#716 レビュー 『殴り合う貴族たち 平安朝裏源氏物語』繁田信一 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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殴り合う貴族たち【電子書籍】[ 繁田 信一 ] 』雅なイメージの平安王朝、今年の大河『光る君へ』でもそんな感じですが、それだけでけではない平安王朝の実態を知る1冊

上流貴族、貴公子たちの指示で御壊れた集団暴行や、無分別な暴力もあふれていた平安王朝時代の姿を知る1冊。あの道長も・・・


  レビュー

平安時代、摂関政治全盛期の貴族たちのイメージは、雅に宴会を開き、歌を詠み、音楽を奏でという優雅な世界&政治権力を握るための暗闘みたいな感じだと思いますが、本の帯にある通り、摂関政治全盛の藤原道長を始め、やんごとなき方々のバイオレンス満ち溢れた状況が、当時の貴族の日記や説話集などから描かれる実録事件シリーズというところです。

 

本書では、以前、”上級国民”なんていう言葉がはやりましたが、大河ドラマ『光る君へ』で陣定めで出てくる公卿(平安貴族中の貴族)らは、まさに上級、アニメ『ワンピース』の天上人の感すらある振舞が繰り広げられています。

 

大河ドラマ『光る君へ』での藤原道長は、庶民のことを思いやり、良識的な貴族として描かれていますが、そんな彼が官人採用試験の試験官を拉致して、自分が懇意にしている受験者が合格するように試験結果に手心を加えるエピソードから始まります。

 

他にも道長は自らの邸や寺を建立する際に、その基礎となる大きな石を切り出して持っていくのは面倒なので平安京のその都の建物の基礎となる大きな石を勝手に運び出して使うなんていうハチャメチャなこともしています。

 

大臣クラス以上の貴族の家の前を牛車に乗ったままや、馬に乗ったままで通過することはタブーなことらしく、もし、そんなことをすると本人が命じてなくても、その家の家人たちが一斉に投石するそうです。家人たちにとっては仕える主人のステータスの高さが、自分たちの誇りにもつながるそうなので、そんなことがこの上級貴族たちの世界では普通に行われているそうです。

 

花山院に、藤原伊周・隆家兄弟が勘違いから矢を射かけることで始まった長徳の変はもちろんのこと、花山院が隆家に、自分の所に牛車に乗ったまま通り過ぎることができるならやってみろと挑発したところ、隆家が牛車に乗ったまま通り過ぎるために家人らを引き連れて通ろうとすると、花山院の邸のところで多くの屈強なものたちがやってくるのを待ち構えていたので、その状況を見て引き返すエピソードもあり、雅とは程遠い振る舞いが描かれています。


彼らの暴力が庶民に向けられたものであるならば、罪に問われることもありません。上級国民ってこういうことなんだなと、身分の差も分かります。当時の貴族らからしたら、自分たち以外は人ではないというか、考慮する必要なんてない存在、大河ドラマ『光る君へ』の兼家の振舞や、疫病がはやってもそれは庶民らの病気で自分たちは関係ないという道隆の言動などはあの当時の彼らには普通の考えなんだろうなとつくづく思わされます。

「雅」だけじゃない貴族社会に興味がある方はぜひ

 

〈書籍データ〉

『殴り合う貴族たち 平安朝裏源氏物語』

著 者:繁田信一

発 行:柏書房株式会社

価 格:2,200円+税

 2005年9月25日 第1刷発行

 
 
 
 

 

 

 

 

 

 

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