと思います。

 

まひろの方は、勉強ができて試験に通れば身分に関係なく政治を行える宋の国への憧れから宋人に会えるその楽しみな思いから父の為時の越前守に同行することに、ただ、為時にとってはそんな大国をまひろの父だからという道長の情実人事なんてものではなく、越前の松原客館に大挙して押し寄せている宋人を、貿易は京からはるか遠い博多のみで、京に近い越前はダメだと問題を起こさずにうまく追い返すために、宋人と話すこともできるから選ばれたと知らされ、かなり重要任務と知らされて、大変なことになったと越前に赴任します。

 

次回からは、京で出家してしまった中宮定子から派生していく出来事と、越前国での宋人とまひろの交流が描かれていくことになるんだと思います。

 

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