#706 本レビュー『歴史街道 令和6年6月号』の感想 | 歴史に遊び!歴史に悩む!えびけんの積読・乱読、そして精読

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大河ドラマ「光る君へ」 - NHK』の藤原家が『歴史街道2024年6月号(特集1「陰謀と政争の平安時代」) 』

 

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  内容やレビュー

 

特集1 陰謀と政争の平安時代

大河ドラマ『大河ドラマ「光る君へ」 - NHK』では、藤原氏の他氏排斥は終わって、藤原氏内、特に藤原北家内での本流争いが描かれています。今回の特集は、奈良時代の中臣鎌足が藤原姓をもらい、平安時代の摂関全盛期をもたらした藤原道長までに至る歴史。藤原氏が他氏を排斥し、藤原氏族内での南・北・式・京の四つの家の主導権争いから、北家確立後の北家内部での主導権争いの歴史の特集です。

 

伊予親王の変、薬子の変(平城上皇の変)、承和の変、応天門の変、昌泰の変、安和の変、寛和の変、長徳の変のそれぞれが系図は背景、その後の展開などを含めて解説されます。

 

これらに加えて、道長に摂政関白全盛期を演出させるその始まりの右大臣&内覧という実質政権首班をもたらした姉で一条天皇の生母詮子の特集は、『大河ドラマ「光る君へ」 - NHK』で道長が今後昇りゆく過程を見る上で役立つものだと思います。

 

詮子は円融天皇に入内し、一条天皇となる皇子(懐仁親王)を生み、国母となり、皇太后となり、出家後は上皇に準ずる待遇の「女院」を宣下され、東三条院と称します。初の女院です。栄華を手に入れた感もありますが、この特集で知ったのは、円融天皇は、兄の冷泉天皇に皇子が生まれていなかったので、その中継として東宮に選ばれ、円融天皇の後はまた冷泉天皇の血統に戻ってそちらが続くという存在であったことです。

 

そんな状況の円融天皇なので、貴族たちも娘を入内させようと積極的に思っていた中で、兼家は詮子を入内させようと考えるも、対立していた兄の兼通の妨害と讒言で叶わず、兼通の讒言もあって円融天皇は兼家を遠ざけました。

 

兼通死後、兼家も詮子を円融天皇に入内させるのですが、円融天皇は兼家を遠ざけているので、詮子にも愛を注がないという流れに、大河でも、詮子が円融天皇の愛を得ようと努力をするも・・・と描かれていたような状況です。

 

こういった状況から、詮子は、自分が生んだ懐仁親王に期待を寄せ、自らも力を握って政治を左右していこうと振舞っていったんだと想像できる特集です。

 

日本赤十字社の近現代史&鍋島榮子(鍋島直大侯爵夫人)

二つの特集を合わせて、日本赤十字の近現代史の理解が深まります。

 

西南戦争という大規模内戦において「敵・味方を差別せずに負傷兵の救護」を掲げ、明治政府にアピールするも理解されず、征討総督の有栖川宮熾仁親王に直接請願して、1877年に博愛社が誕生します。

 

この日本赤十字社を定着・拡大させていく上で大きな存在が、明治天皇の美子皇后(昭憲皇太后)で、皇太后の熱心な取組が、宮家の女子や上流階級の女性たちに「皇后陛下に倣いましょう」と影響を及ぼしたそうで、やはり高貴な方のノブレス・オブリージュとその存在による影響の大きさが確認できます。

 

面白かったのは、明治政府は幕末頃の各種不平等条約の改正のために鹿鳴館外交を展開するも、首相の伊藤博文が岩倉具視の令嬢を襲う事件やスキャンダル報道が相次いで、失敗に終わります。そこで明治政府は条約改正につなげる次の手として、博愛社の佐野常民の提言を受け容れて、ジュネーブ条約に加盟し、日本赤十字社になることで、文化国家として国際社会に加わろうとして後押しをすることでした。

 

公的な組織として崇高な理念がまずなければだめですが、それを大きな力にするには、政府などにいかに利を感じさせるかというのが分かるエピソードだと思います。

 

日本赤十字社の「戦時救護」の最初の活動は、1894(明治27)年の日清戦争で、日本は「清国がジュネーブ条約を守らなくても、われわれは守る」=「ジュネーブ条約に入っていない清国であっても、日本派ジュネーブ条約に従って捕虜を扱います」と宣言します。

 

当時の国際関係においては、互恵主義で互いにその条約を締結していなければ、締結している方も条約内容を守る必要はないそうですが、日本のこの異例の対応を欧米諸国も評価したそうで、明治政府の文化国家の仲間アピールに役立つ効果があったものだと思います。

 

こういった裏面史を知ることも歴史を学ぶ楽しみだと思います。

 

〈書籍データ〉

『歴史街道 令和6年6月号 第434号』

発 行:株式会社PHP研究所

価 格:840円(税込)

発 売:2024年5月6日

 
 
 
 

 

 

 

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